この講義シリーズの第1話は
登録不要で無料視聴できます!
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に示す媚態表現の真相
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
4.万葉時代最大の役所があった新田山とは?『万葉集』東歌で詠まれたその姿と発掘調査の成果
2026年10月27日配信予定
古代の任地では、中央から派遣された国司はその土地の郡司の妻たちとも送別の宴を催し、一見艶っぽい冗談交じりの歌を詠み交わして良好な関係を築いていた。大伴家持とも親しかった大原真人今城を平城京へ送り出す歌から、その様子をうかがい知ることができる。これは現代の政治家が部下の家族に気配りをして人心を掴んだ逸話にも通じ、立場が上の者ならではの苦労や知恵を示している。『万葉集』の歌を杓子定規に解釈せず、当時の官僚の心得や宴席での遊戯性という視点から読み解くことで、人間味あふれる古代社会のリアルな実像が見えてくる。(全4話中第3話)
時間:10分54秒
収録日:2026年9月16日
追加日:2026年10月26日
収録日:2026年9月16日
追加日:2026年10月26日
カテゴリー:
≪全文≫
●郡司の妻たちと国司が宴会!?……国司と郡司のつきあいは当たり前
帰するところ、知事もサラリーマンもコミュニケーション能力が大切だということなのですが、この人たちと、つまり派遣された国司と土地の郡司さんたちはお付き合いをしているわけですが、そこを円滑にやろうと思ったら、郡司の家族や奥さんとも円滑にやらないといけないわけです。
郡司の妻たちとも宴会をしている例があるのですが、大原(真人)今城という人がいるのです。万葉集の歌人であり、大伴家持とも親しかった人なのですけれど、この人が任地である上総国――(現在の)千葉県の一部なのですけれど――から一時的に平城京に帰京することになるわけです。県知事や中央から派遣された国司も、例えば「朝集使」とか「税帳使」とかいって、書類を本人が届けるために一時的に平城京に帰ることが許されたわけです。それ以外のときに勝手に赴任地を離れることは、違反行為として罰せられます。
そうすると、「私はこういう仕事で(帰京します)」というと、これは公務になりますので、当然宴会が行われるわけです。その宴会も、これも面白いのですが、いろんな部署でやらなきゃいけないわけです。国司という中央から派遣された(他の)人たちがいるところ、郡司さんとも一時的にお別れになるから(郡司さんたちのいるところ)、さらには自分の家の周り(のお世話など)をやってくれている人とか、いろんな人と何回も何回も宴会するそうです。
ちなみにコロナ前だと、中央の省庁の係長さんが副知事などに赴任をするときには、だいたい5回ぐらいは宴会をやったそうです。同期会でやろうとか、部でやろうとか、課でやろうとかになりますので、そういうような宴会があるのですが、そのときにその郡司の奥さんたちと宴会をやっているわけです。
これがおそらくですけれど、各地域の郡司の奥さんたちは、結構婚姻関係で親戚関係だったりするというのは1つです。
もう1つは、現在でもその選手の家族の会のような、例えば、プロ野球なんとか球団ファミリー会といったら、そこには奥さんとか子どもが出てきて、何かをやるというようなことも当然あるわけです。昔は「婦人会」とか「奥様会」などということをいいましたが、聞いたところによると、アメリカの野球のメジャーリーグでも、これは大切な会だといわれていますから、この人たちと仲良くしなけれ...
●郡司の妻たちと国司が宴会!?……国司と郡司のつきあいは当たり前
帰するところ、知事もサラリーマンもコミュニケーション能力が大切だということなのですが、この人たちと、つまり派遣された国司と土地の郡司さんたちはお付き合いをしているわけですが、そこを円滑にやろうと思ったら、郡司の家族や奥さんとも円滑にやらないといけないわけです。
郡司の妻たちとも宴会をしている例があるのですが、大原(真人)今城という人がいるのです。万葉集の歌人であり、大伴家持とも親しかった人なのですけれど、この人が任地である上総国――(現在の)千葉県の一部なのですけれど――から一時的に平城京に帰京することになるわけです。県知事や中央から派遣された国司も、例えば「朝集使」とか「税帳使」とかいって、書類を本人が届けるために一時的に平城京に帰ることが許されたわけです。それ以外のときに勝手に赴任地を離れることは、違反行為として罰せられます。
そうすると、「私はこういう仕事で(帰京します)」というと、これは公務になりますので、当然宴会が行われるわけです。その宴会も、これも面白いのですが、いろんな部署でやらなきゃいけないわけです。国司という中央から派遣された(他の)人たちがいるところ、郡司さんとも一時的にお別れになるから(郡司さんたちのいるところ)、さらには自分の家の周り(のお世話など)をやってくれている人とか、いろんな人と何回も何回も宴会するそうです。
ちなみにコロナ前だと、中央の省庁の係長さんが副知事などに赴任をするときには、だいたい5回ぐらいは宴会をやったそうです。同期会でやろうとか、部でやろうとか、課でやろうとかになりますので、そういうような宴会があるのですが、そのときにその郡司の奥さんたちと宴会をやっているわけです。
これがおそらくですけれど、各地域の郡司の奥さんたちは、結構婚姻関係で親戚関係だったりするというのは1つです。
もう1つは、現在でもその選手の家族の会のような、例えば、プロ野球なんとか球団ファミリー会といったら、そこには奥さんとか子どもが出てきて、何かをやるというようなことも当然あるわけです。昔は「婦人会」とか「奥様会」などということをいいましたが、聞いたところによると、アメリカの野球のメジャーリーグでも、これは大切な会だといわれていますから、この人たちと仲良くしなけれ...