編集長が語る!講義の見どころ
「お盆」の季節に日本仏教を深く学んでみる/頼住光子先生【テンミニッツ・アカデミー】

2025/07/25

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

いよいよ8月も間近です。8月といえば「お盆」。いうまでもなく、ご先祖様をお迎えする日本の伝統行事ですが、7月中旬の「新盆」の時期も含め、ゆかりのあるお寺にお参りされる方も多いのではないでしょうか。

お寺には、様々な宗派があります。しかし、それぞれの宗派がどのようなものか、皆さんご存じでしょうか。

「仏教」が日本に伝来したのは6世紀の中頃ですが、以来、仏教は日本において非常に重要な位置を占めてきました。日本人は、神道と仏教とをうまく習合させ、独特の精神文化を築き上げました。仏教の新たな流れを中国などから熱心に取り入れつつ、さらに日本国内でも独自の発展を成し遂げてきたことは、あらためて指摘するまでもありません。

日本の仏教者たちがどのような問題について深く思索し、いかなる思想を打ち立ててきたのか。日本仏教についての理解は、日本や日本人について深く考えるためにも必須といえましょう。

テンミニッツ・アカデミーでは、聖徳太子、最澄、空海、源信、法然、明恵、親鸞、道元、日蓮らが、いかに日本において仏教思想を練り上げてきたかについて、頼住光子先生(東京大学名誉教授 /駒澤大学仏教学部教授)にわかりやすくご解説いただいた講義シリーズを配信しており、大人気です。

上記した方々には、皆さまご自身のゆかりのあるお寺の宗派の創始者も含まれているのではないでしょうか。

この講義は、それぞれの名僧たちが書いた名文を読み解きつつ、その思想に迫る珠玉の内容です。

原文解説なので、もちろん言葉は難しいのですが、頼住先生がとてもわかりやすくご解説くださいますので、心配ご無用です。むしろ、原文の格調を味わいつつ、その内容に迫ることができます。

ぜひこの季節、あらためて「日本仏教」をひもといてみてはいかがでしょうか? 本日は、このシリーズの最初に位置する「総論」編を紹介いたします。

◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(全3話)
(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3631&referer=push_mm_rcm1

この講義シリーズ「総論」では、上記に挙げた各々の人物たちの総覧と、日本仏教の特徴(特に他国と比べた場合の)についてお話をいただいています。

まず、各名僧たちの「原文」を読んでいくことの意味について、頼住先生はこうおっしゃいます。

《原文を読むというのは、その思想家が自分の考えを『こう表現しようか、ああ表現しようか』と、いろいろ考えた末に確定した、その表現を自分も味わって、その世界をともにすることだと思います。彼らの思想の「息吹」に直接に触れることが、その思想家を考えるうえで、とても重要なのではないかと思いました》

たしかに、まさに「文は人なり」。実際に文章のさわりを読んでみることで、理解が深まるはずです。

ところが最近の日本の仏教研究のなかでは、「鎌倉新仏教」と称されてきた法然、親鸞、道元、日蓮などの思想研究が少し下火になってしまっているのだと、頼住先生はおっしゃいます。各々の教団が「鎌倉時代にはまだ力が弱く、異端的な存在だった」という歴史的な見方が盛んになったのが一因だそうですが、頼住先生は「仏教思想家としての意味はとても大きく、下火になっているのは残念」とおっしゃいます。

まったくご指摘のとおりでしょう。

今回の一連の講義シリーズでは、上記の名僧たちが何を考えたのかについても、しっかり講義をしていただいています(今回の「総論」では名僧たちの全体的な位置づけを簡単に総覧いただいています)。

また、この「総論」で興味深い部分の1つは、日本仏教と他国の仏教の違いを概論いただいているところです。頼住先生は、中村元の研究を参照しつつ、次のような点を挙げておられます。

「出世間を重視しない=現世主義的」であること。「戒律を重視しない」こと。論理的なものを扱った「仏教論理学」への関心が低いこと。そして、「非常に重層的で、多様な仏教」が並立していること。これらが、日本仏教の大きな特徴だとおっしゃいます。それぞれがどのようなことかは、ぜひ本講義をご覧ください。

頼住先生は、次のようにおっしゃいます。「今でも日本では、天台宗も真言宗も大変盛んですけれども、ではもとの中国はどうかというと、これらは残っていないのです」。中国では、仏教弾圧の歴史などを経て、現在ではそれらの宗派はなくなってしまったのです。

一方、日本ではそれらを現在に至るまで脈々と重層的に発展させてきて、しかも、そこからいくつもの新しい仏教思想を生みだしてきました。その意義は、世界の思想史上においても、とても大きなものといえましょう。

頼住先生は、このシリーズの各論講義で、大乗仏教の考え方の基本についても、とてもわかりやすく教えてくださっています。まずは総論をご覧いただきました後、ぜひ続く各論もご視聴ください。

それぞれの各論講義については、ぜひ頼住先生の講師ページからご確認いただければ幸いです。

◆頼住光子先生の講師ページ
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=262&referer=push_mm_rcm3


(※アドレス再掲)
◆頼住光子先生:【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3631&referer=push_mm_rcm2


※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体(件名、本文いずれも)