編集長が語る!講義の見どころ
(今を知る)「考える」とは何か?~AIと人間の未来/特集&中島隆博先生【テンミニッツ・アカデミー】

2026/02/13

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

「AI」がどんどんと日々の暮らしのなかに入ってきています。それは目に見えるかたちでも、あるいは目に見えないかたちでも、本当に怖ろしいほどの勢いです。

いま多くの方々が、実感知として「このまま行ったら、人間はどうなるのだろう」と感じているのではないでしょうか。

ここで「本当に重要」なことは、「人間とはいかなるものか」「人間は何をなすべき存在なのか」をあらためて真正面から考えることであるように思えてなりません。そうでなければ、情報収集や判断や日々の細かい業務などをAIに委ねていった先にある人間の未来は、けっして明るいものとはならないでしょう。

さて、ではどうなるのか? 人間とAIの本質的な違いはどこにあるのか。人間がこれから為すべきこととは何か? いまこそ深く考えてみたい講義群をまとめました。


■今を知る講義まとめ:AIと人間の未来を考える

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=279&referer=push_mm_feat

◆中島隆博先生:AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6108&referer=push_mm_rcm1

◆與那覇潤先生:江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5842&referer=push_mm_rcm2

◆西垣通先生:ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4921&referer=push_mm_rcm3

◆岡野原大輔先生:10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5403&referer=push_mm_rcm4

◆今井むつみ先生:人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5960&referer=push_mm_rcm5

◆桑原晃弥先生:OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5342&referer=push_mm_rcm6


■ピックアップ講義:考えるとは相手の頭を使って考えること…AI時代と人間の再定義(中島隆博先生)

本日は特集から、中島隆博先生(東京大学東洋文化研究所長・教授)に「考える」とはいかなることかを哲学的にご探究いただいた講義を紹介します。

このテーマのそもそもの発端は、「AIは考えているのか、考えていないのか」というシンプルな問いにあります。

今回の特集のなかでも、たとえば西垣通先生や今井むつみ先生は「AIは考えていない」という立場を取っておられます。一方、実際に生成AIの開発に携わっておられる岡野原大輔氏は「そもそも、考えるということがどういうことかがわかっていないけれども、生成AIと向き合っていると、どう見ても『考えている』としか思えなくなってきている」という趣旨のことをおっしゃっています。

AIがどんどんといろいろな場所に浸透し、実際に社会を動かしはじめているいまだからこそ、「人間にとって考えるとは、どういうことか」「AIと人間の関係性とは}「道徳の起源とAIの未来とは」ということについて、真正面から考えてみるべきでしょう。

はたして、その思索の行方とは?

◆中島隆博先生:AI時代と人間の再定義(全7話)
(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6108&referer=push_mm_rcm8

まず第1話は、上記の問題意識=「AIは考えているのか、いないのか」から始まります。岡野原大輔さんの講義《生成AI・大規模言語モデルのしくみ(全6話)》を見ると、いかに生成AIがトレーニングを積んでいるかが、とてもよく分かります。

端的にいえば、ネット上の膨大なデータを読み込み、自分たちで自動的に「穴埋め問題」をつくり、そこにどのような言葉が入るのが適切なのかを膨大に繰り返していくのです(自己教師あり学習)。人間が問題を入力したりするのではなく、AI自身がどんどんと進めていくので、考えられぬほど大規模な学習が可能になります(詳細は、ぜひ岡野原氏の講義をご覧ください)。

それを膨大に繰り返していくうちに、どのような文脈のときに、どのような言葉を用いるのが適切なのかが学習されていき、的確に答えを返せるようになっていきます。生成AIをお使いになっている人であれば、その精度がどんどん高まっていることは実感知として理解されていると思います。

では、それが本当に「考える」ことなのか。

ここで中島先生は、とても興味深い指摘をされます。

まず、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏の問題敵機をご紹介くださいます。物事を見たり聞いたり感じたりすることを「知覚」「感覚」といいますが、この「覚」とは自分の身体性に根差しているものです。

とすれば、「考える」ということも「考覚」ともいうべき身体的なものに支えられているのではないか。身体性がなければ、「考える」ということは成立しないのではないか。

その点、AIは「思考の三位一体」が欠如していると中島先生はおっしゃいます。この三位一体とは、「思考の対象」「思考するプロセス」「思考の活動そのもの」のこと。それが、AIでは成立していないというのです。

それに対して、人間の場合はたとえば「論争」などを行ないます。それによって、お互いの世界把握や問題系の違いをぶつけあい、お互いの対話によって、より正しそうなものを「発見」していくのです。

中島先生は、こうおっしゃいます。

「考えるというのは相手の脳みそを使って考えること。1人で書斎に籠もって呻吟しながら文字を書いているような哲学者のイメージをお持ちの人もいらっしゃるかもしれませんけれど、だいたい書斎に籠もって書いたものというのはろくでもない。後から見るとただの妄想なのです。考えるというのは、やはり共同行為だと私は本当に実感しています」

とても重要なご指摘でしょう。誰かとの対話とそれに基づく思考をくり返して、人間は「新しい概念」や「新しい世界観」を打ち立てていくのです。

一方、AIの場合、その前提になっているのは「現在の厖大なデータベース」です。だから、「現時点」での穴埋め問題は解けるかもしれません。しかし、それでどうやって「新しい概念」を生み出せるのか。そこに未来はあるのか。AIは未来を創造できるのか。

ここが大きく問われるのです。

AIは、大学受験のようなものであればスイスイ解けるでしょう。しかし、それこそ中島先生が生涯をかけて探究されているような「新しい概念」「未来の概念」を見つけ出していく知的営みは不可能ではないか。

中島先生は、「新しい概念」を生み出すために、耳障りで、何か引っかかる言葉がヒントになるのだといいます。それはどのようなことかは、第3話をご覧ください。

また、人間にとって「思考したり」「文章を書いたり」することは、そのプロセス自体が重要なのだといいます。

次の中島先生の言葉も、とても印象的です。

《文章を書くときに、考えたことを文章にしているわけではないのです。そうではなくて、自分が何か言葉を書いてみて、その言葉と対話しながら、「あれ? 何でこんな言葉を書いちゃったんだろう?」「これはどう展開するのかな?」などと、選択、判断を常に迫られて、文章をなんとか書いているわけです。書き終わらないと、その行き先は分からない。でも、この書いているプロセス自体が、皆さんにとってどれだけ貴重なプロセスかということなのです》

たとえば、ダンスをする場合、何らかの目的達成のためにダンスをするという場合はそう多くないはずです。ダンスをして楽しむことそのものが「目的」になっています。書いたり考えたりするのも同じだと、中島先生はおっしゃいます。

続いて、AIと人間の関係性はいかなるものなのか。ここで中島先生は、京都大学の出口康夫先生の『AI親友論』を引用しながら論じていきます(第4話)。

さらに第5話では、生老病死などの身体性を持たないAIが、本当に「道徳」的であることができるのかということも論じていきます。

この見地で重要なのは、「道徳の起源は理性なのか、感情なのか」ということです。これは、哲学的に長いあいだ議論されてきたことです。ここで中島先生は、西洋哲学における様々な見方や、東洋哲学の考え方をご紹介くださりながら、「AIに道徳を『装備』できるのかどうか」に迫っていきます。果たしてAIは、「道徳的な進歩」についていけるのかどうか――。

AIに対するこのような思考の積み重ねから、逆に「人間は本当は何か」ということが見えてきます。われわれ人間が、これから何をしなければいけないのか。そのことをクリアに把握できる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)

■今を知る講義まとめ:AIと人間の未来を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=279&referer=push_mm_feat

◆中島隆博先生:AI時代と人間の再定義(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6108&referer=push_mm_rcm9


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