編集長が語る!講義の見どころ
タブー視される「満洲史」を直視して見えてくる教訓とは?/宮脇淳子先生【テンミニッツ・アカデミー】

2026/09/14

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

「満洲事変」が勃発したのは昭和6年(1931年)9月18日のことですから、令和8年(2026年)から振り返れば「95年前」の話となります。

そして「満洲国」が建国されたのが翌昭和7年(1932年)3月のこと。満洲は清朝を建てた満洲人(女真族)の故地であり、清朝最後の皇帝だった愛新覚羅溥儀が、満洲国建国時の「執政」に就任します。

溥儀はその後、昭和9年(1934年)3月に満洲国皇帝に即位しますが、昭和20年(1945年)の日本の敗戦で満洲国は崩壊することになります。

この「満洲国」は、今の日本では、どこか「タブー」的に語られることが多いのではないでしょうか。

片方では「王道楽土」や「五族協和」などの美しい言葉が語られ、もう片方ではアヘンが資金源だったのではないかという問題や、傀儡国家との指摘、さらに敗戦直前のソ連軍侵攻や引き揚げ・シベリア抑留の悲劇が語られます。

しかし歴史の真実はどこにあるのか。なぜ日本は満洲国建国へと進むことになったのか。そもそも満洲とはいかなる地で、古代からいかなる歴史的変遷をたどってきたのか。

実のところ、現代日本人があまりに知らないことが多すぎます。

今回は、宮脇淳子先生が「満洲の通史」を熱く語ってくださった講義を紹介いたします。

宮脇先生のこれまでの講義(《モンゴル帝国の世界史 (全7話)》、《中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む (全4話)》)もテンミニッツ・アカデミーの大人気講義になっていますが、今回の満洲講義もそれに続く傑作講義です。

宮脇先生は、当時のあまりに複雑で魑魅魍魎(ちみもうりょう)的な状況を明快に解きほぐしつつ、こうおっしゃいます。

《どうすれば良かったかといったら、それはみんなに気の毒なので。これを今言うのは易しい。当時はそういうわけにはいかない》

《満洲国は確かにあった。しかし、日本の歴史の中で、振り返られないまま、ちゃんと言えない、向き合わない。でも、自分たちの歴史に向き合わないところは、日本の弱みのままで来ているということで、大変問題だと思います》

この講義で見えてくるのは、大きな歴史の流れです。そして、その奔流のなかで選択をしていかなければならなかった近代日本の「決断の軌跡」です。

その決断がもたらした美しい面も失敗の面も、どちらもあります。しかし、その両面にしっかり向き合わなければ、歴史はわれわれに「歴史の奔流を生き抜いていく教訓」を語ってはくれません。

戦後日本は、歴史の大きな奔流のなかで主体的に決断をしていくことから離れていたかもしれません。しかしいまや、そのような決断なしにはどうにもならぬところに立ち至りつつあるようにも思われます。

そのような局面でどうすべきなのか。満洲の歴史は多くのことを教えてくれるのです。

◆宮脇淳子先生:「満洲」から考える日本とアジア(全10話)
(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6351&referer=push_mm_rcm1

宮脇先生はモンゴル史がご専門ですが、モンゴル史を探究していくなかで必然的に満洲の研究も手掛けることになったのだとおっしゃいます。

モンゴル人の歴史をずっと追いかけていくと、最後の最後、満洲との関係が非常に大きくなる。しかし、日本で刊行された満洲関係の本をたくさん読んだのに、どうも歯切れが悪い。本当のことをいっていなさそうに見える。そこで、「こんなになんだか分からないんだったら自分で勉強して自分でやってみよう」と思ったのが始まりだといいます。

では、本当のこととは何か。講義の全体像については、まず全10話のキャッチタイトルをご覧いただければ幸甚です(※文言は変更の可能性もあります)


第1話:「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓

第2話:日本人が知らない満洲・朝鮮・モンゴルの違い…朝鮮のルーツは実は満洲で、モンゴルと満洲を分けるのは降水量

第3話:謎の「渤海」…7世紀末から10世紀まで満洲で栄えた渤海と奈良時代以降の日本との交流の背景は安全保障

第4話:実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで

第5話:「満洲利権」はなぜ日本の手に渡ったか?…ロシアの極東征服、そして朝鮮の混乱が日本を日清・日露戦争へ

第6話:日本が中国に出した「21カ条の要求」の罠と必然…不安定な満洲利権を手にした日本が直面した難題とは?

第7話:軍閥割拠の中国は魑魅魍魎の世界…列強やコミンテルンの思惑も絡む中で翻弄される日本と張作霖爆殺事件の謎

第8話:なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗

第9話:満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない

第10話:「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ


総覧いただければお分かりいただけるとおり、まさに壮大な満洲通史となっています。この流れがわかって、はじめて「満洲国」の背景も理解できるのです。

第2話では、満洲と朝鮮とモンゴルの違いが語られます。

たとえば古代朝鮮の国家として知られる高句麗は、そのルーツが満洲なのです。高句麗は満洲にも領土を広げていましたし、滅亡後は、高句麗の遺民が靺鞨(まっかつ。後の女真)とともに、謎の国家ともいわれる「渤海」を建国してもいます。

実は、7世紀末から10世紀まで満洲で栄えた「渤海」と奈良時代以降の日本とは、盛んに交流していました。はたしてその実像と目的とは?

さらに、女真族(満洲族)が建国した金、そしてモンゴル帝国(中国では元王朝)の歴史を経て、満洲族が清帝国を建国し、中国全土を支配下に置きます。

この清の時代に、ロシアがシベリア征服を進めて極東へ至り、清とぶつかることになります。また、朝鮮国内の混乱から日本と清との対立も発生し、日本は日清戦争、日露戦争に突入していくのです。

そして日露戦争で辛くも勝利を収めた日本に対して、ロシアは満洲利権を渡すことで講和条約を結びます(1905年)。しかしその「満洲利権」(1898年の露清条約でロシアが清国から獲得していた利権)は、かなり不安定なものでした。

旅順・大連の租借権の期限は条約から25年後の「1923年」でした。日露戦争からだと、たった18年後です。また、南満洲鉄道は36年後の「1934年」に清国が有償で買い戻すことができ、80年後の「1978年」には無償で清国に返還される規定になっていたのです。

イギリスが得ていた香港などの租借権が「99年」であり、ほぼ無期限の租借を暗黙の前提にしていたことと比べると、かなり短期間のものだったことがわかります。

10万人の将兵の命と20億円という国費をかけて日露戦争に勝利した日本は、真面目に大金を投じて満洲に投資・開発していきます。

しかし、すぐに租借期限は間近に迫ります。しかも辛亥革命が起きて1912年に中華民国が建国され、中国のナショナリズムが高揚していく。そこに西洋列強や、新たに建国されたソ連、そしてコミンテルン(共産主義インターナショナル)の思惑が入り乱れていく……。

このような状況のなかで日本は「満洲国」を建国していくのですが、その詳細な過程や蹉跌は講義本編をご参照ください。

さらに前述のように、満洲国は財源に「アヘン」があったこともよく指摘されますが、その実態はいかなるものだったのか。また、日本が第二次世界大戦で敗北し、満洲国が崩壊した後、日本人が引き揚げざるをえなかったばかりでなく、その地で「五族協和」といわれた朝鮮人、漢人、モンゴル人、満洲人さらにロシア人が、戦後、いかなる悲劇に巻き込まれたか……。

今回の講義では、それらについても深く考えていくことができます。

「満洲」の歴史は、現代の日本を取り巻く深刻な情勢にいかに対処するかにも、大きなヒントを与えてくれます。日本人としての成功パターン、失敗パターンとは何かも見えてきます。

驚くほど学び多き講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)

◆宮脇淳子先生:「満洲」から考える日本とアジア(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6351&referer=push_mm_rcm2


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