編集長が語る!講義の見どころ
わかる!「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史/岡朋治先生【テンミニッツ・アカデミー】

2025/11/14

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

毎年、「オリオン座」や「冬の大三角形」を夜空に見かけるようになると、宇宙に魅かれて天体観測などを少しだけかじった小学生の頃を思い出します。

宇宙について思いを巡らせると、自分の人生の長さや、地球の長い歴史、さらに宇宙のはじまりと終わりなど、まさに宇宙的規模の興味がふつふつと湧いてこないでしょうか。

本日は、「宇宙について、人類がどのように考えてきて、現在どこまでわかっているのか」について、岡朋治先生(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)が教えてくださった、とても興味深い講義をご紹介いたします。コペルニクス、ニュートン、アインシュタインから、最新研究の現在地までわかる、まことにまことに壮大なお話です。

◆岡朋治:「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(全12話)
(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3786&referer=push_mm_rcm1

岡先生は、「人類は、宇宙について95パーセントを知らない」とおっしゃいます。しかし、岡先生がこの講義で教えてくださる「すでにわかった5パーセント」だけでも、一般のわれわれからすると、驚くようなことばかりです。

以下、ご参考まで、第2話以降の講義タイトルと講義キャッチも挙げてみましょう。

(2)宇宙観の変遷その1:古代エジプト、インド、中国の宇宙観とギリシアの天動説

(3)宇宙観の変遷その2:コペルニクスによる地動説の再発見がもたらした影響

(4)宇宙観の変遷その3:ニュートンはどうやって地動説の正しさを証明したのか

(5)一般相対性理論からの予測:ニュートン力学の謎を解く鍵は?…等価原理と相対性理論

(6)動的宇宙解と宇宙膨張の発見:ルメートルの「動的な宇宙モデル」は膨張宇宙論の先駆け

(7)ビックバン宇宙論:ノーベル賞を受賞した「ビッグバン宇宙論」確立への発見とは

(8)特異点定理と量子力学:量子力学の歴史…始まりはアインシュタインの光量子仮説

(9)宇宙開闢からビックバンへ:宇宙開闢についての量子力学の2つの説…そしてビックバン

(10)ビッグバン後の進化と宇宙の組成:「宇宙背景放射の異方性」発見で分かった驚くべき事実

(11)宇宙の運命と5つの時代:『宇宙の5つの時代』に書かれた宇宙の運命と熱的な死

(12)今後の展望と宇宙研究の意味:なぜわれわれは宇宙に惹かれるのか

第2話では、古代エジプト、インド、中国、ギリシアなどの神話で、宇宙がどのように把握されていたかが語られます。そして第3話では、プトレマイオスの天動説、コペルニクスの地動説、さらに天文学を発展させたチコ・ブラーエやケプラーなどが登場します。

さらに、第4話でニュートン、第5話でアインシュタインが登場します。

全12話の半分にも満たない「第5話」が「アインシュタインの話」だと聞いて、残りの7話はどうなるのかと不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。まさにその部分で、アインシュタインの後に続く研究者たちが、宇宙をどのように解き明かしてきたのかを、岡先生はご説明くださるのです。

たとえば、実はアインシュタインは「宇宙が膨張したり収縮したりすることはない」という信念を持っていたそう。しかし、アインシュタインの一般相対性理論から、宇宙の膨張・収縮を導き出したフリードマンやルメートルなどといった科学者が登場してきます。それが有名な「ビッグバン」の宇宙論へとつながっていきます。

やがて、ビッグバンの証拠も発見されて、「膨張宇宙論」は確固たるものになりました。そこで問題になるのが、「ビッグバン以前には、何があったのか」です。これについては研究の結果、「とても小さな状態から宇宙は始めなければいけない」ということがわかってきました。

ここで重要になってくるのが「量子力学」ですが、では、量子力学とは何か?

岡先生は「理系の学生の数年間はこれを勉強するために費やされますから、サクっと説明するわけにはいきません」とおっしゃいますが、講義では図を多用して、なるべくわかりやすくご説明くださいます(第8話以降)。

有名なホーキング博士なども、第9話で出てきます。それらがどのような内容かについては、ぜひ講義をご覧ください。

最後に岡先生は、現在の学界で、この宇宙の盛衰について「5つの時代区分」で説かれている内容を教えてくださいます。

宇宙の「原始時代」は、宇宙開闢から10の5乗年以下。次の「恒星の時代」は、10の6乗年(つまり100万年)から10の14乗年(ちなみに「1兆年」が10の12乗年です)までで、エネルギーが恒星によってどんどん生み出されていく段階です。現在は、宇宙が誕生してから約138億年とされますから、まさにこの段階にあります。

次の「縮退の時代」は、10の15乗年から10の39乗年のことです。「恒星の時代」のエネルギーの原料であるガスが枯渇して、恒星がどんどんと白色矮星、中性子星、ブラックホールへと縮退していってしまう時代です。

「縮退の時代」の後に存在できるのはブラックホールだけとなって、「ブラックホールの時代」となります。これは10の40乗年から10の100乗年くらいのこと。さらに、最終的にはブラックホールも量子力学的効果によって蒸発してしまいます。その結果、「暗黒の時代」が訪れます。これは10の100乗年以上の後のこと(ちなみに、先ほど書いたように、10の12乗年が「1兆年」です)。ざっくりいうならば、まさに「宇宙は悠久な時を経て熱的な死を迎える」と推測されるのです。

なんとも無限に広がるようなお話ですが、岡先生は、宇宙のことを知る意義を次のように語っていらっしゃいます。

《宇宙を知ることは自分を知ること。例えば仕事が一段落したとき、あるいは何かに行き詰って、ちょっと悩んだとき、または単純に夜眠れないときなどに、ふと宇宙について考えてみていただければと思います。そうすると、人生はたぶん、少しだけ豊かなものになるのではないかと思います》

まさに、ご指摘のとおりでしょう。人生を豊かにするために、ぜひ本講義をご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆岡朋治:「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3786&referer=push_mm_rcm2