編集長が語る!講義の見どころ
大人の学び~発展しつづける人生のために/柳川範之先生×為末大先生【テンミニッツ・アカデミー】

2025/09/30

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

いよいよ9月30日。気がつけば、今年も残り3カ月です。

はたして今年、何ができたか。ついつい、そんな反省も頭をよぎりますが、このようなタイミングに、あらためて「大人の学び」について、真正面から考えてみることも、とても有益なことではないでしょうか。

本来、「学び」は誰のためでもない、自分自身のためのものです。どのような自分になっていくか。その視点がなければ、どんな視点も上滑りしかねません。さらに「広げる学び」と「深める学び」の違いとは……。

本日は、柳川範之先生(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)と為末大先生(Deportare Partners代表/元陸上選手)に「大人の学びの見取り図」を縦横無尽にご対談いただいた講義を紹介します。

いうまでもなく柳川先生も為末先生も、ご自身のご専門(経済学と陸上競技)を世界レベルまで深められ、さらに幅広い視点を追求しておられます。だからこそ、両者のかけあいから、学びの真髄が見えてきます。

◆柳川範之×為末大:大人の学び~発展しつづける人生のために(全6話)
(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5409&referer=push_mm_rcm1

最初に考えるのは、学びの「広げ方」についてです。

ここは、「アンラーン」という考え方が大いに参考になります。アンラーンとは、「learn(学ぶ)」に否定の「un」が付いた言葉ですが、その真意とはどのようなものなのでしょうか。

その点について、柳川先生は次のようにおっしゃいます。

《いろいろなことを学んでくる中で、発想や思考にはずいぶんクセがついている。クセがついていると、新しいインプットをしても、素通りしてしまうようなことが起こる。そこで、今まで身につけてきた発想や思考のクセ、あるいは考え方のパターンのようなことを一旦解きほぐしてみる。そうすると、結果として、新しいインプットをしたときに、それがしっかり頭に入っていく》

例として柳川先生が挙げるのが、「ラーメン好きな人と洋服好きな人とでは、道を歩いていても見えているものが違う」ことです。

たしかに、人間はどうしても自分の関心があるものにばかり目を向けがちです。しかし、それだけではもったいない。少し広い視野を持ってみれば、インプットの幅はグンと広がり、より意味が出てくるのです。

では、自分な好きなジャンルや、自分が積み重ねてきた仕事を「究める」ことはどうなのか。両先生は次のように答えます。

為末先生:《好きなことがあるのなら、アンラーンは全然しなくていいと思うのです。それでそのまま最後まで行ってしまったら幸せではないですか。ところが、やはり時代も変わるし、自分自身も年齢を重ねていくことで不具合が生じたりする。そういうときに、そこからさらに「積もう」とすると、もっと苦しくなるので、そういうときはアンラーンではないか》

柳川先生:《本屋に行くと、自分が本当に大事だと思う棚に一直線に行って、他は見向きもせずに帰ってくる人など、ほとんどいないではないですか。少し歩いている最中に、「あれ、なんか面白そうな本だな」となる。「関係ないと思ったけれど、ちょっと関係あるかもしれない」というような本を手に取ったりします。あれが大事だと思います》

まことにイメージの膨らむ話です。

さらに「学びを深める」ことについて、為末先生の『熟達論』(新潮社)を糸口に話を掘り下げていきます。

この本は、ご自身の競技経験をもとに、いかに「熟達」していくかをわかりやすく説明する本です。最初に「遊」があり、次に「型」に入り、その次に「観」がある。それから中心をつかむ「心」があって、最後は「空」に至る。そのような過程を描きます。

為末先生は、「まず遊びが大事」だと強調されます。

《やはり遊びの持っている一番強力なパワーというのは、「面白いからやっている。それでいいのだ」という、自分の中にある無邪気な好奇心を解放させるところにある。遊びがあればあるほど人は熟達していく》

とはいえ「大人」になると、どうしてもタガがはめられてしまうところがある。それをどう外していくか。その具体的な方法も両先生がお話しくださっていますが、それについてはぜひ講義第3話をご参照ください。

さらに学びを深めていく究極の境地とはどのようなものか。為末先生は「空」や「ゾーン」に言及しつつ、次のようにおっしゃいます。

《われわれ競技者などが深い集中状態に入ったときに、何かいつもと少し違う体験をすることを「ゾーン」と呼びます。私はゾーンというより「空」のほうがいいのではないかと思って、そう名付けているのです》

はたして、これはどのような境地なのか。この点はぜひ、講義本編の柳川先生、為末先生の対話をご参照ください。まさに、両先生でなければ語れぬ内容であり、非常に大きなヒントをわれわれに与えてくれます。

では、これからの時代の「大人の学び」について、どう考えるか。「リスキリング」についても議論を展開してうえで、両先生は次のように指摘します。

為末:《多分ポイントは「好きを追求する」ということと、「自分の好きにとらわれないで、いろいろなものを見てみる」ということのバランスだろうと思います。これからの時代は、「次の時代は何が来るのだろう」と予測して合わせていく学びではなくて、好きを探求していくことになってくる。「やはり、あれはやってみたかった。とても好きだった」ということをもう一度呼び起こしていくことが、結果としてリスキリングというか、幸せな人生につながるのではないか》

柳川:《「深める」と「広げる」の話は矛盾しているように見えますが、この二つは矛盾しないと思っています。どちらかというと、実はしっかり深めていくことで、しっかり広がっていくのだと思っています。やはりしっかり深めないで、少なくとも表面的な時代の要請を追いかけてみても、実は右往左往するだけだと思うのです》

この問題提起のあと、お二人の対話はさらに深まっていきますが、その内容については、ぜひ講義第6話をご参照ください。

現代の日本における「学び」のあり方が明確に位置づけられ、クリアに見えてくる名対談です。


(※アドレス再掲)
◆柳川範之×為末大:大人の学び~発展しつづける人生のために(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5409&referer=push_mm_rcm2


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