編集長が語る!講義の見どころ
第2次トランプ政権の「本質」を見抜く/柿埜真吾先生&特集【テンミニッツTV】
2025/05/16
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
道に迷ったときにこそ「地図」や「方位磁針」が必要です。考えをきちんと整理するためには、頭のなかに「座標軸」を置くことが大切です。
では、現在の第2次トランプ政権の混迷をいかに読み解くのか――そのときに大切なのは、「本質」や「これまでの学問の歩み」を、いまこそ、しっかりと見据えることでしょう。
本日は、その点でまことに刺激的かつ学ぶところの多い柿埜真吾先生(経済学者/思想史家)の講義を紹介いたします。柿埜先生は、経済史や経済学史からの視点をあざやかに示しつつ、ズバリと斬り込んでいらっしゃいます。
とりわけ「経済政策」については、「ああも言えるし、こうも言える」もの。どの主張が本当なのか見失ってしまいがちです。その点、柿埜先生のお話は、頭のなかに明確な座標軸を打ち立てるうえでとても参考になり、正邪の判断を大いに助けてくれます。
◆柿埜真吾:第2次トランプ政権の危険性と本質(全8話)
(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5797&referer=push_mm_rcm1
柿埜先生はまず第1話で、「第1次トランプ政権と第2次トランプ政権は、大いに違う」ということを強調されます。
第1次トランプ政権の記憶からすると、トランプ大統領自身が経営者出身だし「経済重視」の政権ではないかと考えがちです。しかし、これは違うのだと柿埜先生はおっしゃいます。第2次トランプ政権の優先順位では、経済がすごく低い。優先順位が高いのが「文化戦争」なのだと。
ここでいう文化戦争とは、アメリカのリベラル派が進めた「文化マルクス主義」「ポリティカル・コレクトネス」などへの反撃です。象徴的にはLGBT擁護や宗教伝統軽視などといったあり方を徹底的に叩き潰そうとしているのだと。
なぜそうなったのか。そこにはトランプの「怨念」にも似た気持ちがあるというのですが……。
そして柿埜先生は、第1次トランプ政権、バイデン政権、第2次トランプ政権が発足してから、どのように株価が推移したのかを比較する表をご紹介くださいます。これを見ると、柿埜先生のおっしゃることがひと目で理解できるようになります。
さらに興味深いのが、トランプ関税についての見方です。
柿埜先生は、トランプ関税の考え方は、アダム・スミス以前の「17世紀の重商主義」の考え方よりも劣っているといいます。
ここから柿埜先生は、経済学的な視点を、まことにわかりやすくご展開くださいます。たとえば、なぜ「貿易赤字が『悪』で、貿易黒字が『善』だと」考えるのが「おかしな発想なのか」。とくに「二国間の貿易収支」に注視して考えるのがいかに「原始的」か。
柿埜先生は「近所のパン屋さんと自分との『収支』」の話で説明していきます。思わず「なるほど……」とつぶやいてしまうこと、間違いありません。
そして、大恐慌を深刻化させる大きな原因になったともいわれる「スムート=ホーリー法」(1930年に成立した保護主義法案)の詳しい説明と、今般の情勢との比較も興味深いお話です。「スムート=ホーリー法」がいかなる混迷と悲劇を巻き起こしたのかを知ることで、保護主義への理解はぐっと透徹したものになります。
加えて、「自由貿易の恩恵は貧困層ほど大きい」「貿易とはお互いが利益を受ける『プラスサムゲーム』であって、『勝ち負け』でなない」というご指摘も、とても重要なものでしょう。
続いて柿埜先生は、トランプ派は従来の保守派とは「まったく違う」ことを力説されます。
とかく「保守」への考え方の間違いが、政治への理解を誤まらせることが多いものです。たとえば「ファシズム」を「保守」と考えてしまう傾向も多いですが、これは明らかに判断を混乱させます。
では、トランプ政権はどうなのか。そして「トランプ政権の政治手法の危険性」とは――ここもぜひ講義本編をご覧ください。
最後に柿埜先生は、トランプ政権の政策が、日本にどのように影響するのかもご分析くださいます。ここも将来への見通しを立てて行くうえで、とても参考になる内容です。
冒頭にも記したように、このような混迷の時期にこそ「本質」を見極めることが大切です。柿埜先生の本講義は、判断のための「地図」や「座標軸」となること、うけあいです。
■特集:第2次トランプ政権の本質に迫る
テンミニッツTVでは、第2次トランプ政権の動きをどう見るかについて、様々な講義を緊急配信してきました。
あまりにドラスティックな動きゆえに、下手をすると本質を見失いかねません。しかし、こういうときこそ、しっかりと「本質」を見極めることが大切です。
どのような「論理」や「考え方」が第2次トランプ政権を動かしているのか。経済学などに照らしてみるとどうなのか。経済の1つの指標ともいえる株価などは、社会のどのような動きに、いかに反応していくのか。
そのようななかから見えてくるものは何か。
今般の緊急配信をまとめて、特集を組みました。それぞれの講義を比べてみると、トランプ政権の姿が、より立体的に浮かび上がります。ぜひご視聴の一助にしていただければ幸いです。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=261&referer=push_mm_feat
柿埜真吾:ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
養田功一郎:米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?
島田晴雄×神蔵孝之:叩き潰せ、正しいのは自分だけ…ロイ・コーンの教えとは
東秀敏:100年ぶりのアメリカ第一主義とトランプ新政権3つの焦点
東秀敏:「関与と介入」の二大潮流…米露ディール外交の歴史
(※アドレス再掲)
◆柿埜真吾:第2次トランプ政権の危険性と本質(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5797&referer=push_mm_rcm2
■特集:第2次トランプ政権の本質に迫る
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=261&referer=push_mm_feat
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