編集長が語る!講義の見どころ
「デジタル社会とは何か」がズバリとわかる/西山圭太先生(テンミニッツTVメルマガ)
2021/03/02
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
世の中には「見巧者」と呼ばれる人がいます。いわゆる、「ものの見方がうまい人」です。そのような人に「こう見ればいいのですよ」と座標軸のようなものをパッと教えてもらうと、これまでとはまったく違う景色が見えてくるものです。
たとえば絵画であれば、これまで気づかなかったモティーフや描写法が見えてくる。音楽であれば、これまで聴こえてこなかったテーマやメロディ、リズムが聴こえてくる……。そのような経験をされた方も多いのではないでしょうか。これは、組織の見方、ビジネスの見方、社会全体のあり方の見方などでも、まったく同様です。
本日は、そのような「見巧者」のお一人である。西山圭太先生(東京大学未来ビジョン研究センター客員教授)の講義をご紹介いたします。西山先生は、東大教授になられる前は経済産業省で商務情報政策局長をお務めで、「アーキテクチャ論」を軸に据えてデジタル推進を展開されるなど「異能の官僚」とも呼ばれた方でした。
そう聞くと、「この講義も難しいのでは」と構えてしまうかもしれませんが、テンミニッツTVの講義では、ご自身の経験から導き出された「デジタル社会における組織やビジネスの見方・考え方」を、驚くほどわかりやすく解説くださっています。
◆西山圭太先生:日本企業の弱点と人材不足の克服へ(全8話)
(1)膠着する日本経済の深層
日本経済が行き詰まりの状態を続けている二つの大きな理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3825&referer=push_mm_rcm1
西山先生は、「デジタルやソフトウェアの特徴は、難しいことや複雑なことを実現するだけでなく、それを楽に簡単に実装できること」と喝破されます。
たとえば、日本のからくり人形も複雑で難しいことをやりますが、これは「深く極めた技術」であって、楽に簡単にできるものではありません。しかしデジタル技術でやれば、それは簡単にできるようになります。なぜなら、デジタルの発想では、横につなげて、よりシンプルな方法の組み合わせで実現することを考えるから……。この西山先生のお話は、とてもわかりやすいものです。
日本企業の場合は、とかく個々を深掘りしたがる。しかしこれではデジタルの時代には対応できない。そう西山先生は指摘されます。必要になるのは、物事を抽象化、普遍化し、横展開していく力です。
このことを西山先生は、世界で初めて卓上計算機をつくった日本企業と、インテルの違いの実例を挙げつつ教えてくださいます。日本企業が考え出したものについて、インテルはアーキテクチャー(論理的構造)で考え、抽象化して、横展開するには何が最適化を考えた。縦に深く掘りたがる日本に対して、横展開をして儲けることを考える海外企業。この事例分析は、ストンと腹に落ちる、まさに必見のものです。
このほかにも、西山先生は次のような話を次々と展開されます。
◆ドイツ企業の場合、仮に1000人のお客さんの意見を聞いた場合に1000種類の商品をつくることはない。お客さんの声をアウフヘーベン(止揚)して、10個とか50個の商品をつくる。しかし日本はお客さんの声に応えて1000個つくりたがる。
◆プログラム言語を覚えることと、デジタル化の構造や原理を理解するのは、まったく別の話。
◆前任者や対前年を、数量や複雑を極めることで超えていこうとしたがる日本的な発想の間違い。
◆良い政策をつくるスタートラインは、その部署で誰も口にしない、議論する必要がないぐらい常識になっていることを疑うこと。
◆抽象化するには、個々の細かいファクトを1万個積み上げても何の理解にもならない。3とか5のセンテンスで言えばどうなるのかを考える。
それぞれについて、たとえば西山先生が東京電力ホールディングスの取締役を務めていたおりにつくった「変人の会」の話や、子どものころに、どうしてもできなかった鉄棒の「逆上がり」ができるようになったきっかけなど、様々な興味深いエピソードとともに教えてくださいます。
こうして抜粋してしまうと、ちょっとわかりづらく見えてしまいますが、いえいえどうして、見たら「なるほど」と膝を打つことうけあい。まさに、物事の見方をガラリと変えてくれる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆西山圭太先生:日本企業の弱点と人材不足の克服へ(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3825&referer=push_mm_rcm2
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テンミニッツTVからのお知らせ
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☆今週のひと言メッセージ
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「我慢できる人はやる気もあり、我慢ができず切れてしまう人はやる気もない」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1422&referer=push_mm_hitokoto
ゲームが有効!リーダーシップに影響するホルモン量UPへ
堀江重郎(順天堂大学医学部大学院医学研究科 教授)
最近分かってきたのは、ドーパミンというホルモンはやる気だけではなく、我慢もできるホルモンだということです。
(中略)
我慢できる人はやる気もあり、我慢ができず切れてしまう人はやる気もないということが分かってきています。
我慢できる心として、ドーパミンを高めることはテストステロンも高める、ということになるのです。
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今週の人気講義
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進化生物学から見る「母親の子殺し」
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1619&referer=push_mm_rank
高齢者は本当にキレやすいのか――「怒り」の実態に迫る
川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3902&referer=push_mm_rank
「論語と算盤」の新しい視点を提供した渋沢栄一
渋沢雅英(渋沢栄一曾孫)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3874&referer=push_mm_rank
二・二六事件で失敗した皇道派の“密教”と“顕教”とは
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3427&referer=push_mm_rank
どんどん知恵が出て、百戦百勝になるとっておきの方法
田村潤(元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3864&referer=push_mm_rank
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編集後記
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テンミニッツTV編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、3月1日より特集<「自分をコントロールする方法」を学ぶ>が始まりました。
特集<「自分をコントロールする方法」を学ぶ>
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=108&referer=push_mm_edt
特集のなかには今週のひと言メッセージでも取り上げました堀江先生の講義も入っておりますので、ぜひご視聴いただきたいのですが、今回ご紹介したいのは津崎良典先生(筑波大学人文社会系准教授)の講義です。
◆津崎良典:デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
デカルトが述べた、恐怖を取り除く方法
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2564&referer=push_mm_edt
具体的な「感情のコントロール」や「恐怖を取り除く方法」については講義をご視聴いただくとして、ここで取り上げるのは以下のお話です。
“恐怖はマイナスの感情だけれども、もっとひどい感情としては後悔や妬み、嫉みなどもそうですが、こうした感情は本当に自分を苦しめます。できることならばそういう感情は抱きたくないけれども、デカルトはストア派という古代の哲学者たちと違って、「感情を抱くな」とは言いません。
(中略)
デカルトは、彼らと違って感情はあって当然である、と言います。感情がない人生はつまらない。感情があるからこそカラフルな人生になるわけで、喜怒哀楽があったほうがよいではないか。ただ、喜怒哀楽という感情の犠牲になってはならない。”
いかがですか。「感情があるからこそカラフルな人生になる」という言葉がとてもいいなと感じています。「感情のコントロール」という点からすると、ある意味真逆の話のようですが、先生が言いたいのは、だからこそ感情を否定せず、感情とどう向き合うか、そこが大事だということです。
ということで今回の特集、ぜひご視聴ください。
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