編集長が語る!講義の見どころ
曾孫が語る渋沢栄一のとっておきの真実(渋沢雅英先生)【テンミニッツTV】

2021/03/26

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」(主演:吉沢亮さん)が好評です。2024年からは1万円札の肖像にもなる渋沢栄一。ぜひこの機会に、日本の近代化にかけがえのない役割を果たした偉人のことを知っておきたいものです。

テンミニッツTVでは、渋沢栄一の曾孫にあたる渋沢雅英さんの講義を配信しています。渋沢雅英さんは1925年のお生まれ。渋沢栄一の孫で、栄一の跡取りとなった渋沢敬三の嫡男でいらっしゃいます。渋沢栄一が1931年で亡くなったときに6歳でした。

渋沢雅英さんは、渋沢栄一の23歳から33歳までを「奇跡の10年」と表現されます。それは、はたしてどのようなことなのでしょうか。この渋沢雅英さんの講義をご覧いただくだけで、渋沢栄一の人生の凄さを存分にご理解いただけること、うけあいです。

◆渋沢雅英:曾孫が語る渋沢栄一の真実(全7話)
(1)ゆかりの地で聞く「奇跡の10年間」
渋沢栄一の曾孫が明かす「日本資本主義の父」の真実
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3841&referer=push_mm_rcm1

渋沢雅英さんがおっしゃる「奇跡の10年」は、渋沢栄一の23歳から33歳までの10年を指します。埼玉県の豪農に生まれ育った栄一が、西洋列強の進出に脅威を抱いて尊皇攘夷運動を志し、高崎城の乗っ取りや横浜焼き打ちを企てたのが23歳(文久3年・1863年)。その後、数奇な縁で一橋慶喜の家臣となり、慶喜の弟の徳川昭武の随員としてパリに赴き、資本主義の精神にふれて帰国。その後、明治2年(1869年)に明治政府に請われて出仕し、様々な改革で大活躍した後、大蔵省を辞して、第一銀行を開業したのが33歳(明治6年・1873年)のことだったのです。

渋沢栄一が明治2年から6年までのわずか4年間の財務省時代に携わった国づくりの案件も、まことに膨大なものでした。度量衡の改正、全国の測量、郵便制度の創設、鉄道敷設、蚕業と絹産業の保護と支援、関税率の制定、新貨条例や国立銀行条例の起草、貨幣制度や銀行制度の整備、さらに廃藩置県までの多種多様な改革は、渋沢栄一の力なしには成し遂げられなかったといわれます。

農民出身の栄一が不思議な縁に導かれるようにパリにまで行くことになり、そして近代日本の礎となる改革を次々に行った後、銀行家となって、日本の資本主義を率いていく立場となる。それがわずか10年でなされたことは、渋沢雅英さんがおっしゃるように、まさに「奇跡」といえましょう。なぜ、その奇跡が実現したのか。渋沢雅英さんは、その過程を生き生きとご解説くださいます。

また、経済人としての渋沢栄一のエピソードとして有名なのは、岩崎弥太郎との対決でしょう。渋沢栄一と岩崎弥太郎は、お互いの経済思想の違いもあって、1882年ごろに激烈な経済覇権競争を行ったのです。

実は、渋沢雅英さんのご母堂は、三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎の孫です。つまり、渋沢雅英さんは、渋沢栄一と岩崎弥太郎の両方の曾孫にあたるわけです。そのお立場から、この両者をどのように見ておられるのか。また、両家がいかに結婚に至ったのか。それらについての秘話も、本講義ではお話しいただいています。

さらに、渋沢栄一で忘れてはならないのは、「国民外交」できわめて重要な役割を担っていたことです。実は渋沢雅英さんは『太平洋にかける橋』(読売新聞社、1970年。復刻版は不二出版、2017年)という書籍を執筆しておられます。この本は、渋沢栄一がいかに、アメリカや中国との関係構築に尽くしたかを調べ上げた、まことに素晴らしい一冊です。

渋沢栄一は、生涯で4回、渡米しています。築き上げた人脈の質量ともに膨大なものでした。その渋沢が、大正13年(1924年)にアメリカの上下院で排日移民法が通過したとき、涙を流しながら、次のように演説したといいます。

《永い間、アメリカとの関係を継続して骨を折っていた甲斐もないと、あまりに馬鹿らしく思われ、社会が嫌になるくらいになって、神も仏もないのかというような愚痴さえ出したくなるのであります》

さらに、尊皇攘夷運動を志した若き日を振り返り、「70年前にアメリカ排斥をした当時の考えを、思い続けていたほうが良かったかというような考えを起こさざるをえない」ともいっています。そこまでいうほどに、渋沢栄一にアメリカとの関係構築に生涯を懸けていました。

しかしそうはいいつつ、涙を流した演説の最後には「しかし真理は必ず最後の勝利者であろうと思う」と述べ、最後まで希望を示しているのは、まさに渋沢栄一の真骨頂といえましょう。

渋沢雅英さんは、『太平洋にかける橋』で、渋沢の交遊録だけではなく、アメリカでどのような人物(作家や、毛色の変わった軍事戦略家など)が日本脅威論をぶち上げていたかも調べ、いかにアメリカの排日の世論が形成されていったかも詳細に解き明かしています。これ一冊を読めば、戦前の日米交流史がすとんと腹に落ちること間違いない名著ですが、テンミニッツTVの講義では、そのさわりをお話しいただいていますので、まさに必見です。

さらに渋沢は、中国とも「国民外交」を展開し、袁世凱や蒋介石などとも深く交流しました。蒋介石は、渋沢栄一が死去したとき、ちょうど満洲事変が勃発していた時期だったにもかかわらず、会議中に「隣の国の大人物がいなくなってしまったから、悲しみましょう」といって黙祷を捧げたといいます。

現在、アメリカそして中国に、渋沢ほどの深い人脈を張り巡らせている人がどれほどいるでしょうか。ここまで日本の経済力が大きくなり、交通手段や通信手段もここまで発達したなかであるにもかかわらず、です。渋沢栄一の人間力の巨大さをしみじみ感じます。渋沢栄一の米中との「国民外交」がどのようなものだったのかも、ぜひ本講義をご覧ください。

もちろん講義では、渋沢栄一の魅力的な人物像も、存分に描かれていきます。今こそ、日本によみがえらせるべき人物像です。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)◆渋沢雅英:曾孫が語る渋沢栄一の真実(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3841&referer=push_mm_rcm2


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今週の「エピソードで読む○○」Vol.29
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今回の○○は、鎌倉幕府初代将軍である「源頼朝」です。

『吾妻鏡』はいろいろと謎の多い書物ですが、最後は「頼朝の死」をめぐる謎についてお話ししましょう。『吾妻鏡』には彼が死ぬ年に関する記述はありますが、その前の3年間にわたって記述が抜け、漏れているのです。これを専門家は「脱漏」と呼んでいます。

これは、頼朝の死の謎、死に至る経過を解き明かす上で非常に重要です。そして、なぜその大事な箇所が抜けているのかということが、これまでの先達、先人たちの興味・関心を引いてきました。そして、これは「死」そのものではなくて、「死の様子(プロセス)」を隠したかったのではないかという説があるのです。

一説によりますと、晩年の頼朝はアルツハイマー病、認知症が進行していたのではないかと語る専門家がいます。また、「執筆はされたのだが、後の誰かが意図的にその記述を抜いた(廃棄した)」というように考える別の専門家もいます。

「吾妻鏡」に書かれた「源頼朝の死」をめぐる謎
山内昌之(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=136&referer=push_mm_episode


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レッツトライ! 10秒クイズ
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今回はちょっと趣向を変えたクイズです。

1年前(2020年)の昨日(3/25)配信のメルマガで編集長が紹介したおススメの講義は何でしょうか?
ヒントは〇Gで、現在その最新状況を伝えるシリーズ講義が毎週配信されています。

答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3066&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて、ここでは今年(2021年)1月~昨日(3/25)までのおよそ三カ月のあいだで、特によく視聴されたシリーズ講義を3つご紹介いたします。

◆「近代日本をつくった男、渋沢栄一」の素顔 (全4話)
童門冬二(作家)
(1)若き日の渋沢栄一
渋沢栄一が近代日本に与えた二つの大きな影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3868&referer=push_mm_edt

◆マルクス入門と資本主義の未来 (全10話)
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3811&referer=push_mm_edt

◆日本企業の弱点と人材不足の克服へ (全8話)
西山圭太(東京大学未来ビジョン研究センター客員教授/前・経済産業省商務情報政策局長)
(1)膠着する日本経済の深層
日本経済が行き詰まりの状態を続けている二つの大きな理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3825&referer=push_mm_edt

いずれも以前に編集長がおススメしたシリーズ講義になりますが、特に童門先生の講義は高い人気を保っております。それは、冒頭で編集長が渋沢先生の講義を紹介されましたが、今年最も注目の人物、その一人が渋沢栄一だからではないでしょうか。
また、他の二つの講義ですが、こちらもとても学びの多い内容になっております。これからご覧になるという方はもちろん、すでにご覧になっている方もぜひもう一度ご視聴いただき、新たな学び、気づき、再発見を楽しんでいただければ幸いです。