編集長が語る!講義の見どころ
いまこそ習近平政治と中国の本質を考える/小原雅博先生【テンミニッツ・アカデミー】
2025/11/21
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
日本と中国の緊張が高まっています。11月18日には北京で外交当局の局長会議が行なわれましたが、中国の劉勁松・アジア局長がポケットに手を突っ込んだままという、まことに非礼な姿で写真を撮らせたことが話題にもなりました。
先日、高市総理の発言に対して「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と書いた中国駐大阪総領事の薛剣氏もそうですが、中国側の発言は、相手を見て外交をするというより、「自分の目上」なり「党指導部」なりの意向を忖度して、あえて強く出ているように映る部分もあります。
なぜ、そうなるのか。
そのことについて考えるうえで参考になる小原雅博先生(東京大学名誉教授)の講義を、本日はご紹介します。小原先生は外務省でアジア大洋州局審議官、在上海総領事などをご歴任後、東京大学法学部の教授に就任されました。外交官時代の知見も踏まえつつ、習近平とはいかなる人物で、何に直面し、何をめざしているのか。中国はどこに行こうとしているのかをお話しくださいます。
少し前に収録した講義ですが、あらためて視聴すると、小原先生が示してくださった方向性や懸念点は、むしろますます強まっているようにも思われます。習近平体制のあり方を考えるうえで、とても参考になります。
◆小原雅博:習近平―その政治の「核心」とは何か?(全6話)
(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4155&referer=push_mm_rcm1
この講座は、第1話で「概説講義」、続いて第2話からインタビューでの「深掘り講義」という構成になっています。最初の概略講義でイメージをつかむ手もありますし、逆に「深掘り講義」で知りたいテーマを学んでみても良いかもしれません。講義の内容は以下のとおりです。
(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
(2)習近平の生い立ちと純潔化
「紅二代」「太子党」…習近平の生い立ちと経歴
(3)権力の集中と反腐敗闘争
中国共産党…中央集権の弱点と底知れぬ巨大な腐敗
(4)独裁の危険性と習近平思想
習近平思想の内容とは…本当に「思想」と呼べるものなのか
(5)中国の国内情勢と対外政策
西側とは全く違う、中国の「民主」の概念とは何か
(6)米中問題と中国共産党の今後
最も大事な核心的利益は「共産党の存続」…米中対立の焦点
まず、小原先生が強調するのは、習近平の政治の特徴は「領導(リンドウ)=強制力を伴った指導」であることです。つまり、党が国家を裏から統治し、すべての分野において決定権を持って政治を進めていく「党国体制」です。
中国共産党には9500万人の党員がいますが、いまや習近平が「党の核心」となり、権力が習近平に集中しています。
よく知られているように、習近平に権力が集中する大きな契機は「反腐敗闘争」でした。中国の腐敗は、想像を絶するレベルに達しており、習近平の前任の最高指導者である胡錦濤(こきんとう)が「この腐敗を放っておけば国が滅ぶ」と語ったほど共産党内に広がっていました。
それを習近平が潰していったわけですが、同時にそれは権力闘争の側面もありました。その内実については、ぜひ講座の第2話から第3話をご覧ください。
また、第4話では、なぜ中国共産党の「反腐敗」が権力闘争のような強権的アプローチになっていくのかについて、民主主義諸国の権力分立との比較で語られます。つまり、権力分立をとっている国と比べ、いかに腐敗しやすく正されにくい体質に陥りがちかということです。
もちろん、権力が集中することにはメリットとデメリットがあります。
メリットは、新型コロナのような疫病の折に、いざ動き出せば、極めてスピーディーに強権的な封じ込めができることがあります。中国は、武漢での感染を封じ込めた実績を強調し、「自分たちの体制は、世界のなかでも優れている」と呼号しました(実際には、必ずしもそうではなかったようですが)。
しかし権力の集中は、トップが判断を間違えたとき、大きな悲劇を招きかねません。文化大革命(一説には犠牲者は数千万人)は、その象徴的な例でしょう。
とくに中国共産党では、党内で出世するためには中央の覚えがめでたくならなければなりませんから、皆が上(中央)だけを見て仕事をしがちです。
その出世のあり方がどのようになっているのか、弊害がどのように現われるのか。中央が「裸の王様」になってしまう危険はないのか。そもそも、中国でいう「民主」とはどのような概念なのか。それらの点は、ぜひ本講座の第3話から第5話をご覧ください。
そのような権力集中のなかで、強調されているのが「習近平思想」です。では、「習近平思想」とはいかなるものなのか。
小原先生は、「中身を見ていくと、本当に思想なのかという疑問があります」と問題提起しつつ、その中身を解説くださいます(第4話)。小原先生がそうおっしゃるとおり、なかなか内容が把握しづらい「思想」ですから、この講座でその特徴を学ぶことは重要な機会となるはずです。
習近平は、「強国強軍」をめざし、「中華民族の偉大な復興」を唱えて愛国主義をかきたて、2049年の中華人民共和国建国100周年には「総合的な国力と国際的な影響力が先頭を走る国家」となるのだと訴えています。その主張から、米中対立も激しさを増すこととなりました。
それがどのようなもので、アメリカと中国の対立の「抜きがたいトゲ」がどこにあるのかについても、小原先生はお話しくださいます(第6話)。ここは、今後を展望するときに、とても大事な論点でしょう。
物事を判断するときには、個々の現象を見るのではなく、その本質を洞察しなければならない。それはすべてのことに共通することでしょう。小原先生の本講座は、「習近平政治」の本質を見極めるうえで、しっかり押さえておくべきものです。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆小原雅博:習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4155&referer=push_mm_rcm2
人気の講義ランキングTOP10
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部