編集長が語る!講義の見どころ
昭和の名将・樋口季一郎の「ユダヤ難民救出」の真実とは?/門田隆将先生×早坂隆先生【テンミニッツ・アカデミー】

2026/05/11

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

「昭和の名将」といっても、あまりピンとこない方が多いかもしれません。

いうまでもなく昭和前期には、満洲事変、シナ事変(日中戦争)、第二次世界大戦など困難な状況が続きました。そして多くの方々が悲劇に見舞われ、日本は「敗戦」という危地に陥ることとなりました。

しかしそのような時代のなかでも、毅然として「人間として正しい生き方」を貫いた軍人たちもいました。わが身に軋轢がふりかかることをも覚悟のうえで、「あるべき姿」を実践したのです。

まさにそのような人物たちこそ、「昭和の名将」と呼ぶべき人々でしょう。

現在も、一寸先は闇。いつ紛争へと転がり落ちるかわからない混迷の時代です。このようなときだからこそ、「昭和の名将」の生き方を学んでおくべきではないでしょうか。

本日紹介するのは、樋口季一郎です。

昭和史や軍事史に詳しい人以外には、あまり知名度が高い人物ではないかもしれません。とくに、早坂隆先生著『指揮官の決断――満州とアッツの将軍 樋口季一郎』(文春新書、2010年)が発刊されるまでは、まさに「知る人ぞ知る」存在だったともいえます。

どのような人物か。

端的にいえば、大きく3つの事績で有名な方です。

1つめは、日本がドイツと同盟関係を強めていくなかであるにもかかわらず、あえてシベリアから満洲に流入してきたユダヤ人難民を断固として救出したこと。

2つ目は、日本軍で最初の「玉砕」とされるアッツ島の戦い(1943年)の後、近隣のキスカ島の守備隊5,000名以上の全員救出という「奇跡の撤退作戦」を成し遂げせしめたこと。

そして3つ目は、終戦後であるにもかかわらず、千島列島の最北に位置する占守島に侵攻してきたソ連軍への「断固反撃」を命じたことです。

今回は樋口季一郎の人物像と、最初のユダヤ人救出について詳細にご解説いただいた門田隆将先生と早坂隆先生の対談講義を紹介いたします。

取材を重ねて事実を追求するノンフィクション作家でいらっしゃる両先生のお話だからこそ、樋口季一郎の姿が生き生きと眼前によみがえります。

◆門田隆将先生×早坂隆先生:昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(全5話)
(1)決断と信念のユダヤ人救出
毅然として人道を貫き、命を救う…樋口季一郎のユダヤ人救出
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6224&referer=push_mm_rcm1

第二次世界大戦当時の、日本人によるユダヤ人救出といえば、外交官・杉浦千畝がリトアニアに逃れてきたユダヤ人に大量の「命のビザ」を発行した事績(1940年)が有名です。

しかし、それと並ぶユダヤ人救出の物語が、1938年の満洲国で紡がれていたのです。オトポール事件です。

ヨーロッパからシベリアへ逃れてきたユダヤ人難民が、さらに満洲国経由で逃れようとしていました。しかし、日独防共協定を結ぶなど、日本とドイツとの関係が深くなっていた時期であったため、満洲国は受け入れを拒否します。そのため、満洲とソ連の国境の町・オトポールでユダヤ人が足止めされていました。

そのとき、ハルピンの特務機関長(陸軍少将)であった樋口季一郎が、満洲国の外交部に「ビザを出すように」と指導を行なったのです。

もちろん、それはたやすい決断ではありませんでした。ドイツとの関係を重んじる人々からは批判の声が高まります。

実は樋口はオトポール事件の直前にも、ハルピンで開かれた「極東ユダヤ人大会」に出席して、ユダヤ人の立場に理解を示す演説をしていました。その件でも批判されていたのです。

しかし、そのような批判に対して樋口はこう切り返したといいます。

「日本はドイツの同盟国であっても属国ではない」「ヒトラーのお先棒を担ぐのか」

そして、あくまで人道を重んじる判断を貫いたのです。

しかし、この樋口季一郎によるユダヤ人救出(オトポール事件)は、多くの謎にも満ちた事件でもありました。

救出されたユダヤ人の数について、「二万人」といわれたこともありました。しかし樋口季一郎自身が回想録の「原稿」に記した数は何人だったのか。

樋口季一郎による救出劇に感激したユダヤ人が、イスラエル建国の後、ゴールデンブックに樋口季一郎の名を刻んだともいわれますが、その真相とは?

戦後、ソ連が戦犯として樋口季一郎を訴追しようとしますが、その危機から救ったのがユダヤ人だったというのは本当か?

そのような「歴史の謎」も、両先生が明快に解き明かしていきます。

時代の流れや組織の雰囲気を乗り越えて、自らが「正しい」と思う道を断固として進めるかどうか――。後知恵であれこれと論評するのはたやすいことです。しかし、自分自身だったら実行できたか。そう考えてみると、いかに大変な難行であるかが身に沁みてきます。

では、なぜ樋口はそのような決断を貫くことができたのでしょうか。今こそ、「わが身のこと」として学んでおきたいものです。

なお、キスカ島の奇跡の撤退作戦や、戦後の占守島の戦いについては、後日、あらためて別講義シリーズで紹介いたします。ぜひ併せてご覧ください。


(※アドレス再掲)

◆門田隆将先生×早坂隆先生:昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6224&referer=push_mm_rcm2


----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------

お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6207&referer=push_mm_rank

歴史の中のユダヤ人大量虐殺…ポグロムとホロコーストの違い
鶴見太郎(東京大学大学院総合文化研究科 地域文化研究専攻 准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6201&referer=push_mm_rank

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4289&referer=push_mm_rank

イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所〈CSPC〉上級フェロー)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6204&referer=push_mm_rank

日本人の生きづらさの特徴は?~中井久夫著『分裂病と人類』
與那覇潤(評論家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6173&referer=push_mm_rank


公式X(@10mtv_opinion)では、独自コンテンツを配信中!
https://x.com/10mtv_opinion