編集長が語る!講義の見どころ
「問題の本質を見極める」国際地域研究へのいざない(テンミニッツTVメルマガ)
2021/02/02
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
本日はテンミニッツTV副座長である島田晴雄先生(東京都公立大学法人理事長、慶應義塾大学名誉教授)の講義をご紹介いたします。
島田先生はこれまで数多く講義を行ってくださっていますが、そのジャンルは、中国、インド、ハンガリー、ブラジル、ドイツ、ロシア、キューバ、イスラエル、アゼルバイジャン、ラオスなどの「地域研究講義」から、戦後復興論や明治維新論など「歴史に学ぶ講義」、さらに米中ハイテク覇権戦争から新型コロナ、折々の政治経済問題まで「時事の本質を深掘りする講義」まで、きわめて多岐にわたります。
島田先生の講義の最大の特徴は、各々のテーマについて「全体観」をわかりやすく総覧してくださること。加えて、独自の視点で、「問題の本質」をズバリと解き明かしてくださることです。一度、島田先生の講義を受講されれば、その「全体観」と「本質探求」の明解さに圧倒されること請け合いです。
はたして島田先生は、どのような視点で問題を深掘りされているのでしょうか。本日ご紹介するのは、島田先生ご自身にその勘所を語っていただいた講義です。
◆島田晴雄:国際地域研究へのいざない(全8話)
(1)地域研究の意味とイスラエル研究
なぜ経済学で軽視されてきた「地域研究」が最高の学問なのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3749&referer=push_mm_rcm1
島田先生がまず強調されるのは、元外交官で評論家としても活躍された岡崎久彦先生の「地域研究は最高の学問だ」という言葉です。経済学者である島田先生は、この岡崎先生の言葉に驚きを覚えたそうです。なぜなら経済学の序列では、抽象理論、ミクロ経済学、マクロ経済学などが高く、計量経済学、財政学、金融論、国際経済学、開発経済、労働経済などと続いて、地域研究は最低とされていたからでした。
岡崎先生は、「ある国、ある時代に着眼し、あるがままの姿を観察して、事実を丹念にさまざまな角度から研究する」のだとおっしゃいました。ここから島田先生は、大きな気づきを得ます。それは、「地域研究では、非常に多様な要因を同時に考える必要がある」ということでした。地形、社会構造、歴史的背景、地政学、国際関係、技術進歩、思想・宗教、関連人物、教育……それらをすべて踏まえなければいけない。まさに、地域研究は「総合理解の学問」なのです。
しかし、イデオロギーや理念型に引きずられないで、「あるがままの姿」を捉えるのは、実はそうとうに難しいことではないでしょうか?
島田先生は、国ごと、テーマごとに「なぜ、そうなのか」というキー・クエスチョンを設定して、迫っていくといいます。
たとえば、イスラエルを研究する場合であれば、「スタートアップ・ネーション」という言葉がカギになります。イスラエルは、「新しくベンチャー企業を起こし、イノベーションを進める」ことにかけては世界でも最も進んでいる国ですが、島田先生は「イスラエルにできることなら、日本でも同じようにしてみたい」とおっしゃいます。では、「なぜ、イスラエルはスタートアップ・ネーションになれたのか?」。それが、キー・クエスチョンになるのです。
本講義では、加えて「インドは、世界のリーダー国となるか」「なぜ、世界史の軌跡ともいうべき明治維新が成功したのか」という観点についてもお話しくださいます。それぞれをどのように分析されているかは、ぜひ講義をご覧ください。
しかし、上記の各々の問題意識を見ればわかるとおり、まさに「キー・クエスチョン」が肝心です。それをどこに設定するかで、分析はまったく変わっていくはずです。では、島田先生は、どのようにして「キー・クエスチョン」を設定しているのでしょうか。
それについては、最終の第8話で種明かしをしてくださいます。詳細は、ぜひ講義本編をご覧いただくとして、ぜひご紹介したいのが、次の島田先生のご発言です。
「私は愛国者なので、この国の将来を良くしたいという思いは強く持っています。この世の中の競争はすべて総力戦です。水が高い場所から低い場所に流れ、価格が安ければ需要は大きくなるが供給は少なくなるなどの、10ページ程度読めば理解できるシンプルな経済学からは、ほとんど何も出てきません」
コロナ問題を考えてみても、医学や政治学、経済学、社会学、心理学など既存の学問分野だけで解決策を与えるのは難しい。他国や他時代を観察しながら、総合研究の叡智を出していかなければいけない。そう島田先生は強調されます。まさに噛みしめるべき言葉ではないでしょうか。
テンミニッツTVは、ぜひそのような総合研究の一助となるよう、今後も努めてまいりたく考えています。多くの先生方の講義を総合すれば、何らかの総合知を導き出すこともできるはずです。ぜひ今後とも、テンミニッツTVをご活用いただければ幸甚です。
◆島田晴雄:国際地域研究へのいざない(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3749&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「好況よし、不況もっとよし」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=761&referer=push_mm_hitokoto
「陰陽論」は仕事の役に立つ!
田口佳史(東洋思想研究者)
陰陽論で、もう一つだけ申し上げておかなければいけないことは、よく私にもご質問がある「好況と不況には、どのように対処すればいいのか」ということです。
これには、松下幸之助さんが非常にいいことを言っておられます。「好況よし、不況もっとよし」という言葉です。
なぜ「不況もっとよし」なのかというと、好況で何もかも非常にうまくいっているときに「革新しよう、充実させよう」と皆に言っても、「こんな時に何を言っているのですか」と取り上げられない。しかし、経営者から言えば、もう一段充実させて革新をしなければ、次の段階ではもうもたないと思い、ぜひやりたいわけです。
しかし、「陽」のときは発展・拡大の一途をたどっています。こんな時に「ちょっと留まって、充実・革新させよう」と言っても無理です。したがって不況がありますと、陰陽思想では不況とは解釈せず、「陰の時が来た」と解釈します。「陰」の時が来たので、思い切って充実・革新をする。そうすると、今度はまた次の山として「陽」の時が一気に来て、寿命がますます伸びていく。商品や企業の寿命がどんどん伸びるという状況になっているわけです。
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今週の人気講義
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なぜ「やる気のある社員」が日本では6%しかいないのか?
田村潤(元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3861&referer=push_mm_rank
日本経済に決定的な変化をもたらした2回の危機とは
伊藤元重(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3765&referer=push_mm_rank
織田信長を支えた母衣衆に見る戦国のダンディズム
中村彰彦(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3211&referer=push_mm_rank
渋沢栄一が近代日本に与えた二つの大きな影響
童門冬二(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3868&referer=push_mm_rank
アメリカ建国以来初、2つの停滞期が重なる危機の2020年代
東秀敏(米国安全保障企画研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3855&referer=push_mm_rank
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、昨日(2/1)より2月特集<日本資本主義の父・渋沢栄一の正義と危機感>が始まりました。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=107&referer=push_mm_edt
渋沢栄一は今月(2月)14日から放送開始となるNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、今度(2024年から)の新一万円札の顔としても注目されている人物。とはいえ、実際にどんな人物だったのか、意外と知られていないのではないでしょうか。
今回の特集では、没後90年を迎える彼の生涯にスポットを当てたシリーズ講義「曾孫が語る渋沢栄一の真実」も配信開始となりました。また、今週の人気講義で取り上げた童門先生の講義も入っています。
現代の私たちにとって、彼について学ぶ意義はどこにあるのか。その大事な示唆を与えてくれる講義ばかりです。ぜひご視聴ください。
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