編集長が語る!講義の見どころ
「2回目の危機」が経済を決定的に変化させる/伊藤元重先生(テンミニッツTVメルマガ)

2021/01/29

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
いうまでもなく、今般のコロナ禍は「危機」です。しかし、危機だからこそ、これまで手をつけられなかった部分にメスを入れ、体質を強化する。危機を奇貨として、いま求められている進歩改善に全力を傾注する。その気概が必要です。少なくとも、危機対応ばかりに追われ、危機が終わったときに他の人々より周回遅れになることほど、愚かしいことはありません。

本日は、伊藤元重先生(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)に、まさにそのような観点でお話しいただいた講義を紹介いたします。

◆伊藤元重:危機は経済を大きく変える(全2話)
(1)アベノミクスと日本の変化
日本経済に決定的な変化をもたらした2回の危機とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3765&referer=push_mm_rcm1

この講義で、まず伊藤先生がおっしゃるのが、「危機は経済を変える」ということ。とりわけ、「1回の危機は経済を変えるけれども、2回の危機はもっと変える」ということです。

伊藤先生は、以下2つの事柄を例として挙げられます。1973年の第1次石油ショックは日本の産業構造を変える大きなきっかけとなったが、トドメをさしたのは1979年の第2次石油ショックだった。もう1つ、1990年のバブル崩壊で日本は大変化に直面することになったが、そこでトドメをさしたのは1997年の後半に山一証券が倒産し、1998年に金融危機が起こったことだった。たしかに、ご指摘のとおりです。

では、今回はどう位置づけられるのか。

ここで重要なのが、伊藤先生が今回のコロナ危機を、2008年のリーマンショックの「2回目」と位置づけておられることです。リーマンショック以降に出てきたことが、今後さらに広がるというのです。

どのようなことが起こるのでしょうか。伊藤先生が指摘するのは、デジタル革命と米中貿易摩擦です。この動きがどうなるか……それについては、ぜひ講義本編をご覧ください。

1点、特記すべきは、アベノミクスに対する伊藤先生の評価でしょう。伊藤先生は次のようにおっしゃいます。

アベノミクスで非常に大胆な金融緩和をし、財政政策も積極的に打ち出した。少なくとも数字で見るかぎり成果はかなり上がって、株価は安倍内閣のあいだに2.5倍くらいになった。安倍内閣が発足する前後で5パーセントに近かった失業率も大幅に下がった。企業の業績も非常に好調でGDPも2012年の末に480兆~490兆円だったものが550兆円くらいまで上がった。それによって、政府の税収も大幅に膨れ上がった。安倍内閣が出てくる前年にGDP比で7パーセント近い財政赤字があったものが、2019年には財政赤字もGDP比で3パーセントを切るか切らないかというところまで下がった。

しかし、数字だけ見るとかなり成果が出ているものの、国民のあいだには経済が元気になったという実感が非常に乏しい。日本経済が非常に有望であるという展望もない。その1つの象徴が、日本の経済成長率が非常に低いということである……。

はたして、どこに壁があるのでしょうか。伊藤先生が指摘されるのは、デフレで需要が落ち込み、さらに金融危機以降、企業が投資に臆病になっていて、デフレスパイラルの中で需要が落ち込んでいる姿です。

実はアベノミクスは、デフレ下において需要を喚起するカンフル剤であり、その面で大きな意味と効果があった。しかし、供給サイドが弱いままである。つまり、企業は投資をせず、イノベーションは起きず、国民そのものから積極的にチャレンジする動きも出てこなかった。

伊藤先生は、安倍内閣がそのことを理解したうえで、さまざまな施策を打ち出したことを、率直に評価されます。しかし、「効果的な政策をしたにもかかわらず、やはり肝心要の日本の企業は動いてこなかった。だから生産性も低かった」。そう伊藤先生はおっしゃるのです。

なぜ、政策が効かなかったのか。そして、今般のコロナ危機をどう活かしていくべきなのか。伊藤先生がどのように分析されているかについても、ぜひ講義本編をご覧いただければ幸いです。日本が現在直面している状況を、的確に整理できる講義です。

(※アドレス再掲)
◆伊藤元重:危機は経済を大きく変える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3765&referer=push_mm_rcm2


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今週の「エピソードで読む○○」Vol.22
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今回の○○は、ドイツの宗教改革者「マルティン・ルター」です。

この人は、後に宗教革命家として世の中を大変に変えるわけですが、彼が思ったのは、「多くの人々にキリスト教の聖書そのもの、原典を読んでいただかなくてはならない」ということでした。
カソリックのキリスト教会の中には、あまりにお金が入ってくるので、少し堕落した方々もたくさんいたようです。しかし、聖書をしっかり読めば、そのようなことにはならないはずで、一般の信者がキリスト教の経典を読んでいれば、お坊さんも正しいことを言わなければいけないし、緊張して仕事をしなければならず、堕落は出来ない。だから、変えようということだったのです。

マスメディアとニューメディアの違い
島田晴雄(東京都公立大学法人理事長/テンミニッツTV副座長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=33&referer=push_mm_episode


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レッツトライ! 10秒クイズ
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「国際(アメリカ)」ジャンルのクイズです。

「マルコムX」の本当の名前は「X」ではなく、「〇〇〇〇〇〇」と言いました。
さて「〇〇〇〇〇〇」にはどんな英語が入るでしょうか?

答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1374&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて、冒頭で編集長が紹介した伊藤先生の講義は、今月(1月)の特集<「日本経済」危機克服の方法と目指すべき未来」>の講義でもあります。

1月特集<「日本経済」危機克服の方法と目指すべき未来」>
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=105&referer=push_mm_edt

特集には伊藤先生の講義の他にも、柳川範之先生(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)、西山圭太先生(東京大学未来ビジョン研究センター客員教授)、橋爪大三郎先生(社会学者)の講義も入っておりますので、ぜひご視聴頂ければと思います。

ここでは、個人的に興味深いと感じている西山先生のシリーズ講義「日本企業の弱点と人材不足の克服へ」について少しお伝えいたします。
第3話で西山先生はこんなことをおっしゃっています。

「知識量の問題なら、みんなサボっていたわけではないから、(なぜ日本の産業やビジネスが負け続けているのかの)説明がつきません。勉強し、知識を導入し、技術も極めたけれど、“それをどう使うか”という基本的な発想、気づきが欠けている。それがないから、知識も技術も生きない。そういうことが起きているのです」

この課題は決して日本企業だけの話ではないと感じています。私もテンミニッツTVのスタッフとして日々学ばせていただきながら進めていますが、この講義を聴いて、改めて「気づき」の大事さ、“どう使うか”という発想の重要性を感じた次第です。
こちらの講義もぜひご視聴ください。

日本企業の弱点と人材不足の克服へ(3)「デジタル人材」に対する誤解
「デジタル人材の不足」は知識ではなく「気づき」の問題
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3827&referer=push_mm_edt