編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》「自由喪失」の危機に学びたい自由主義/特集&柿埜真吾先生【テンミニッツ・アカデミー】

2026/08/19

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

価値観の二極化、先鋭化・陰謀論化する言論、ポピュリズム、テクノ・リバタリアン、トランプ現象……。このような世界的状況に、「えもいわれぬ不安」を覚えている方も多いのではないでしょうか。

自由は失ってはじめて、その貴重さに気づくものです。私たちはもしかすると、あとから振り返って「あのとき!」と思うような局面の入り口に立っているのかもしれません。

壊れやすい自由を守るために大切なこととは何か?

この8月上旬に、テンミニッツ・アカデミー講義録書籍として、柿埜真吾先生の『“自由喪失”の危機 に読みたい 自由主義の近現代史』(発行:イマジニア、発売:ビジネス社)が発刊されました。まさに上記のような問題意識を受けてのことです。

本書は、柿埜先生の《日本人が知らない自由主義の歴史~前編&後編》講義をまとめた一冊です。ぜひ書店店頭でご覧ください!

この発刊も記念して、テンミニッツ・アカデミーの《今を知る》特集でも、あらためて「自由のあり方」「自由主義」について学ぶ講義をピックアップしました。


■今を知る講義まとめ:自由喪失の危機に学びたい自由主義

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=303&referer=push_mm_feat

◆柿埜真吾先生:消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm1

◆柿埜真吾先生:ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm2

◆頼住光子先生:弱者を抑圧する自由より、叡智によって制約される自由を!
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6186&referer=push_mm_rcm3

◆橋爪大三郎先生:法の支配があるから自由がある…信仰の自由と政治の基本
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4766&referer=push_mm_rcm4

◆川出良枝先生:モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3620&referer=push_mm_rcm5

◆本村凌二先生:未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3725&referer=push_mm_rcm6


■ピックアップ講義:日本人が知らない自由主義の歴史(柿埜真吾先生)

本日は特集より、柿埜真吾先生(経済学者/思想史家)の《日本人が知らない自由主義の歴史~前編&後編》講義を紹介いたします。

案外、「自由とは何か」といわれると、明確なイメージが頭に浮かばないかもしれません。「リベラル」というと、どちらかといえば「左派」的な印象が強くなりますが、「新自由主義」などといわれると、まったく異なったイメージとなります。

この柿埜真吾先生の講義は、前編と後編を合わせて全20話の浩瀚なシリーズですが、内容はとてもわかりやすく、「自由の基本から核心まで」を存分に学ぶことができます。

◆柿埜真吾先生:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(全7話)
(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm7

◆柿埜真吾先生:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(全13話)
(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm8

柿埜真吾先生の《日本人が知らない自由主義の歴史》講義の前編では、ホッブズ、ロック、アダム・スミスからミル、さらにニューリベラリズムの潮流までを描きます。

最初は危険思想と思われてさえいた「自由主義」が、いかに理論として確立していき、社会の発展と繁栄を導き出したか。しかし、それがだんだんと本来のあり方から介入主義的な「大きな政府」へと変容していったか。その歴史が、手に取るようにわかります。

そして後編では、その後の「自由主義」、つまり自由主義の「現代的な課題」に深く迫り、現代の自由主義の必読文献についてもわかりやすく解説していきます。

まずは前編。第1話では「古代人の自由と近代人の自由」「積極的自由と消極的自由」など、自由の様々な側面を整理していきます。

第2話は、ホッブズ、ロックです。まさに自由主義の先駆けとなる思想家たちですが、両者の思想はずいぶん異なります。とてもわかりやすく整理くださっているので、まずは基礎を押さえるために必見です。

第3話は、アダム・スミスを中心に、自由主義と自由主義経済の関連を見ていきます。

アダム・スミスは、一般に抱かれがちなイメージとは異なって、市場万能主義者ではありませんでした。あくまで、政府の恣意的な介入はかえって有害な結果を招くという主張でした。そして、社会はゼロ・サムゲームではなく、自由貿易によって全体が豊かで便利になっていくことを示したのです。

第4話は、ベンサムとJ・S・ミルです。彼らは「最大多数の最大幸福」というスローガンで有名な「功利主義」的な発想から自由主義を位置づけていきました。

この発想からすると、必ずしも「全部、自由放任がいい」ということではなくなっていきます。環境汚染の規制や貧困層の救済などは、むしろ進めたほうが「最大多数の最大幸福は大きくなる」ということにもなるからです。

また、ミルは「他人を侵害しないかぎり自由だ」という「他者危害原則」も説きました。この考え方からすれば、たとえば現代日本の「芸能人の不倫バッシング」のようなものはどう考えられるのか……。そのような問題提起も含め、大いに考えさせられる解説が続きます。

第5話では、「政府関与が必要な場合もある」という発想が、「ニューリベラリズム」を生み出していく過程が描かれます。

そもそも自由主義は、当初は「専制的な政府」に反抗して「権力は腐敗する」と訴える色彩が強いものでした。しかし、専制的な政府が覆されて議会政治が行なわれる世になると、風向きが変わっていきます。

「国民に選ばれている代表が政治をするようになったのだから、政府に権限を与えてもよいのではないか」「国民が望ましい人生を送れるように、政府が再分配などいろいろな介入をしたほうがいいのではないか」……。そのような発想が強くなっていくのです。

これによって、自由主義はまったく正反対の色彩を帯びるようになっていきます。

第6話では、そのような「自由主義」を日本やアメリカではどのように受容したのか。第7話では、そのような自由主義が現代において、どのような行き詰まりを迎えたかが語られます。

ここまでが前編です。

実は日本では、自由主義についての一般的な解説の多くは、ここまでで終わっています。しかしここまででは、現代的な課題を理解することができません。

前編を踏まえたうえで後編を学ぶことが、まことに重要なゆえんです。

後編の第1話は、「前編」の後半に現われた「ニューリベラリズム」を鋭く批判した19世紀後半のハーバート・スペンサーとダイシーに光を当てます。

ニューリベラリズムの登場で、「国民に選ばれた政府が、福祉実現のためにどんどん介入すればいい」という風潮が強まるなか、彼らはあくまで「権力の制限」を重視し、政府による介入に警鐘を鳴らしました。

実は彼らは、「絶対主義的な独裁国家が現れる」という悲観的な未来も予見していました。彼らの主張は、19世紀後半の当時は「反動的な思想」だと思われていましたが、不幸にも20世紀に予見が実現してしまうことになるのです。

続いて見ていくのは、ミーゼス、ハイエクなどオーストリア学派の思想です。彼らは、社会主義計画経済が必ずうまくいかず、ひどい独裁国家を生むことを論じました。それがいかなる論拠かは、ぜひ講義本編でご覧ください。彼らの主張の正しさは、歴史の流れのなかで証明されることになります。

さらに、「ネオリベラリズム」が現われます。大きな政府による介入主義的な「ニューリベラリズム」に対して、「自由放任でも国家主義でもないバランスのとれた場所があるはずだ」とする考え方です。

そのような「ネオリベラリズム」の主張に基づき、あくまで市場経済を基調としつつ、独占禁止法の強化などの市場適切化のための政府介入や、一定の所得再分配を進めていったのが、第二次世界大戦後の西ドイツやイタリアでした。この政策により、戦後復興が果たされたのでした。

いま「ネオリベラリズム(新自由主義)」というと、市場経済万能主義・競争至上主義のようなイメージでとらえられがちですが、本来はまったく違う「中庸の思想」だったのです。

さて、最近では「リバタリアニズム」という言葉を聞くこともあります。多くの日本人には、あまりピンとこない言葉かもしれません。

リバタリアニズムというのは、アメリカで生まれた言葉です。

アメリカでは「リベラル」というと、すっかり左派色の強い言葉になってしまいました。このような「リベラル」に対して、本来の古典的な自由主義を主張したい人たちが「リバタリアニズム」という言葉を用いるようになったのです。古典的自由主義を継承し、個人の自由を何よりも大事にする思想です。

柿埜先生は、このリバタリアニズムについて、ノーラン・チャートという図を用いてご解説くださいます。考え方がとても整理されますので、ぜひ後編第5話でご覧ください。

この講義シリーズの後半は「文献編」です。

●ニューリベラリズムの古典ともいうべきロールズの『正義論』。

●社会主義や全体主義の危険性を説いたハイエクの『隷従への道』。

●経済的自由の優位性と採るべき政策を論じたフリードマンの『資本主義と自由』。

●ロールズを批判したノージックの『アナーキー、国家、ユートピア』。

いずれも必読の名著ですが、それぞれの内容をわかりやすく解説いただきます。現代の課題について、それぞれの思想家がどのように論じ、そしてどのように批判したのかが、とても明解に伝わってきます。

さらに、最後の講義では、あらためて「新自由主義」「新保守主義」などの概念の混迷について論究されます。実は欧米でもこれらの用語の用法が大いに混乱しており、日本での用法はさらに無茶苦茶だというのですが……。

いままで、頭の中でぼんやりしていたものが、明確な像を結んでいくのは、まことに痛快なことです。その痛快さを存分に味わえる講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)

■今を知る講義まとめ:自由喪失の危機に学びたい自由主義
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=303&referer=push_mm_feat

◆柿埜真吾先生:日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4894&referer=push_mm_rcm9

◆柿埜真吾先生:日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4996&referer=push_mm_rcm10

※柿埜真吾先生『“自由喪失”の危機 に読みたい 自由主義の近現代史』
https://www.business-sha.co.jp/books/category01/item_a001454


※頼住光子先生の「頼」は、実際は旧字体


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