編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える/橋爪大三郎先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】
2026/10/28
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
2026年11月3日、アメリカで「中間選挙」が行なわれます。あらためていうまでもなく、米国大統領の任期4年の中間で行なわれるアメリカ上下両院の選挙で、上院では100議席中の35議席が、下院では全435議席が改選されます。
現時点では、大統領職と上院・下院の多数派を共和党が占めており(トリプルレッド)、トランプ政権にとって望ましいかたちになっていますが、さてアメリカの有権者はどのような判断を下すのでしょうか?
この機会にあらためて、第二次トランプ政権が行なってきたことを振り返りつつ、トランプ政権の本質、さらに民主主義のあり方を探ってみましょう。
■特集:第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=248&referer=push_mm_feat
◆納富信留先生:僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4714&referer=push_mm_rcm1
◆橋爪大三郎先生:なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5289&referer=push_mm_rcm2
◆東秀敏先生:イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6204&referer=push_mm_rcm3
◆柿埜真吾先生:トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5797&referer=push_mm_rcm4
◆島田晴雄先生:トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6010&referer=push_mm_rcm5
■講座のみどころ:なぜ民主主義が「最善」か(橋爪大三郎先生)
今回は、橋爪大三郎先生(社会学者/東京工業大学名誉教授)に、「民主主義の本質」についてお話しいただいた講義を紹介します。
アメリカ、ヨーロッパでの政治の混迷を受けて、「民主主義はダメになりつつあるのではないか」「ポピュリズムの跋扈(ばっこ)を許すだけではないか」「政治が良くなる気がしない」などの声が盛んに上がるようになっています。
このようなときだからこそ、あらためて「民主主義の原理」とはいかなるものなのかを、しっかりと見据えるべきではないでしょうか。
橋爪先生は、「民主主義は、これまでに考えられた制度のうち、最善のものである」という問題提起をされます。
このような言葉を聞いたことがある方は多いと思います。では、なぜ最善なのでしょうか。そして、そもそも「民主主義の本質」とはどのようなものなのでしょうか。
民主主義についてのイメージが一新し、目が開かれる講義です。
◆橋爪大三郎先生:民主主義の本質(全5話)
(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5289&referer=push_mm_rcm6
なぜ、民主主義が「これまでに考えられた制度のうち、最善のもの」なのか。それについて橋爪先生は、「民主主義は仕組みであり、ひと言でいえば『法の支配』である」と喝破したうえで、下記のように明快に指摘されます。
《法が上で、その下に人がいる。法が上で、その下に権力がある。人間が権力を持つと、間違える場合がある。間違えた場合に、これを正す方法があるのか。法があれば、法に従って、その誤りを正すことができる。その仕組みを持っているのが民主主義で、民主主義以外のものはそういう仕組みがない。ゆえに、いちばん優れているといえると思います》
一般には、「みんなで物事を相談して決めるのが民主主義」などと考えられがちでもありますが、「人間の間違いを正す方法」という部分に着目すると色々なことが見えてきます。
一方、ソ連共産党も、ヒトラーが率いるナチスドイツも、それぞれ法律に基づいて独裁権力を打ち立てました。それらはなぜ上記のような意味での「法の支配」とはいえないのか。そこについても、橋爪先生は明確にお答えくださいます。
次に橋爪先生が指摘されるのは、近代民主制の基礎となったキリスト教(とりわけプロテスタント)の教会社会のあり方です。
キリスト教の原則からすると、神(God)が人間を支配するのが無条件で正しく、人が人を支配するのは「条件付き」で正しい。どのような条件かというと、その支配が神に認めらえた場合です。
カトリックでは、神を地上で代理するのはカトリック教会だとされました。しかし、それに異議を唱えたのがプロテスタントです。しかも、プロテスタントは諸派に分かれていきます。
すると、どうなったか。
それぞれが「神ならば、こう考える」と信念を持っています。良心や信仰ということでいえば、バラバラであることが正しいのです。だから少数派になっても、その信念をもって活動をしつづける。
しかし実生活では決めなければならないことがあります。だから、議論をして、最終的には多数決で決めることになります。
多数決で集団の意志は決める。地上には地上の権威が必要なので、皆で議論をし、皆が納得できる法律をつくって、その権威に従う。けれども、少数者は少数者として尊重される。
しかも、「人権」は神が与えたものなので、「法律」より上だとされます。「人権が先にあり、それを守るために、契約(憲法)を結ぶ」という順番なのです。
このような考え方に立脚しつつ、まずはアメリカなどプロテスタント社会で近代的な民主主義が形づくられていきました。このことを理解しておくと、民主主義の本質がだんだんと見えてきます。
しかし、そのような論理は世界で共通しているわけではありません。橋爪先生は、カトリック社会や正教会、さらにヨーロッパ以外の諸地域ではどうなのかをお話しくださいます。イスラム教における民主主義の捉え方など興味深い論点も提出されますので、ぜひ講義第3話をご覧ください。
そのうえで考えるべきなのが、日本についてのことです。
日本にはもともと、専制的な権力者が嫌悪され、皆で決めることを重んじる「民主的な風土」がありました。これをどう考えるべきなのでしょうか。
橋爪先生は歴史を総覧しつつ、検討を進めていきます。たとえば、日本がきわめて速やかに近代化できた1つの理由は「尊王思想」であり、これは少しだけイスラム教のジハードに似ている……などの喝破は、まことに興味深いものです。
さらに明治時代の憲法と議会、さらに官僚の関係が、現代にまで続いているというご分析も重要なものでしょう。そのうえで橋爪先生は、こうおっしゃいます。
《法律はほとんど中央省庁がつくっている。こういう状態のものを、今、「民主主義」と呼んでいるわけです。ですから、日本人は民主主義をよく理解し、それを運用する能力が高いのかといえば、決してそうではありません。ただ、実際の労働の現場とか、村や町の共同体では中央省庁と関係なく、私たちが相談して、現場のことは全部決めるのがいちばん正しいという精神は生きている》
このような日本が民主主義を強化するために、どうすればいいのか。
もちろん、プロテスタントを真似するということではありません。橋爪先生は「議論の重要性」を強調されます。そして、選挙における「予備選挙」の導入などの手立てをご提案くださいます。
非常に印象深いのは、そのようなお話のなかで、橋爪先生が「議論というのは負ける覚悟をしないとできない」と指摘される部分です。言論を育てるためには、「負ける経験」が必要なのだと。
それぞれ具体的にどのようなことかは、ぜひ講義第4話と第5話をご覧ください。
そのうえで、20世紀前半の民主主義が全体主義に押しつぶされそうになった歴史を振り返りつつ、民主主義の発展には、自国の歴史と文化を理解することが不可欠だとおっしゃいます。そして、民主主義の共通の価値観を持った国々が連携して、権威主義的な国に人類が呑み込まれないようにしなければいけないと強調するのです。
下記の橋爪先生の「まとめの言葉」は、本講義を学んでくると、ますます深く心に響いてきます。
《民主主義は、自分のためのものであり、みんなのためのものです。そして、これまで考えられた、いろいろな制度の中で、最善のものであると私は思います。皆さんもそう思うならば、この民主主義を守り育てるために、何ができるかということを考えていただければと思います》
原理原則から、具体的なあり方を説き起こしていく。その議論の流れのなかで、自分自身の「民主主義観」をしっかりと検討していくことができる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
■特集:第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=248&referer=push_mm_feat
◆橋爪大三郎先生:民主主義の本質(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5289&referer=push_mm_rcm7
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