編集長が語る!講義の見どころ
生物兵器、化学兵器など「恐怖のテロ」の実態と対策/山口芳裕先生【テンミニッツTV】
2025/05/20
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
ウイルス、化学物質、放射性物質など、さまざまな恐るべき手段を用いて行われるテロ。麻薬汚染の意図的な拡散……。そのような対外的な無差別攻撃について、正しい知識を持っておくことはとても重要なことです。
地下鉄サリン事件を経験している日本としては、その恐怖はけっして他人事ではないはずなのですが、現状では、社会全体として十分な対策がなされているようにも思えません。さらにいえば、その脅威の実態について、十分に知られているとも思えません。
では、現在、世界の状況はどうなっているのか。日本は何をすべきなのか。
本日はそのことについて、山口芳裕先生(杏林大学医学部教授/高度救命救急センター長)にお話しいただいた講義を紹介します。
山口先生はこれまで、東海村臨界事故被ばく患者の治療担当(1999.10)、九州・沖縄サミット首脳医療対応(2000.7)、旧日本軍遺棄化学兵器事故対応(於:中国、2004.8)、北海道洞爺湖サミット医療対応(2008.7)、APEC(横浜)医療対応(2010.11)、東京消防庁・総務省消防庁の医療アドバイザーとして福島第一原子力発電所での対応(2011.3)など、数多くの現場を担当してこられました。また、東京都の災害医療コーディネーター、東京DMAT運営協議会会長もお務めです。
まさにプロの目から見える景色とは、どのようなものなのか。うかがっていて、まことに怖ろしい話です。しかしだからこそ、ぜひとも知っておくべき内容だといえましょう。
◆山口芳裕:医療から考える国家安全保障上の脅威(全5話)
(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5777&referer=push_mm_rcm1
最初に山口先生が指摘されるのが、アメリカで深刻な問題になっている「フェンタニル」という麻薬による中毒です。
米国内の中毒患者は数百万人に上り、年間8万人が死んでいるといいます。実際に、10代から40代の死因の第1位がこの中毒になっているともいいます。
なぜ、このようなことになっているのか。なんと1回分の値段がタバコ1箱より安いというのです。そして、アメリカでは「それは中国の国家的な戦略によって持ち込まれている」と報告されているといいます。
また、新型コロナウイルスが「中国の研究所から出たものだ」ということも、安全保障に関わっている医療者からすれば「驚くに値しないこと」とのこと。
いつ、どのような脅威が世界を、そして日本を蝕むかわからない社会に、ますますなっているといえるでしょう。山口先生は、こうおっしゃいます。
《自然界で起こったものなのか、人為的なものなのか、あるいは人為的だとすればどんな組織や国家が、どんな目的で、いったい何を使ったのか。こういうことが、明確には分からない。「オバート(overt:明白な、公然の)」に対して「コバート(covert:秘密の、隠された)」という言い方をしますが、こういう兵器のことを「非対称兵器」と総称して、先進諸国はこれを特に警戒し、これからの脅威として大きく位置づけているわけです》
この非対称兵器のなかで脅威の高い兵器が「NBC兵器」だといいます。
「N」はnuclear(weapon)=核兵器。「B」はbiological(weapon)=生物兵器。そして「C」はchemical(weapon)=化学兵器のことです。
そのうえで、山口先生は、こんなデータをお示しくださいます。
《米国の安全保障の教科書には1キロ四方の住民を殺傷するのに必要なコストが明記されています。一般兵器、つまり爆薬でこれを行おうとすると約2,000ドル。核兵器で行おうとすると約800ドル。化学兵器では約600ドル。そして生物兵器はわずか1ドルでできると記載されているわけです》
では、具体的には、どのような脅威が迫りつつあるのか。
その詳細については、ぜひ講義本編をご覧ください。講義のなかでは、ロシアや北朝鮮が実際に要人殺害テロで使用した、ポロニウム、VX、ノビチョクなどについても言及されます。また、日本の現状にどのような問題点があり、いかに備えるべきかも具体的にお話しくださいます。
上述したように、背筋が寒くなる講義ですが、だからこそ必見です。
(※アドレス再掲)
◆山口芳裕:医療から考える国家安全保障上の脅威(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5777&referer=push_mm_rcm2
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