2025/04/01

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

2025年1月28日、埼玉県八潮市の交差点で道路が陥没して、トラック1台が転落してしまう悲劇的な事故が発生しました。

その原因は、直径4.75メートルの下水道管の破損でした。1983年に敷設された鉄筋コンクリート製の下水道管が破損したために土砂が流出し、空洞ができてしまっていたために、道路が陥没したのです。急に道路が陥没する。その恐ろしさは、想像を絶します。

本日紹介するのは、水のインフラの問題、さらに地球温暖化と気候変動の問題について幅広くお話しいただいた沖大幹先生（東京大学大学院工学系研究科教授）の講義です。

この講義は2024年9月に収録していたものですが、そのなかで水道インフラ老朽化の深刻な問題にも触れていただいていました（第6話）。そこでは、水道インフラの2割ほどが耐用年数を超えており、漏水・破損事故が日本全国で2万件以上起きていて、陥没事故も4000～5000件起きていることが明かされています。

講義全体は、《水から考える「持続可能」な未来》というテーマで、深刻な地球温暖化の影響から水インフラの問題までを総覧いただいています。多くの研究成果をご紹介いただきつつ現状が解き明かされます。まさに「水」からの視点で、現代の日本が直面する課題を深く考えることができる講義です。

◆沖大幹：水から考える「持続可能」な未来（全8話）
（1）気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5707&referer=push_mm_rcm1

講義は最初の4話が気候変動問題、第5話と第6話が水のインフラの問題、そして第7話と第8話が質疑による深掘りとなります。

まず気候変動です。最初に沖先生は気候変動のシミュレーション図をお示しくださいます。この図からは、1990年以降の気温上昇は温室効果ガスの影響であることがよく見て取れます。

では、温暖化が進むと何が起きるのか。

空気中の水蒸気は、気温が1度上がると7パーセント増えるのだといいます。「ゲリラ豪雨」といわれるような強い雨が増えていることも、それが大きな原因になっているのです。

さらに気温が上がると、海水面が上昇してしまいます。極地の氷が溶けること、さらに海の表面が熱膨張することが要因です。温室効果ガスを頑張って削減しても、2300年には2メートル、ひどいシナリオでは4～5メートルから10メートル以上も海面が上昇する可能性があるとのこと。

さらに雨が降る場所も大きく変わってきます。今まで雨が降らなかったところに雨が降り、降っていたところで降らなくなる。さらに、熱帯低気圧がどんどん強力化する。

そのようなリスクがどのようなものかも、数多くのデータをもとにご解説くださいますので、ぜひ講義本編をご覧ください。

これらのデータを見れば、温暖化対策によって「緩和」させていくことの必要性がひしひしと実感されます。しかし、それには当然、費用も必要になります。温暖化対策について、マイナス方向の政治の動きも各国で見えてきているなか、世界は「前途多難社会」に向かっているのではないか。その懸念が大いに増してきます。

その一方で、企業活動を進めるうえで「水資源のリスク情報」を開示するように求める動きもあります。とはいえ、その分析もまだまだ粗く、風評被害を被る可能性もあって……。対策を進めるうえでの問題点についても具体的に語られます（第4話）。

さらに第5話から日本の「水インフラ」の問題が指摘されます。最初に述べられるのは、日本は「水に恵まれた国」というイメージがあるけれども、実は違うのだということです。

年降水量は陸地平均の倍くらいあるけれども、年間1人あたりの水の量に直すと、人口密度が高いために世界平均の半分。関東地方でいえば、サハラ砂漠のど真ん中にあるエジプトよりも少ないのだといいます。

では、なぜ水不足に陥っていないのか。それはこれまで「水インフラ」を整備してきたからです。沖先生は「水のみんなのインフラ＝水みんフラ」という言葉を提唱されますが、実際に水インフラの重要性がつくづく実感できます。

そして第6話では、水インフラの老朽化・劣化の問題が論じられます。では具体的にどうしていくべきなのか。この論点も必見といえましょう。

そして第6話の最後では「超越人材」の必要性が語られます。最近の優等生は、失敗をすごく嫌がり、できそうなことはやるけれども、やらなければいけないことをやらない。負け戦に挑戦しない。それを乗り越えられる「超越人材」が必要だと。

この分析も、とても興味深いものです。

第7話、第8話の質疑応答編も含め、大きな気づきとヒントに満ちた講義です。ぜひご覧ください。


（※アドレス再掲）
◆沖大幹：水から考える「持続可能」な未来（1）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5707&referer=push_mm_rcm1


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