編集長が語る!講義の見どころ
東日本大震災から10年。今一度、先人達の悔恨の教えを学ぼう(テンミニッツTV)
2021/03/09
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
2011年3月11日(金曜日)14時46分。あのとき、皆さまは何をされていたでしょうか。
東日本大震災から10年となりました。忘れてはならないことがあります。繰り返し、心に留めておかなければならないことがあります。人間、いざとなったら、訓練などで繰り返し反復していたことしかできないものです。
本日は、「釜石の子どもたちにみる防災教育」についての片田敏孝先生(東京大学大学院情報学環特任教授)の講義をご紹介します。片田先生は、実際に、大震災の8年前から釜石市で防災教育に携わっていらっしゃった先生です。
この講義は、このメルマガで昨年も紹介させていただきました。釜石の事例は有名ですので、お聞きになったことがある方も多いと思います。しかし、やはり繰り返し学びたいものです。この講義で片田先生も強調されていますが、やはり大切なのは、記憶を残し、しっかりと伝承していくことだからです。
お時間がない方も、ぜひ最終第3話だけでもご覧いただければ幸いです。
◆片田敏孝:釜石の子どもたちにみる防災教育(全3話)
(1)しっかり逃げる社会
東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2682&referer=push_mm_rcm1
◆片田敏孝:釜石の子どもたちにみる防災教育(全3話)
(3)「津波てんでんこ」
「津波てんでんこ」という言葉が伝える災害の教訓
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2684&referer=push_mm_rcm3
釜石市は津波の大きな被害を受けましたが、市内の小中学生は、ほぼ全員が津波の難を逃れることができました。これは「奇跡」と呼ばれましたが、片田先生は「奇跡ではない」とおっしゃいます。事前の防災教育によって子供たちが対応力を身につけていたので、そのような成果となったというのです。
長い歴史のなかで何度も津波に襲われてきた釜石には、様々な「記念碑」が津波の到達点に残されていました。片田先生は、東日本大震災の前に子供たちをその碑の前に連れて行き、先人が体験した津波の被害に思いを馳せさせることで、危機感を醸成していきました。片田先生は、子供たちに、こう問うたといいます。
《この碑に託されたのは、もう二度とこんな思いをさせないようにということ。なけなしのお金を出し合って建ててくれた碑がこれなのだ。先人の思いはどこへ行ってしまった。間もなく津波が来るといわれている。だけど、今の釜石の人たちは逃げないぞ。このままでいいのか》
「先人たちの教えを聞いていたはずなのに、大きな犠牲者を出してしまった。そのことに対する悔いの念を先人たちは抱いていたはずだ。だから君たちは、その思いをどうか知ってほしい……」。そのメッセージを子供たちが受け取ったからこそ、釜石での「奇跡」が起きたことを、われわれは忘れてはいけません。
さらに片田先生が伝えたのが「津波てんでんこ」の教えです。この言葉は、考えれば考えるほど悲しく、優しく、そして意義深い言葉です。この言葉の意味とは何か、そしてそれを聞いていた子供たちはいかに行動したのか……。
先人が悔いや涙とともに刻んだ教訓を忘れてはいけない。これは災害だけではありません。様々な歴史的事件について先人が語り残したことを学ぶことの大切さも、この片田先生の講義は教えてくれます。ぜひ本講義をご受講いただければ幸甚です。
(※アドレス再掲)
◆片田敏孝:釜石の子どもたちにみる防災教育(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2682&referer=push_mm_rcm2
◆片田敏孝:釜石の子どもたちにみる防災教育(3)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2684&referer=push_mm_rcm4
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☆今週のひと言メッセージ
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「健康は労働から生まれ、満足は健康から生まれる」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2143&referer=push_mm_hitokoto
「労働寿命」が延びれば「健康寿命」も延びる
神代雅晴(一般財団法人日本予防医学協会理事長/産業医科大学名誉教授/学術博士)
今から400年ほど前、ウィリアム・ペティ(Sir William Petty)という医学者がいました。非常にマルチタレントで、経済学者であり地図の測量士でもあったのですが、彼が言い残した言葉があります。それは「健康は労働から生まれ、満足は健康から生まれる」という言葉です。
(中略)ですから私は、健康寿命を延ばしたいと考えるならば、労働寿命をいかに延ばすかの戦術を考えるべきだと主張しているのです。
前にお話ししましたが、私が言う「労働」は、工場やオフィスなどの建物の中、管理された状態で行う労働だけを指しているのではなく、日常生活の下で行われる生産的活動全般のことです。それを私は労働、すなわち「働」くと呼んでいます。この「働」きが健康を生むのではないかと考えているのです。
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今週の人気講義
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日本経済が行き詰まりの状態を続けている二つの大きな理由
西山圭太(東京大学未来ビジョン研究センター客員教授/前・経済産業省商務情報政策局長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3825&referer=push_mm_rank
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、冒頭での編集長の話にもありましたが、東日本大震災から10年ということで、ここでは浦環先生(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)の講義を取り上げたいと思います。
◆浦環:遠隔操縦機~カメラロボ(1)津波災害調査
被災地の漁師を勇気づけた水中カメラロボットの活躍
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1670&referer=push_mm_edt
浦先生は震災後、遠隔操縦機のカメラロボットを使って、海底観測を行っています。調査の結果、海底にはがれきがほとんど落ちていないことが分かりました。つまり、少量のがれきを取り除けば、すぐにでも漁業が再開できるということで、漁師の皆さんを勇気づける結果になったといいます。
こうしたことは一般にはあまり知られていないのではないでしょうか。当時、調査した南三陸町の海底はどのような状況だったのか、また、浦先生たちはどのように調査を進められたのか、講義をご覧になればお分かりになると思います。この機会にぜひご視聴ください。
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