編集長が語る!講義の見どころ
日中対立を深く理解するために中国共産党の本質を学ぶ/橋爪大三郎先生【テンミニッツ・アカデミー】
2025/12/02
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
現在の日中の対立をどのように考えるべきなのでしょうか。中国の主張について、「あまりに荒唐無稽」「乱暴な言いがかりではないか」などと感じておられる方もいらっしゃると思います。
しかし、実は「荒唐無稽」や「言いがかり」だからと安穏としていられるものではありません。
昭和初期(昭和5年=1930年頃)にも中国を中心に「田中義一総理が天皇に『世界征服には中国の征服が不可欠』と上奏した」とされる「田中上奏文」なるプロパガンダ文書がつくられて流布されたことがありました。内容的にも形式的にもありえない内容が書かれた偽書だったのですが、これが世界で広く信じられてしまった面があります。それが逆に、日本が「世界戦争」へと進んでいく一つの背景となったことも否定できません。
日中対立という問題を考える場合には、中国共産党がいかなる存在なのかということを、真っ正面から考える必要があるでしょう。
本日紹介するのは、その点について鋭く切り込む橋爪大三郎先生(社会学者/東京科学大学名誉教授)の講座です。とりわけ中国の人権問題の本質を詳細にご解説いただいています。
「なぜ、こういうことが起きているのか」を知るために、いまこそ学ぶべき講義です。
◆橋爪大三郎:中国共産党と人権問題(全6話)
(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4296&referer=push_mm_rcm1
講座の第1話は、中国共産党と人権の問題、さらに人権と内政干渉の問題などについて「総覧」いただく講義です。まずはここで、現在の状況をしっかり把握することができます。
とりわけ、欧米が中国の人権侵害を「ジェノサイド」として糾弾していることについてのご分析や、「中国には中国のやり方がある」という中国共産党側の反論を欧米がどう捉えているかについてのご見解は必見です。
第2話から「深掘り講義」となります。まず、中国共産党の位置づけをどう考えるかという重要事項についての議論が進んでいきます。
橋爪先生が指摘するのは「中華人民共和国の憲法の前文には中国共産党について書いてあるが、条文には共産党についての規定がない」ということです。
中国共産党は、入りたい人だけが集まっている任意団体です。しかし明確に、政府を指導し、人民解放軍を指揮しています。つまり「国家の上に党がある」という政治体制であり、中国共産党は、憲法によって縛られない「超法規的な存在」ではないか、ということです。
これが意味することは何か。
ここでまことに興味深いのは、橋爪先生の「大日本帝国憲法と比較すると、よくわかる」というご指摘です。
大日本帝国憲法には、天皇についての規定がたくさんありました。橋爪先生はこうおっしゃいます。
《第1条では「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、第3条では「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」と書いてあります。また、「天皇は憲法の条項によってその権限を行使する」ことや、「内閣が輔弼と助言をして、政治責任は内閣が取って、天皇は責任を取らない」など、いろいろと書いてあります。要は、天皇についての憲法の条項があるので、天皇は国家機関なのです。国家機関であれば、憲法に縛られます》
つまり、天皇は憲法に規定される立憲君主制だったのです。天皇は国家機関だとする「天皇機関説」が正しいとされていましたし、天皇ご自身もそう考えておられました。
しかし、昭和10年(1935)前後に「国体明徴運動」というものが起こり、「天皇を機関などというのは、不敬でとんでもない」という風潮になります。それによって誰も軍隊を止められなくなり、日本が暴走していったと橋爪先生はおっしゃいます。
では、中国共産党は……。まことに重要なご指摘でしょう。
さらに橋爪先生は、加えて、「中国」という概念そのものが、実は近代になって発明された考え方であり、だからこそウイグルやモンゴル、チベットなどからすると厳しい側面があるとご指摘くださいます。
加えて、中国共産党のそもそもの「存在意義」や、中華人民共和国で行なわれている「洗脳プログラム」の実際についても詳細にご解説くださいます。「言論」を変え、「主張」を捻じ曲げるために、どこまでのことをやるのか。ここも知っておかなくてはならない内容でしょう。
そして橋爪先生の講義は、第5話から「そもそも人権思想と憲法とは?」「西洋人は人権をいかに理解しているか」という議論に進みます。橋爪先生は、キリスト教思想から出てくる「人権」の考え方と、中国の儒教秩序の考え方の違いを、とてもわかりやすくお話しくださいます。
キリスト教の考えでは、「1.神様、2.人間、3.王様」の順番になる。それゆえ、神様が人間に与えた「権利」は王様が侵害できないという理屈になる。一方、中国の儒教的な考えでは「天が、人間に社会秩序を与えるよう皇帝に命じる」という論理なので、「1.天、2.皇帝、3.人間」となる。だから「権利」は皇帝がそれを認めたときだけに与えられるものになる。
この思想背景の違いをどう理解し、どう考えるべきか。中国と欧米のはざまで、日本はいかに行動すべきなのか。「中国が暴走しないように」することこそ中国のためだが、そのためにはどうすべきか。
それらについても、橋爪先生はご指摘くださいます。日本人として考えなければならない問題提起が満載の講座です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆橋爪大三郎:中国共産党と人権問題(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4296&referer=push_mm_rcm2
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