編集長が語る!講義の見どころ
混迷の今だからこそ「自由主義」を学ぶ/柿埜真吾先生【テンミニッツTV】

2025/03/11

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です

トランプ大統領のアメリカ、欧州での「極右」と呼ばれる勢力の伸長、ロシアや中国の権威主義、そして日本の政界の姿……。各国で混迷を深めている政治のあり方に、暗澹(あんたん)たる思いを抱く方も多いことでしょう。

このようなときだからこそ、根本的なところに戻って、「自由」の意味についてしっかりと考えておく必要があるのではないでしょうか。

しかし案外、「自由とはいったい何か」といわれると、明確なイメージが頭に浮かばないかもしれません。「リベラル」というと、どちらかといえば「左派」的な印象が強くなりますが、「新自由主義」などといわれると、まったく異なったイメージになります。

本日は、「自由」について体系的に学べる、柿埜真吾先生(経済学者/思想史家)の講義を紹介します。

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(全7話)
(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm1

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(全13話)
(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm3

柿埜真吾先生の《日本人が知らない自由主義の歴史》講義は、前編と後編に分かれます。

前編では、ホッブズ、ロック、アダム・スミスからミル、さらにニューリベラリズムの潮流までを描きます。最初は危険思想と思われてさえいた「自由主義」が、いかに理論として確立していき、社会の発展と繁栄を導き出したか。しかし、それがだんだんと本来のあり方から介入主義的な「大きな政府」へと変容していったかが、手に取るようにわかります。

そして後編では、その後の「自由主義」、つまり自由主義の現代的な課題に深く迫り、現代の自由主義の必読文献についてもわかりやすく解説していきます。

まずは前編。第1話では「古代人の自由と近代人の自由」「積極的自由と消極的自由」など、自由の様々な側面を紹介しつつ、最初は「危険思想」であった自由主義の草創期を語ります。

そして第2話からは、いよいよ思想家に迫ります。

第2話は、ホッブズ、ロックです。まさに自由主義が生まれていく時代の先駆けとなる思想家たちですが、その思想はずいぶん異なります。とてもわかりやすく整理くださっているので、まずは基礎を押さえるために必見です。

第3話は、アダム・スミスを中心に、自由主義と自由主義経済の関連を見ていきます。

アダム・スミスは、一般に抱かれがちなイメージとは異なって、市場万能主義者ではありませんでした。あくまで、政府の恣意的な介入はかえって有害な結果を招くという主張でした。そして、社会はゼロ・サムゲームではなく、自由貿易によって全体が豊かで便利になっていくことを示したのです。

第4話は、ベンサムとJ・S・ミルです。彼らは「最大多数の最大幸福」というスローガンで有名な「功利主義」的な発想から自由主義を位置づけていきました。

この発想からすると、必ずしも「全部、自由放任がいい」ということではなくなっていきます。環境汚染の規制や貧困層の救済などは、むしろ進めたほうが「最大多数の最大幸福は大きくなる」ということにもなるからです。

また、ミルは「他人を侵害しないかぎり自由だ」という「他者危害原則」も説きました。この考え方からすれば、たとえば現代日本の「芸能人の不倫バッシング」のようなものはどう考えられるのか……。そのような問題提起も含め、大いに考えさせられる解説が続きます。

第5話では、「政府関与が必要な場合もある」という発想が、「ニューリベラリズム」を生み出していく過程が描かれます。「政府介入をどこまで是とするか」。これによって、自由主義はまったく正反対の色彩を帯びるようになっていきます。

第6話では、そのような「自由主義」を日本やアメリカではどのように受容したのか。第7話では、そのような自由主義が現代にどう流れていくかが語られます。

ここまでが前編ですが、実は日本では、自由主義についての一般的な解説の多くは、ここまでで終わっています。さらに本講義「後編」の問題意識を学んでいくことは、とても重要なことといえます。

後編の第1話は、「前編」の後半に現われた「ニューリベラリズム」を鋭く批判した19世紀後半のハーバート・スペンサーとダイシーに光を当てます。

彼らは「政府がいろいろな権限を持つこと」に警鐘を鳴らしました。彼らは、その当時は「反動的な思想」だと思われていましたが、彼らの「絶対主義的な専制国家が現れる」という予見は、不幸にも20世紀に実現してしまうことになるのです。

続いて見ていくのは、ミーゼス、ハイエクなどオーストリア学派の思想です。彼らは、社会主義計画経済が必ずうまくいかないこと、さらに必ずひどい独裁国家になることを論じました。この主張の正しさも歴史の流れのなかで証明されることになります。

さらに、大きな政府による介入主義的な「ニューリベラリズム」に対して、「自由放任でも国家主義でもないバランスのとれた場所があるはずだ」と考える「ネオリベラリズム」が現われます。そのようなネオリベラリズムの思想に基づいて戦後復興を果たしたのが、西ドイツやイタリアでした。

ネオリベラリズムというと、現在では「新自由主義」というイメージで、市場経済万能主義・競争至上主義のようにとらえられがちですが、本来的にはまったく違う「中庸の思想」なのです。

さて、最近では「リバタリアニズム」という言葉を聞くこともあります。多くの日本人には、あまりピンとこない言葉かもしれません。

リバタリアニズムというのは、アメリカで生まれた言葉です。アメリカでは「リベラル」というと、すっかり左派色の強い言葉になってしまいました。このような「リベラル」に対して、本来の古典的な自由主義を主張したい人たちが「リバタリアニズム」という言葉を用いるようになります。古典的自由主義を継承し、個人の自由を何よりも大事にする思想です。

柿埜先生は、このリバタリアニズムについて、ノーラン・チャートという図を用いてご解説くださいます。考え方がとても整理されますので、ぜひ後編第5話でご覧ください。

この講義シリーズの後半は「文献編」です。

●ニューリベラリズムの古典ともいうべきロールズの『正義論』。

●社会主義や全体主義の危険性を説いたハイエクの『隷従への道』。

●経済的自由の優位性と採るべき政策を論じたフリードマンの『資本主義と自由』。

●ロールズを批判したノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』。

それぞれの内容をわかりやすく解説いただきます。現代の課題について、それぞれの思想家がどのように論じ、そしてどのように批判したのかが、とても明解に伝わってきます。

さらに、最後の講義では、「新自由主義」「新保守主義」とは何かも論究されます。実は欧米でもこれらの用語の用法が大いに混乱しており、日本での用法はさらに無茶苦茶だというのですが……。

いままで、頭の中でぼんやりしていたものが、明確な像を結んでいくのは、まことに痛快なことです。その痛快さを存分に味わえる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm2

◆柿埜真吾:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm4


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