編集長が語る!講義の見どころ
なぜ空海が現代に重要か~新しい社会へのヒント/鎌田東二先生×岡本浩氏×長谷川敏彦先生【テンミニッツ・アカデミー】
2025/11/28
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
テンミニッツ・アカデミーでは、鎌田東二先生(京都大学名誉教授)による《空海の真髄 (全7話)》講義を配信しています。空海が描いた密教の世界は、日本仏教のなかでもなかなか理解が難しいものですが、「詩がわからなければ空海はわからない」という視点から、空海が教えを説くために遺した「詩」を読み解くことで空海の世界に迫る、突き抜けた講義です。
この鎌田先生の「空海講義」に触発されて、エネルギー技術の専門家である岡本浩氏(東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者)と、医師であり医療制度改革の専門家でもある長谷川敏彦先生(帝京科学大学特任教授・学長補佐)が結集して、鎌田先生を交えた鼎談が実現した異色講義を、本日は紹介します。
空海とエネルギーと医療。この組み合わせを見ただけでも、良い意味で「突き抜けた」講義であることが想像されると思いますが、展開されるお話はその想像の上を行くもの。空海の示した壮大な知的空間が、現代においても大きなヒントを与え、最新科学のその先のビジョンを理解するうえでも大いに役立つことが見えてきます。
◆鎌田東二×岡本浩×長谷川敏彦:エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(全6話)
(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6017&referer=push_mm_rcm1
この鼎談講義はまず岡本氏がエネルギーの見地から、続いて長谷川先生が医療の見地から「空海の可能性」を語り、最後に総括的に鎌田先生が空海の思想について、特に密教的な生命観や曼荼羅の世界観を語っていく構成になります。
まず、全体像をつかむために講義全話を一覧してみましょう。
(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
このラインナップを見ただけで、いかに壮大な方向性が示されるかが伝わってきます。
まず岡本氏が説くのが、現代社会におけるエネルギー(電気)のネットワークと通信のネットワークを、人間の身体の血管と神経のネットワークと対比する見方です。
人間は血管で身体に必要なエネルギーや物質を運び、神経系で身体随所の情報を的確に把握しています。脳を含めた神経系と血管系は相当に深い関係があると岡本氏は語ります。
そう考えた時、電力ネットワークは「血管系」に似ており、インターネットやAIなどの情報技術は「神経系」に似ていることが見えてきます。とすれば、いかに両者のネットワークを融合していくかが社会全体の健全なる維持発展のために重要になることが、自ずと見えてきます。
さらに人間の場合、身体がどのようにコントロールされているかというと、血流や神経の働きなどは、意識せずに自律的に動いている仕組みでもあります。ある意味では、論理的思考や理性などを超えた「メタ認知」的な働きでコントロールしているともいえます。
では、それについてどのように考えていくべきか。
ここで岡本氏は物理学者のロジャー・ペンローズと医師のハメロフが説く「人間の意識は脳内の微小管で生じている量子的な効果だ」とするペンローズ=ハメロフ仮説などを紹介していきます。
岡本氏は、このことについて考えていたとき、鎌田先生の空海講義に突き当たって、「ほとんど同じことが、千数百年前に言われていたことに気づいた」のだとおっしゃいます。はたして、それはどのようなことか。それはぜひ講義本編をご覧ください。
続いて長谷川先生が、現代の医療問題に迫ります。長谷川先生がまず説くのは、高齢化社会の登場によって医療は大きな転換期を迎えていることです。
若い人であれば、患った病気をピンポイントで治療することで健康体に戻る前提が持てます。しかし高齢者の場合、複数の病気や悪い箇所を抱えながら、それが悪化したり良くなったりというサイクルをくり返しながら死を迎えていくことになります。
つまり、病気を治すだけではなく、予防や介護なども総合的にやっていかなければならないということです。
では、高齢者の医療に重要な発想の転換とは何か。
長谷川先生は、医療のゴールも「治療」から、「ADL(日常生活動作能力)の改善や、QOL/QOD(生活の質/死の質)の向上」になっていくと説きます。医学の考え方も「悪い部分を取り除く」ことから「元気な源を見つけて、それを支援する」方向へと変わらなければならないと。
ここで必要なのは「生命力や元気の源を見つけて、それを良くする」ための新しい身体観や世界観だ――と考えていたことから、鎌田先生の空海講義に触発されることとなったといいます。とりわけ、すべてのものがお互いに関係性につながっていて、すべてのものがお互いに照らし出しているような密教的な世界観をしっかりと理解していくことが大いに必要ではないかというのです。
このご両者の話を受けて、鎌田先生があらためて「空海」を語ります。
まず鎌田先生は岡本氏の話を受けて、「電気のスイッチはオン・オフがあるが、密教の世界観は全てを『オン』にしてつないでいく」「全宇宙を分割せずに『つなぎまくる』」のだと説きます。さらに空海の「真言」のあり方は、実は虚空にしまわれている全宇宙記憶のようなものにアクセスする方法論なのだと。
続いて、空海が著した『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』の冒頭の詩を解説されます。《生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し》》というメッセージが含まれる詩です。
実はこの詩については、鎌田先生の先の講義《空海の真髄 》でも詳細な解説をいただいたのですが、その講義から半年以上たって、実は解釈で新たな境地に達したのだといいます。はたしてそこから導き出される「生命の全体像」とは?
さらに最終第6話では、空海の曼荼羅の世界観について、実際に曼荼羅を示しながら解説いただきます。はっきりいって難解ですが、しかし実際に曼荼羅を観つつ鎌田先生のお話を聞くことで、間違いなく伝わってくるものがあります。
このように概略を読んでくると難しく感じてしまうかもしれません。実際にけっして平易な内容の講義ではありませんが、だからこそ、講義を視聴して、先生方のメッセージを「感じる」ことで見えてくる講義だと思います。ぜひご覧ください。
実は、三先生方とも、ぜひこの続きの深掘り講義を考えておられました。しかし、鎌田東二先生のご逝去によりそれが叶わなくなってしまいました。私自身も、本当に残念無念です。あらためて鎌田先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます。
(※アドレス再掲)
◆鎌田東二×岡本浩×長谷川敏彦:エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6017&referer=push_mm_rcm2
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