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『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴
万葉時代最大の役所があった新田山とは?『万葉集』東歌で詠まれたその姿と発掘調査の成果
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(4)郡家の発掘と新田山を詠んだ東歌
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
「郡衙」と呼ばれる古代の役所はどれくらいの規模だったのだろうか。『万葉集』にはそれをうかがい知ることのできる歌も残っている。現在の群馬県では「金山」と呼ばれる新田山を詠んだ東歌がその一つだが、その周辺の発掘では大規模な建物や正倉が確認され、古代の地方社会が高度に発達していたことが分かる。東歌や防人の歌には貧しく素朴な印象が抱かれがちだが、実際には豊かな地域のパワーが存在し、中央政権もそれを取り込んでいた。『万葉集』の理解には「郡家」という古代の役所施設周辺の発掘や歴史学の成果を総合的に取り入れることが不可欠である。(全4話中第4話)
時間:9分16秒
収録日:2026年9月16日
追加日:2026年10月27日
収録日:2026年9月16日
追加日:2026年10月27日
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≪全文≫
●新田山を詠んだ東歌と発掘調査で明らかになった郡家の規模
日本の古代の学問も日進月歩なのです。考古学が発展して、さまざまな発掘が行われると、建物の規模というものが分かってくるのです。だいたいこれくらいの規模だろうと。そうすると、比較ができるのです。「ここの郡役所はこれくらいの大きさだな」「だいたい郡の役所というのはこういうもんだな」ということです。
例えば、こんなことを考えたらいかがでしょうか。各県の県庁というものがある。全ての県庁の図面というものを手に入れる。それは、大きい県、人口が多いところは大きいに決まっています。とはいえ、だいたい自治体の規模に応じて県庁の大きさは決まってくるので、例えば、(それでも)大阪と東京と鳥取で役所の建物の面積が100倍違うとかいうことはないわけで、そういうようなことの研究が行われているのです。
それで、そういうところの歌は結構『万葉集』に残っているのです。これはなぜかといいますと、その場所が有名で、役所があればみんなが行くというようなことで、こういう歌があります。
訳文から少し読んでみましょう。これは東歌でちょっと難しいのです。
「新田山には、ほかの峰に続いてゆかない…… その独立峰の新田山のように俺には寄りつかず あいまいな様子を見せるあの児のことが やけにやけにかわゆく思われる 今日このごろ……」
独立峰だから嶺続きじゃない。だから、あの子は俺に寄り添ってくれないわけです。しかも、寄りついてくれなくて、こちらが「好き」と言っても、その返事がない。脈があるのかなと思うけれど、そういう姿がやけにやけにかわいく思われてどうしようもないという歌です。
「新田山 嶺には付かなな 我に寄そり はしなる児らし あやにかなしも」(新田山は嶺に寄り付かない 我に寄そり はしなる児らし あやにかなしも)
新田山みたいに独立峰で連峰になっていないと(ありますが、新田山は)そんな大きな山じゃないですよ、丘ぐらいです。丘ぐらいなのだけれど、ポコンと平地の中にあると。新田山は現在の群馬県太田市北部の金山町にある金山です。
上野国の新田郡の郡家は、太田市のいくつかの町にまたがって立地していたことが確認されて、2007年の発掘調査によって古代の大規模建物が発掘されたわけです。そして、2015年の...
●新田山を詠んだ東歌と発掘調査で明らかになった郡家の規模
日本の古代の学問も日進月歩なのです。考古学が発展して、さまざまな発掘が行われると、建物の規模というものが分かってくるのです。だいたいこれくらいの規模だろうと。そうすると、比較ができるのです。「ここの郡役所はこれくらいの大きさだな」「だいたい郡の役所というのはこういうもんだな」ということです。
例えば、こんなことを考えたらいかがでしょうか。各県の県庁というものがある。全ての県庁の図面というものを手に入れる。それは、大きい県、人口が多いところは大きいに決まっています。とはいえ、だいたい自治体の規模に応じて県庁の大きさは決まってくるので、例えば、(それでも)大阪と東京と鳥取で役所の建物の面積が100倍違うとかいうことはないわけで、そういうようなことの研究が行われているのです。
それで、そういうところの歌は結構『万葉集』に残っているのです。これはなぜかといいますと、その場所が有名で、役所があればみんなが行くというようなことで、こういう歌があります。
訳文から少し読んでみましょう。これは東歌でちょっと難しいのです。
「新田山には、ほかの峰に続いてゆかない…… その独立峰の新田山のように俺には寄りつかず あいまいな様子を見せるあの児のことが やけにやけにかわゆく思われる 今日このごろ……」
独立峰だから嶺続きじゃない。だから、あの子は俺に寄り添ってくれないわけです。しかも、寄りついてくれなくて、こちらが「好き」と言っても、その返事がない。脈があるのかなと思うけれど、そういう姿がやけにやけにかわいく思われてどうしようもないという歌です。
「新田山 嶺には付かなな 我に寄そり はしなる児らし あやにかなしも」(新田山は嶺に寄り付かない 我に寄そり はしなる児らし あやにかなしも)
新田山みたいに独立峰で連峰になっていないと(ありますが、新田山は)そんな大きな山じゃないですよ、丘ぐらいです。丘ぐらいなのだけれど、ポコンと平地の中にあると。新田山は現在の群馬県太田市北部の金山町にある金山です。
上野国の新田郡の郡家は、太田市のいくつかの町にまたがって立地していたことが確認されて、2007年の発掘調査によって古代の大規模建物が発掘されたわけです。そして、2015年の...