編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》オデュッセイアとギリシア神話/納富信留先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】

2026/09/09

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

9月7日の記事でも紹介しましたが、クリストファー・ノーラン監督作品の映画『オデュッセイア』が、日本でも9月11日(金)から公開されます。すでに世界で大ヒットになっているこの映画、大ヒットの理由は、『オデュッセイア』が西洋文明のみならず人類にとってのかけがえのない「不朽の古典」であることにもあるのでしょう。

ギリシア神話のなかでも、屈指の圧倒的な冒険譚であり人間劇である『オデュッセイア』。実はこの古い物語は、その後に人類が生み出した様々な創作にも、陰に陽に、深い影響を与え続けたものでもあります。そしてギリシア神話の物語を読み解いていくことで、人間の生き方の底流に流れるものにも光を当てていくことができます。

今回の特集では、この『オデュッセイア』を軸にしつつ、ギリシア神話の不思議で深い「物語」に迫っていきます。

その特集の紹介の前に……。

【お報せ】
9月24日(木)19時より、鶴見太郎先生による《ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは》講義で、ウェビナー形式の「公開収録」を行ないます。

ユダヤ人と世界史の関わりを知ることで、大きな歴史の流れの中で翻弄される個々人がいかに生き抜いていくかについて深い教訓を得ることができます。今回も、事前に皆さまからの質問をお寄せいただき、その質問にもお答えいただくかたちで講義を進めてまいります。ぜひ奮ってご参加ください。

【日時】
2026年9月24日(木) 19:00~21:00前後(18:45より開場予定)

※公開収録ですので、時間は伸び縮みする可能性があります。
※Zoomウェビナーでオンラインで開催いたします。

【申込ページ】
https://10mtv.jp/seminar/202608/?referer=push_mm_new_function


さて、今回の《今を知る》特集テーマは、《オデュッセイアとギリシア神話》です。

■今を知る講義まとめ:オデュッセイアとギリシア神話

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=306&referer=push_mm_feat


◆松村一男先生×沖田瑞穂先生:『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6339&referer=push_mm_rcm1

◆納富信留先生:ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3570&referer=push_mm_rcm2

◆鎌田東二先生:ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4579&referer=push_mm_rcm3

◆納富信留先生:二千年の時を超えて読めるギリシア「三大悲劇詩人」の作品
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4343&referer=push_mm_rcm4

◆納富信留先生:エルの物語…臨死体験から考える「どういう人生を選ぶか」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4716&referer=push_mm_rcm5


■ピックアップ講義:必読の古典「ホメロス叙事詩」を知る(納富信留先生)

9月7日の記事では、松村一男先生と沖田瑞穂先生が「神話の構造」や「神話比較」から『オデュッセイア』の魅力と甚大な影響力を縦横無尽にお話しくださった講義を紹介いたしました。

今回は特集から、ホメロスの叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』について、納富信留先生に解説くださった講義を紹介いたします。

古典を知ることは、「文明の本質」を知るうえで、とても重要なことでしょう。では、西洋文明を知るうえで欠かすことのできない古典は何か――その重要な作品がホメロスの叙事詩であることは、誰もが認めるところでしょう。

今回紹介する納富先生の講義も、ホメロス作品の精神性、芸術性までみごとにご紹介くださった絶品です。

特集に挙げたのは、この講義シリーズの第7話。『オデュッセイア』についてご解説いただいた部分です。納富先生はこうおっしゃいます。

《何よりも物語としてのエンターテインメント性が際立ちます。非常にさまざまな仕掛けと印象的な場面を連ねていて、どの場面をとっても非常に面白いと思います》

さて、ではどのような叙事詩なのでしょうか。

◆納富信留先生:「ホメロス叙事詩」を読むために(全9話)
(7)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3570&referer=push_mm_rcm6

納富先生は、この講義シリーズの第7話から第9話の3話をかけて、『オデュッセイア』についてご紹介くださいます。

納富先生は、『オデュッセイア』の主人公のオデュッセウスは、こんなキャラクターの人物だといいます。

《どう考えても彼は40~50代の中年です。故郷には奥さんもテレマコスという息子もいます。どういう人間かというと、典型的な英雄とはいえない。頭はいいのだけれども、ずる賢いところもあって、人を騙したりもする。アキレウスのように猪突猛進型の強い英雄ではなくて、何か裏へ回る、口もうまい。一筋縄ではいかないけれど、なんとなく信頼できる、という複雑なキャラクターです》

そのようなオデュッセウスは、実はもともとトロイア戦争には行きたくなかった。しかし、うまく策略にはまって行かざるをえなくなってしまった。そして戦争で10年、その後の苦難の冒険で10年の計20年を費やすこととなってしまったのです。

苦難の冒険ではあるのですが、しかしオデュッセイアは行く先々でモテる人物でもある。苦難の誘惑の日々が描かれていくのです。

納富先生は『オデュッセイア』の物語について、次のように端的に要約されます。

《『オデュッセイア』は、トロイア戦争後、トロイアの木馬の計略を考え出した英雄オデュッセウスが、戦後10年にわたって経験せねばならなかった冒険物語。前半は未知の国を経めぐって、怪物や魔女などと渡り合うというおとぎ話のようなお話。後半は自分を裏切った連中を一挙に殺してしまうという復讐劇で、どちらかというとサスペンスもののような感じです》

では、この物語の流れや妙味はどのようなものなのか。それはぜひ、講義本編でご覧ください。納富先生がとてもわかりやすく、またとても魅力的に『オデュッセイア』の物語をご解説くださいます。

さらに納富先生は、いくつかの重要シーンについて、松平千秋訳『オデュッセイア』(岩波文庫)の原文を朗読くださいます。実際にどのような言葉が連ねられているのかを、耳と目で味わえることはやはり素晴らしいことです。

波乱万丈の物語の最後は、苦労に苦労を重ねてきたオデュッセウスとその妻ペネロペイアが遂に抱き合うシーンとなります。この部分について、納富先生はこうおっしゃいます。

《苦労した二人が、今のような駆け引きもふくめて、最後は抱き合う。そういう場面によって、人間が生きるとはどういうことなのか、あるいは人を信頼するとか、苦労するとはどういうことなのか、そうしたなかでいったいわれわれは何を求めて生きているのか。そうしたことはもやもやっとしたまま、でも、この二人の再会に喜ぶというのが、『オデュッセイア』の最後のところになります》

この「もやもやっとしたまま」という部分が、傑作の傑作たるゆえんでしょう。まさに、一筋縄ではいかない人生や世界の深淵を学べる不朽の叙事詩なのです。

さて、お時間が許すなら、この講義シリーズ、ぜひ「第1話」からご覧いただけると、『オデュッセイア』と並ぶ『イリアス』も含めたホメロス叙事詩の深淵をより楽しむことができます。

◆納富信留先生:「ホメロス叙事詩」を読むために(全9話)
(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3564&referer=push_mm_rcm7

納富先生はまず講義の冒頭で、大河ドラマのように最初の出だしから最後までが1つの大きな物語をなしているので、ぜひ通読すべきこと。また、ホメロスの詩自体が音読されたものであるので、ぜひ自分一人でも友達と一緒にでも音読すべきであることを強調されます。

特筆すべきは、ここで納富先生が「古代ギリシア語」でホメロス『イリアス』の冒頭の7行を朗読してくださっていることです。このホメロスの叙事詩は、1行ずつが6脚からなっている「六脚韻(hexametros)」になっていますが、そのリズムや抑揚を直に体験できる、まさに動画ならではの珠玉の時間です。

さらに納富先生は、同じ部分について、土井晩翠、呉茂一、松平千秋の訳をそれぞれ紹介してくださいます。ホメロスの「詩」としての魅力を、いかに日本語に訳出するのか。その翻訳者の苦労と工夫を比較してご紹介いただけるのも、受講者として、まことにありがたいことです。

さて、『イリアス』は時系列的には『オデュッセイア』の前に位置する作品です。『イリアス』についての納富先生の要約を紹介しましょう。

《『イリアス』は、一言でいうと「戦争叙事詩」で、トロイア戦争の攻防を非常にドラマチックに描く、大河ドラマのような作品です。単に戦争というものを描くだけでなく、エンターテインメントの要素もあり、学びの要素もあり、人類の知恵が凝縮されたような作品です》

『イリアス』はトロイア戦争についての物語。そして『オデュッセイア』はトロイア戦争で木馬の計略を成功させて勝利に貢献したオデュッセウスが、その後、さらに苦難の冒険を重ねる物語なのです。

納富先生は、それぞれの作品について、名場面を紹介しつつ、物語の構造や背景、読みどころを次々と教えてくださいます。たとえば、物語の背景として理解しておくべき「ギリシア神話」について、このように指摘されます。

《重要な点は、ギリシア神話というと、つい「物語」であるとわれわれは捉えがちですが、古代のギリシア人にとっては当然生きた信仰の対象だったところです。彼らは常に神殿に行って、お供えをして祈り、何か悪いことがおこると神々による罰ではないかとリアルにおびえていたのです。ですから、決して文学のなかの物語だとは思われないようにしていただければ、と思います》

《神は誕生すると、それ以降は決して死ぬことがない。それに比べて人間は、生まれ落ちて以来、病気やけがが絶えることなく、やがて死んでいく。そういう、はかない人間と永遠の神という大きな対比があります。(中略)戦場で向き合って戦うお互いのものたちというのは、はかない存在である。こういう世界観に貫かれたところで展開されているのが、二つの叙事詩ということになります》

神々の思惑に翻弄されつつ活躍し、苦闘し、死んでゆく英雄たち。一方で、人々の悲劇的な様子を見ながら、ときには哄笑さえする神々。永遠の神々と、はかなき英雄たちが織りなす運命の物語が、あふれる情感をもって克明に描かれていくのです。

それぞれのホメロスの叙事詩の読みどころとは。そして、そこに込められているものとは。

その真髄に触れるためにも、ぜひ講義本編をご覧ください。講義そのものも、まさに古典を読む楽しさと智恵とヒントに満ちた「みごとな作品」になっています。


(※アドレス再掲)

◆納富信留先生:「ホメロス叙事詩」を読むために(7)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3570&referer=push_mm_rcm8

◆納富信留先生:「ホメロス叙事詩」を読むために(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3564&referer=push_mm_rcm9


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