編集長が語る!講義の見どころ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く/松村一男先生×沖田瑞穂先生【テンミニッツ・アカデミー】
2026/09/07
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
クリストファー・ノーラン監督作品の映画『オデュッセイア』が、日本でも9月11日(金)から公開されます。
この映画、2026年7月からアメリカをはじめ世界各国で公開が進んでおり、すでに9月初旬時点で世界興行収入が14億5000万ドル(約2,300億円)を超える大ヒット作品となっています。
ギリシア連合軍がトロイと戦った「トロイ戦争」を描いた叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』は、まさに古典中の古典ともいうべき作品。とりわけ欧米人にとって必須の古典教養として長く愛されてきました。
今回、テンミニッツ・アカデミーはこの『オデュッセイア』の面白さの秘密を、神話学の松村一男先生と沖田瑞穂先生に「神話の構造」という観点から迫っていただきました。
解き明かされる秘密は、驚くものばかり。なるほど、これほどの波乱万丈の物語が、これほど見事な構造で語られれば、この神話がその後もずっと「人間の創作活動」の源泉となったことが、よく理解できます。
しかも『オデュッセイア』は、世界共通の不朽の古典として、いわば「読まずに死ねるか」といっても過言ではない一冊です。ぜひ、この機会にその「秘密」に迫ってみてはいかがでしょうか?
◆松村一男先生×沖田瑞穂先生:『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(全9話)
(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6339&referer=push_mm_rcm1
さて、『オデュッセイア』とはいかなる物語なのか?
そのあらすじは、ぜひ講義の第1話や第3話をご参照いただければ幸いです。松村先生がまさに情景が目に浮かぶような語り口で教えてくださいます。
ここでざっくりと紹介してしまえば、
《10年に及んだトロイ戦争で、木馬の計略を成功させ、故郷イタケへの帰路についた知恵の英雄・オデュッセウス。しかし、途中で立ち寄った島で、一つ目の巨人・ポリュペモスの目を潰して逃げ出したことから、ポリュペモスの父・海神ポセイドンの怒りをかい、その後、10年に及ぶ波乱に富んだ放浪と冒険を余儀なくされる。次々に襲い掛かる怪物や試練。そして次々に倒れていく部下たち。そして苦難の末、20年ぶりに辿り着いた故郷イタケで、さらなる試練が……》
ということになりましょう。
つまり、「知恵の英雄」であるオデュッセウスは、トロイ戦争に出陣してから帰郷するまでに、戦争と帰路の冒険を加えて20年もの苦難と波乱の日々を費やしたのです。
しかも苦難の末に家に戻って、そこでハッピーエンドとなるのではありません。
実は、20年も不在であったために、故郷のイタケには、オデュッセウスの妻に言い寄る求婚者がたくさん集まっていたのです。下手をすると、オデュッセウスは殺されかねません。この危機をどう乗り切るのか。
まさに『オデュッセイア』は波乱万丈の冒険譚であると同時に、家族の物語でもあるのです。
さて、この物語が魅力的で面白さに富んでいる秘密は「神話の構造」にあると述べました。たとえば「折り返し構造」です。
これは、図を見るととてもよくわかるので、ぜひ第4話をご覧いただきたいところですが、ここでざっと紹介すると、実は10年の冒険が15の話で構成されていて、それぞれ「1話と15話」「2話と14話」「3話と13話」……というように物語が対称構造になっているのです。
それがどのような効果をもたらすのかは、まさにこの講義の重要ポイントといえましょう。
さらに1つの物語が3つのエピソードで構成されているリズム感。複数の空間と時間が同時に進行していく「多元進行」。次々に難題が課され、それを乗り越えていくカタルシス……。
なるほど、このような巧みな「構造」がわかると、こうした「神話」が現代に至るまで、なぜ多くの創作の「源泉」となったのかがよくわかるのです。
加えて、この講義で興味深いのが「世界各国の神話」との比較です。
実は、『オデュッセイア』が、インドの神話叙事詩『マハーバーラタ』のなかの「ナラ王物語」とそっくりなのです。それは、なぜなのか。さらに世界の英雄神話の比較、英雄とその武器の関係性……などなど、興味深い話が次々と語られます。
そして講義の終盤では、『オデュッセイア』などの神話が、後世の様々な名作物語から、さらに現代のゲームやライトノベル(若者を対象とした娯楽小説)にまで、いかに深く影響しているかが具体的に紹介されます。まことに驚くべき影響範囲です。
神話は、かけがえのない人類の知的財産であることが、クリアに見えてきます。人類が紡いできた、そしてこれからも紡いでいくであろう様々な創作にとって、神話こそがその源流に輝く大切な宝物なのです。
『オデュッセイア』をテーマとしつつ、神話を知ることの意義と面白味がたっぷりと詰まった講義です。映画も公開される今、ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆松村一男先生×沖田瑞穂先生:『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6339&referer=push_mm_rcm2
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テンミニッツ・アカデミー編集部