編集長が語る!講義の見どころ
「因果関係」は実は巨大で深い迷宮?/一ノ瀬正樹先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/12/04
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
われわれは日常生活で、普通に「因果関係」という言葉を使います。たとえば最近も「コロナ流行とGOTOキャンペーンの因果関係は?」などというニュースが聞かれます。
しかし、世の中、そんなに簡単に「因果関係」がわかるものなのでしょうか。
その根源的な問いに、哲学的に向きあう一ノ瀬正樹先生(東京大学名誉教授/武蔵野大学グローバル学部教授)の講義を本日は紹介いたします。とかく考え方が安易になりがちなことを痛烈に反省させられる講義です。
◆一ノ瀬正樹:原因と結果の迷宮(全8話)
(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1567&referer=push_mm_rcm1
そもそも一ノ瀬先生が「因果関係」に疑問を覚えるようになったきっかけの1つは、少年の頃、「本日、誰々の死刑が執行された」というニュースを聞いたことでした。少年だった一ノ瀬先生は、最初、「これは、凶悪な犯罪を犯したがゆえの報いなんだな」と理解したそうです。しかし、同時に「はて、この死刑をすることで、どういう形で問題が解決されたことになるのかな」という非常に不可解な感覚を覚えたといいます。
被害者の遺族は、復讐心が満たされて一定の満足をするかもしれない。しかし、それで問題がすべて解決されたといえるのか? 報いを受けることで、どんな良いことがあるのか? 犯罪予防ということが刑罰の目的だとすれば、犯人本人を死刑にするより、犯人が愛する家族を罰したほうが威嚇(いかく)効果があると思うが、なぜそうしないのか……。
このようなことを考えているうちに、因果関係の巨大で深い迷宮に足をすくわれてしまったといいます。一ノ瀬先生はいくつか例を挙げておられるので紹介しましょう。
Q:「駅ホームで『ドア挟まれ事故』があったとき、責任はどこにあるのか?」
→運転手の確認漏れ? 駅員の確認漏れ? 乗客の飛び乗り? ホームの構造で微妙なアール(半径)があったから? 車両の構造? 社員教育? 運転手の寝不足で確認不足になった場合、もしその運転手の自宅周辺に暴走族がいて安眠を妨害されていたとしたら、暴走族を放置した当局のせい?……。
このように、原因をどんどんたどることが可能なので、実は究極の原因を確定して決定することは難しい。そう一ノ瀬先生は指摘されます。
あるいは、イギリスの女性哲学者ヘレン・ビービーが提起する次のような例も紹介くださいます。
Q:「フローラという女性が、親切に隣の家の花に、毎日水をやっていた。あるときフローラは旅に出て、隣の家の花が枯れてしまった。では、花が枯れた原因は何なのか?」
→フローラが水をやらなかったことが原因なのか? しかしフローラは親切心で水をやっていたわけで、それが原因だといえるのでしょうか? とすると、隣の家の人が水をやればよかったかもしれないし、あるいは近隣の人が水をやればよかったかもしれません。しかし、そう考えていくと、日本人の私が水をあげていれば花は枯れていなかったともいえるので、「私の不作為」も原因だということにもなってしまう……。このように考えていくと、まさに野放図に因果関係が広がっていってしまいます。
一ノ瀬先生が次々と挙げてくださる例やエピソードは、上記以外も、とても考えさせられるものばかりです。一ノ瀬先生は「哲学とは、普段当たり前だと思っていることに少し深い問いを立てることで、当たり前だと思っていることが実は必ずしも当たり前ではないことを理解することを大きな眼目の1つとしている学問だ」とおっしゃいますが、それを痛感させてくれる講義です。
「原因と結果の関係は、不確実で不可思議ですが、同時に不可欠でもある」……。この一ノ瀬先生の言葉は、深く考えさせられるものです。日常生活や仕事の中で、「因果関係は何なんだ?」と考えるときに、本講義の一ノ瀬先生の問題提起を頭の片隅に留めているだけで、物事を考えたり、問いを立てたりするときの「深さ」がずいぶん変わってくるかもしれません。
(※アドレス再掲)
◆一ノ瀬正樹:原因と結果の迷宮(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1567&referer=push_mm_rcm2
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.14
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今回の○○は「アイヒマン問題」を提起した哲学者「ハンナ・アーレント」です。
ご存じの方も多いかもしれません。アドルフ・オットー・アイヒマンは、ユダヤ人をポーランドの絶滅収容所へ列車で輸送するための計画を進めた人物で、いかに効率良くユダヤ人を虐殺させられるかということに関して、その最大の責任者でした。
(中略)
アイヒマンは自分がやっていることにどういう意味があるのか、自分が一筆サインすることによって数万人が死ぬということが何を意味するのかを想像できなかった。アーレントは、「イマジネーションの力」だと言っていますが、イマジネーションを欠いた社会というのは、こうなってしまう。これが最大の問題です。
無責任の構造を生んでいるのはイマジネーションを欠いた社会
中島隆博(東京大学東洋文化研究所 教授)
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3264&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「社会・福祉(災害・防災)」ジャンルのクイズです。
これは富士山の火山噴火に関するクイズです。
〇〇〇年ほど前の宝永噴火は、約2週間、ほぼ連続的に噴煙が1メートル以上まで立ち上ったそうです。その後、富士山は休んでおり、次の噴火は大規模になる可能性もあると思っておいたほうがいいとのことです。
さて、〇〇〇にはどんな数字が入るでしょう。
答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2182&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、インフルエンザウイルスのワクチン不足もニュースとなっており、同時感染が懸念される現在です。
この厳しい状況がなるべく早く解消されればと思いながら、同時にこの機会に改めて免疫について学んでおきたいと思っているところです。
そのための講義が、今年7月に配信となった「免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える」シリーズ(全11話)です。
自然免疫、獲得免疫、予防接種、抗体など、知っておくべき大切なことがシリーズ内で丁寧に解説されています。すでにご視聴された方も今一度ご欄になってはいかがでしょうか。
<今回ご紹介の「免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える」シリーズ(全11話)はこちら>
宮坂昌之(大阪大学免疫学フロンティア研究センター・招へい教授/大阪大学名誉教授)
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長)
(1)自然免疫と獲得免疫
まず「病原体を防ぐからだのメカニズム」を知ることが重要
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3461&referer=push_mm_edt
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