編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》心の柔軟性を高める~「逆・タイムマシン」の発想/楠木建先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】

2026/05/06

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

新緑のまぶしい春から初夏の佳き季節。しかし「五月病」などという言葉でも象徴的なように、メンタルの問題が顕在化しやすい時期でもあります。

なぜ、この佳き季節にメンタルの問題が出てきてしまうのか。指摘されるのが、大きな環境の変化です。

季節が変わり、寒暖差なども激しくなりがちで、しかも新年度から身の回りの環境も変わりがち。そのようななかで、知らず知らずのうちにストレスが溜まってしまうのです。

このようななかで大切なのが、環境変化をうまく受け止められる(受け流せる)「心の柔軟性」を、いかに養い高めるかでしょう。

人はついつい自分の考えややり方に固執し、規則やルールも杓子定規に捉え、自分とは異なる価値観を遠ざけてしまうものです。心の柔軟性を高め、あらゆる状況に臨機応変に適応していくために、どう考えるべきか。そのヒントとなる講義を、今回の《今を知る》特集で集めました。


■今を知る講義まとめ:心の「柔軟性」を高めよう

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=182&referer=push_mm_feat

◆楠木建先生:「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3742&referer=push_mm_rcm1

◆川上浩司先生:「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3968&referer=push_mm_rcm2

◆三谷宏治先生:重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5230&referer=push_mm_rcm3

◆為末大先生:幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4166&referer=push_mm_rcm4


■ピックアップ講義:「逆・タイムマシン」で物事の本質を見抜く(楠木建先生)

本日は、特集のなかから、楠木建先生(一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻特任教授)の《「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス》講義を紹介いたします。

時代が大きく変化していくとき、いかにそれに溺れずにいられるか。ここは、とても難しいことではないでしょうか。

ときに「時流」は、多くの人を巻き込みつつ、それまででは考えられなかったような事態をも現出させていきます。そしてメディアは、たえず危機意識を煽り、流行りの議論ばかりを喧伝します。

しかし、歴史を振り返ってみると、そのような流れに安易に踊って、結局、ますます悪いことになってしまう例も散見されます。

どうすれば、正しい判断基軸を持てるのか。それを考えるうえで、とても参考になる「発想法」を、楠木建先生が教えてくださいます。

◆楠木建先生:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(全3話)
(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3742&referer=push_mm_rcm5

楠木先生が唱える「逆・タイムマシン経営論」は、言葉のとおり「タイムマシン経営」の「逆」です。

「タイムマシン経営」は、孫正義さんなどが唱えてきたもの。「今この時点においても世界のどこかで未来は実現している。たとえばシリコンバレーなどで成功している未来的なビジネスモデルやWebサービスを、いち早く日本で展開すれば、先行者利益が得られる」という考え方です。

では、「逆・タイムマシン経営論」とは何か。

楠木先生が説く方法論は、「過去の経済雑誌や新聞などの記事を振り返り、近過去にさかのぼって読んでみる。すると、同時代のいろいろなノイズがないため、本質的な論理や大局観を容易に掴むことができるというものです。

歴史のなかで物事が揺れ動くなかでも「変化しないもの」が本質です。だからこそ、近過去の歴史を振り返って検証してみるのです。

また楠木先生は、「過去の出来事は、『将来の予想』とは違い、『確定したファクト』である。変な予想に凝るよりも、なぜそれが起きたのかという論理も込みで過去を見ることで、引き出しが豊かになる」とも指摘されます。

楠木先生が一例として挙げるのが「人口問題」です。

かつて、受験戦争、交通戦争、住宅難、公害などが噴出していた日本では、「こんな狭い国に、こんなに人がいて、どうするのだ」と、人口が増えてしまうことが諸悪の根源のように考えられていました。しかし、今では人口減こそが諸悪の根源のように思われています。

これは「同時代性の罠だ」と、楠木先生はおっしゃいます。

社会全体が、「これこそが問題だ」と口を揃えるなかでは、それが問題の核心だと思ってしまう。しかし、みんなが「寒い、寒い」といっているときには、「いや、少なくとも暑くないじゃないか」と考えてみるべきなのではないか。それが楠木先生の視点です。

この発想法は、まことに興味深いものといえましょう。

さらに楠木先生は、「1人当たりのGDP」の例も出します。もちろん、1人当たりのGDPで世界の上位に行くのはなかなか大変なことですが、日本は1980年代末には、1人当たりGDPで世界第2位だったこともありました。

では、その頃の日本では、楽観論ばかりが満ちあふれていたのか?

そうではなかった、と楠木先生はおっしゃいます。その頃の経済雑誌の記事を読んでも、日本では「日本は危機だ」「日本はダメだ」という人たちばかりだったというのです。

なぜ、「1人当たりのGDP」が世界第2位でも、悲観論が噴出するのか?

その動機について、楠木先生は興味深い視点を提示されます。

「会社が悪い」とか「経営が悪い」というと、「お前が悪いんじゃないか」といわれて自責の問題になってしまう。しかし、「日本はダメだ」といっておけば、自分の責任にはならない。だからこそ「究極の他責」として、犯人を「日本」にしてしまい、自分の責任を棚に上げる……。

これは、まことに耳の痛いことであり、また、まことに恐ろしい話だといえるでしょう。

楠木先生は、「ハッピーエンドから説き起こしていったストーリーが、今の日本では強く求められている」ともおっしゃいます。

たしかに、現在とは比べものにならないほど条件が悪かった明治期や戦後期にあっても、当時の人々はハッピーエンドの夢を語っていました。そしてお互いに叱咤激励して、日本を高みへと導いていきました。

しかし現代の日本人は、「究極の他責」に逃げ込み、できない言い訳ばかりを重ねて、どんどん日本を弱くしてしまっているのかもしれません。

まさに深く考えるべき問題点でしょう。とかく、浮ついた議論や責任転嫁の議論に陥りがちな現代日本人にとって、必見の講義です。


(※アドレス再掲)

■今を知る講義まとめ:心の「柔軟性」を高めよう
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=182&referer=push_mm_feat


◆楠木建先生:「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3742&referer=push_mm_rcm6


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