編集長が語る!講義の見どころ
第2次緊急事態宣言・コロナ対策再検証(テンミニッツTVメルマガ)

2021/01/19

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
1月7日に新型コロナウイルスについて2回目となる緊急事態宣言が発出されました。これまでにも増して不安な日々をお過ごしの方も多いと思います。しかも今回は、前回の緊急事態宣言の折より情報や意見が錯綜(さくそう)し、「本当は何をすべきか」が見えづらくなっています。

新型コロナウイルスの最大の問題とは何なのか? 感染拡大を抑え込むために、どのような手を打つべきなのか? それらについて、小宮山宏先生(テンミニッツTV座長、東京大学第28代総長、株式会社三菱総合研究所理事長)と曽根泰教先生(テンミニッツTV副座長、慶應義塾大学名誉教授)に、1月8日(金)収録の緊急対談で迫っていただいた講義を紹介いたします。

◆小宮山宏×曽根泰教:第2次緊急事態宣言・コロナ対策再検証(全4話)
(1)問題は何か?
実は、第1回の緊急事態宣言は「効果がなかった?」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3842&referer=push_mm_rcm1

この講義シリーズで、両先生が指摘される「新型コロナウイルスの最大の問題」は、「無症状者や軽症者からの感染」です。たとえば、こんな事例が象徴的です。

「入り口で体温を測り、手の消毒もしていたにもかかわらず、院内感染してしまった病院があります。なぜかというと、発症前の人がすり抜けて行ってしまったのです」

このような状況は、「無症状者、軽症者を見つけ出して隔離する」ことができなければ、対処することができません。そこで両先生がおっしゃるのが、「現在、これだけ新しい技術や医療の方法が発達しているのだから、公衆衛生の旧来的な手法だけでなく、その新しい技術と組み合わせた手法を、新たに発出すべきではないか」ということです。

両先生の議論の焦点がPCR検査です。PCRについては「感度が7割」「偽陽性、偽陰性の問題がある」という指摘がなされてきましたが、それは技術的にはもう解決されていると小宮山先生はおっしゃいます。

無症状者、軽症者を見つけるにはPCR検査をするしかありません。ただし、現状の日本の法制度では、ここに1つの壁があります。PCRで検査をして「陽性」だとわかったら、原則としては「病院に入院」させなければならないのです。現在、新型コロナウイルス感染症は、感染症法の「第2類」に位置づけられているためです。

もちろん、実際の運用としては、「高齢者や基礎疾患がある人のみ入院で、ほかの軽症者・無症状者は自宅やホテルでの待機」といわれています。しかし、国民の側からすると、どう判断すべきか「あいまい」です。また、高齢者にしても元気な人もいらっしゃるわけです。やはり「軽症者とはこういう症状です」「軽症者、無症状者はこうしてください」ということを、政府がもっと明確化すべきだ。そう、両先生は指摘されます。

PCRについて、現在も、さまざまな意見が出されています。しかし、それぞれの意見の顔を立てた中途半端なかたちではなく、やるべきことを一気呵成にやるべきでしょう。

「法律にコロナを合わせるのではなく、コロナに最適化した体制をつくるべき」というのが、両先生が強調されることです。そのために、何をすべきか。また、現在、ワクチンなどの技術は、各国でどのように高められているのか。それらの詳細については、ぜひ講義本編をご覧くださいませ。

加えて問題になるのが医療現場の逼迫です。現在、コロナ対応に当たっておられる医療従事者の皆さんは、本当に信じられないほどの奮闘をされています。しかし、国民の数あたりのベッド数は、日本は世界のトップクラスに多く、感染者数は、まだ欧米の十分の一~数十分の一なのに、なぜ「医療崩壊」などという事態になってしまうのでしょうか。

医療資源配分に、大きな問題があるのではないか。もっと打つべき手があるのではないか。そう両先生はおっしゃいます。具体的な事例も交えて提言いただいていますので、こちらもぜひ講義本編をご覧ください。

「ひと言でいえば、日本は現場の強さで、ここまで持ってきた。しかし、政策がまるでなっていない」。この小宮山先生の結論は、ぜひとも熟考すべき部分でしょう。

さらに、実は本講義の冒頭では、「実は第1回の緊急事態宣言は『効果がなかった』」という驚くべき検証結果も示されます。今回の緊急事態宣言について考えるうえでも、ぜひとも参考にすべきデータです。

対症療法的に考えたり、さまざまな思惑や権益の妥協を図ったりするばかりでは、対策は後手後手の効果なきものになってしまいます。「本当は何をしなければならないのか」。ぜひ、小宮山先生、曽根先生の本質を探究する講義を参考にしていただければ幸甚です。

(※アドレス再掲)
◆小宮山宏×曽根泰教:第2次緊急事態宣言・コロナ対策再検証(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3842&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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「お互いに競い合い、励まし合うからこそ勉強ができる」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3525&referer=push_mm_hitokoto

「人生を幸福にする発想法」で考えると「人間は猪八戒だ」
出口治明(立命館アジア太平洋大学<APU>学長/学校法人立命館副総長・理事)

出口 ところで、アレクサンダー大王の家庭教師は誰か、覚えていらっしゃいますか。

―― アリストテレスですよね。

出口 はい。ピリッポス2世というお父さんが大枚はたいてアリストテレスを家庭教師に呼んできた。どこで教えたかも覚えておられますか。

―― 有名なエピソードがございましたね。

出口 はい。ピリッポス2世はアレクサンダーと同じ年頃の貴族の子弟を集めて、学校をつくったのです。そこでアリストテレスが教えました。お互いに競い合い、励まし合うからこそ勉強ができる。これは、人間の本性だと思います。


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今週の人気講義
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“アメリカ”という概念の覚醒は欧州での7年戦争に起因する
東秀敏(米国安全保障企画研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3711&referer=push_mm_rank

徳川家康が現代日本の原型を形作る上で果たした二つの役割
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授
神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3836&referer=push_mm_rank

なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明(東京大学総合文化研究科言語情報科学専攻准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3573&referer=push_mm_rank

アイデアを可視化するための「2種類のプロトタイピング」
佐宗邦威(戦略デザインファームBIOTOPE 代表)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3776&referer=push_mm_rank

きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3240&referer=push_mm_rank


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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて、前回(1/15配信のメルマガ)は、昨年(2020年)配信開始となった講義のうち、特によく視聴された講義の一つとして前野隆司先生の講義(以下)をご紹介しました。

実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司(應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3527&referer=push_mm_edt

今回はシリーズに注目してみました。昨年配信開始となったシリーズのうち、特によく視聴されたシリーズの一つが以下になります。

◆橋爪大三郎:宗教で読み解く「世界の文明」(全9話)
(1)文明とは何か
数千年の歴史のなかで勝ち残ってきた文明が4つある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3340&referer=push_mm_edt

このシリーズは、橋爪大三郎先生(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)が著書『4行でわかる世界の文明』(角川新書)を下敷きにして、キリスト教、イスラム教など世界の4つの文明について独自の視点で解説する人気講義です。
橋爪先生は、古代から現在まで非常に厳しい競争社会のなか勝ち残ってきた4つの文明を把握することで、混沌とする現在の世界を理解できるといいます。
まだ視聴していないという方、こちらもぜひシリーズを通してご視聴頂ければ幸いでございます。