編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》「地政学」で国際情勢を考える/小原雅博先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】

2026/06/03

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

これほど戦争がたやすく始まってしまう時代は、いつ以来なのか。最近は、そんなことも、ふと考えてしまいます。第一次世界大戦前のような国際情勢に似てきたという指摘も、よく聞くところです。

「地政学」という言葉を聞く機会が増えたのも、そのような状況を受けてのことでしょう。

地理的条件から外交戦略や軍事戦略を考えていく「地政学」。世界について考えるうえで基盤となるべき学問ですが、国際秩序が大きく動揺しているいま、ますます必須のものになっています。

少し以前であれば、国際政治において「相互依存論」や「国連中心主義」が説かれたりしました。しかしいずれも、過酷な現実の前に色あせています。むしろ、地政学的なリアルな分析が求められているのです。

では、地政学とはいかなるものか。今回の《今を知る》特集では、理論から実地まで学べる講義をピックアップしました。

その《今を知る》特集の紹介の前に……。


【いよいよ明日(6月4日・木)締切り】★受講者限定特別企画:6月10日(水)納富信留先生「良き対話とは」公開収録ウェビナー

https://10mtv.jp/seminar/202606/?referer=push_mm_new_function

6月10日(水) 14:30~(予定)の、納富信留先生の講義《「良き対話」とは?――哲学から考える》の公開収録ウェビナーの申し込み締切が、いよいよ明日(6月4日・木曜日)となりました。

今回はテンミニッツ・アカデミーの受講者の皆様は、無料にてお申し込みをいただけます。また、事前に受講者の皆さまから質問事項をお寄せいただき、講義の終盤では、その質問をピックアップして納富先生にお答えいただくことも実施したく考えております(ご質問のある方は、申し込みページからお送りいただけます)。

詳細は、申し込みページにてご確認ください。
※以下、サイトトップにもご案内のバナーが出ておりますので、そちらからでもお申し込みページに移動できます。

https://10mtv.jp/

ぜひ奮ってご参加いただきたく、何卒よろしくお願い申しあげます。


続いて、今週の《今を知る》特集紹介です。

■今を知る講義まとめ:地政学で国際情勢を考える

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=293&referer=push_mm_feat

◆小原雅博先生:地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5351&referer=push_mm_rcm1

◆小原雅博先生:ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5784&referer=push_mm_rcm2

◆東秀敏先生:ドンロー・ドクトリンとは?トランプ系論と西半球の重要性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6155&referer=push_mm_rcm3

◆島田晴雄先生:習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4789&referer=push_mm_rcm4


■ピックアップ講義:地政学入門~歴史と理論編(小原雅博先生)

さて、「地政学」とはどのような手法や意義を持った学問なのでしょうか。

本日は、テンミニッツTVで小原雅博先生(東京大学名誉教授)にお話しいただいた「地政学入門」講義を紹介いたします。地図をこよなく愛する小原先生だからこその、基礎からよくわかる名講義です。

◆小原雅博先生:地政学入門 歴史と理論編(全7話)
(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5351&referer=push_mm_rcm5

まず小原先生は、「地政学」は何かについて、講義の第1話で明快にこうおっしゃいます。

《地政学という漢字を見ていただいたらお分かりのように、「地」と「政」による学問です。地理というものを取り入れることによって、国家と国家の関係、国際政治というものを解明していこうという学問なのです。英語で“Geopolitics”といいますが、「ジオグラフィー」と「ポリティクス」を兼ね合わせた、比較的新しい分野です》

では、「地理」と「地政学」はどのように違うのでしょうか? 小原先生は、こうおっしゃいます。

《「地理」というと、地図、地図帳です。地図帳を開けると、ある国やある街がどこにあって、そこがどういう国であり、街であるか、例えば自然状況であるとか、人口であるとか、あるいはそれに関わるようないろいろなデータを客観的に映し出しています。

「地政学」は地図を読んでいく作業です。「地図を見る」ことによって、国家と国家の関係、あるいは大きなグローバルな政治のヒントを得て、探り当てていこう、読んでいこうということなのです》

小原先生は子供の頃、地図帳を眺めて1時間でも2時間でも、「どういう街だろう」「なぜここで戦いがあったのだろう」などといろいろな想像をするのが大好きだったとおっしゃいます。

たしかに、地図を眺めていると、さまざまな想像が浮かんできます。人間の暮らしも行動も、地理の影響を免れることはありません。そのような興味関心がまさに「地政学」に直結するのです。

続いて小原先生は、地政学の「3つの柱」として、

(1)大国の競争
(2)ユーラシア
(3)「ランドパワー」と「シーパワー」

を挙げます。

まず「大国の競争」について、小原先生は、地政学は「大国同士の関係に『地理』という文脈がどういった作用をしてきたのか」が中心になると指摘します。「国際政治は『リアリズム(現実主義)』と『リベラリズム(理想主義)』の2つの大きな学派があるが、地政学はリアリズムの系譜が根本にある」ともおっしゃいます。

つまり地政学においては、パワーポリティクスが、地理的条件のなかでどう行使されるのかがポイントとなるのです。

続いて挙げられる「ユーラシア」とは、まさに長い歴史を通じて、大国の競争が集中的に行なわれている場となっているのがユーラシアだということです。

さらに、「ランドパワーとシーパワー」という言葉も、最近よく聞きます。海上覇権を握る国がシーパワー。一方、大陸にあって多くの国と国境を接しつつ強大な陸軍力で覇を唱えるのがランドパワーです。

ランドパワーの国が、野望を持って海軍を増強した例もある。第1次世界大戦の前には、ランドパワーであった陸軍大国のドイツが、イギリスに対抗して海洋強国になることをめざしますが、それが第一次世界大戦の原因の1つでもあったといわれるのです。

小原先生は、政治学者・知性学者であるニコラス・スパイクマンのこんな言葉をご紹介くださいます。

《地理とは外交政策において最も基本的なファクターである。何故ならば地理は不変であるからである》

これも、まさしくそのとおりでしょう。よくいわれるように、日本は中国の隣から引っ越せるわけではありません。日本の歴史も、その影響の下で紡がれてきています。

もちろん、国際政治において、政治指導者がどう考え、どう行動するかは重要なファクターです。しかし、必ずしもすべて合理的に行動するわけではありません。そのため、先が読めない部分もあります。

しかし、地理はある種の客観性があり、不変性があります。だから、そこをしっかり読み解いていけば、先を読む1つのヒントになるのです。

ただ、地図を見る場合には、地図の図法によって印象が変わってしまうので、地球儀なり複数の地図を見る必要があると小原先生はおっしゃいます。

たしかに日本が中心にある地図を見るか、アメリカやヨーロッパが中心にある地図を見るかで、印象は随分変わってきます。相手の国の立場に立って地図を見たときにどう見えるかも、案外重要なファクターなのです。

小原先生はこの見地から、アメリカ、ロシア、中国をご分析くださいます(講義第3話)。

さらにいえば、古代ギリシアでアテナイとスパルタが戦ったペロポネソス戦争(紀元前431年~紀元前404年)も、典型的なシーパワーとランドパワーの衝突でした。

その戦争の原因になったのは、ペルシアの侵攻に対して、ギリシア諸都市の連合軍が勝利したペルシア戦争(紀元前492年~紀元前449年)でした。ギリシア側の最大の勝因は、アテナイの海軍力でしたが、そのパワーの増大をスパルタが恐れたのです。

当初、スパルタがアテナイ側に攻め込んでも、アテナイの指導者ペリクレスは「陸で侵略されても、われわれには海がある。海があるかぎりわれわれは繁栄するし、われわれは将来に向けて富を培っていけるのだ。あまり陸に固執するな」と語ったといいます。

しかし、ペリクレスが病に倒れた後、アテナイはシチリアに侵攻します。この遠征で失敗して多くの軍勢を失ったことが、アテナイの最終的な敗北の大きなきっかけになるのです。

シーパワーを支える海軍力で問われるのは、港のネットワークや兵站などロジスティクスです。それがしっかりしてればこそ、富をもたらす海上交易を確保できる。しかしアテナイは、余計な領土獲得に乗り出して失敗してしまったのです。

このように事例を列挙した後、小原先生は地政学の理論の先駆的な提唱者として、アルフレッド・マハン、フリードリッヒ・ラッツェル、ハルフォード・マッキンダー、ニコラス・スパイクマンの4人を取り上げます。

アメリカの地政学者・マハンは、「海を制する者が世界を制する」と、シーパワーの重要性を説きました。

ドイツ人で「地政学の父」とも呼ばれるラッツェルは、ダーウィニズム(進化論)の影響を受けて、国家を有機体・生命体のように捉え、人口を伸ばし力を伸ばしていく強国には、それに応じた領土が必要だという「生存圏」理論を唱えます。この「生存圏」理論が、ヒトラーや戦前の日本にも大きな影響を与えました。

イギリスの地政学者であるマッキンダーは「ハートランド理論」を唱えます。ハートランドとは、ユーラシア大陸の中軸となる地域です。マッキンダーは「東欧を制する者はハートランドを制し、ハートランドを制する者は世界を制する」と主張しました。それゆえ、シーパワーは連携してランドパワーに対抗しなければいけないと説いたのです。

そのハートランド理論を発展させて、アメリカ人の地政学者のスパイクマンが「リムランド」理論を唱えます。リムランドとは、大陸の「縁(=リム)」にあたる地域です。この地域は、河口部の平野であることも多くて農耕にも適しており、しかも海もある。このリムランドの主導権を握ることが重要だと考えるのです。

アメリカの戦略は、「リムランドの勢力バランスにおいて、どこかの国が支配的な地位を占めることのないようにすること」だといいます。第二次世界大戦でもドイツと日本が、ユーラシア大陸のリムランドを席捲する可能性があった。だからアメリカはそれを阻止するために参戦したのだと。

19世紀からのイギリスとロシアの「グレイト・ゲーム(ユーラシア各地をめぐる争い)」も、また20世紀の米ソの「グレイト・ゲーム」も、まさにハートランドやリムランドをめぐる、ランドパワーとシーパワーの争いだったわけです。

さらに小原先生は、ジョージ・ケナンの「封じ込め戦略」や、グレアム・アリソンの「トゥキディデスの罠」についてもご解説くださいますが、これについては、ぜひ講義の第7話をご参照ください。

「地政学」の概念が、基礎からとてもよくわかる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)

★受講者限定特別企画:6月10日(水)納富信留先生「良き対話とは」公開収録ウェビナー
https://10mtv.jp/seminar/202606/?referer=push_mm_new_function

■今を知る講義まとめ:地政学で国際情勢を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=293&referer=push_mm_feat

◆小原雅博先生:地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5351&referer=push_mm_rcm6


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