編集長が語る!講義の見どころ
花まつりに、空海が説いた「密教」を学んでみよう【テンミニッツTV】
2021/04/06
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
4月8日は「花まつり」です。灌仏会、降誕会、仏生会などともいわれますが、お釈迦様の誕生を祝う行事です。お寺によっては稚児行列なども行われますし、お子さんやお孫さんが仏教系の幼稚園などに通っていらっしゃる場合は「甘茶を飲む日」として知られているかもしれません。
ちょうど4月8日を目前にしたタイミングでもありますので、本日は、頼住光子先生(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授)の大好評シリーズ「日本仏教の名僧・名著」より、「空海」についてご解説いただいた講義を紹介しましょう。
空海の名を聞いたことがない方は、ほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。ですが、空海が何を説いたのか、また密教とはどのようなものかをご存じの方がどれほどいらっしゃるでしょうか。頼住先生は、その一端をわかりやすくご解説くださいます。日本仏教に対する理解が、グッと深まる講義です。
◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~空海編(全3話)
(1)空海と最澄
空海と最澄の関係に大きな影響を与えた「密教」の位置づけ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3912&referer=push_mm_rcm1
まず、そもそも「密教」とは、どのような考え方なのでしょうか。
頼住先生は、とてもわかりやすく、次のように教えてくださいます。
《普通、仏教では釈迦牟尼仏を中心にしていますが、密教の場合、釈迦牟尼仏もありながら中心にしている仏は大日如来です。しかも、釈迦には言葉で説いた教えの他に言葉で説かれていない秘密の教えがあるといわれていました。その教えが最も重要であるというのが、密教の考え方です。一般的な仏教として、天台宗などいろいろな宗派がありますが、それらを超えた最高の教えであると自分たちを位置づけていたわけです》
非常に明快なお答えです。しかも、この「密教」の捉え方をめぐって、同時代の名僧・最澄(天台宗の開祖)との亀裂が起きていく過程もご解説くださっています。
壮大な体系を描いた空海に対して、自らはそのようなものを構築しなかった最澄。その両者の違いが、しかし、後世の天台宗(比叡山)と真言宗(高野山)のあり方に大きな違いを生んでいくのは、とても興味深いお話です。
さらに頼住先生の本講義シリーズは、実際に名僧たちが説いた「教え」をその著書から原文で紹介し、読み解いていくことを大きな特徴としていますが、仏教用語が散りばめられた空海の文章は、とにかく難しいものです。その難しい文章を解説いただくだけでも、まことに意義深いことといえましょう。この講義では、次の箇所を引用くださっています。
《六大無礙(ろくだいむげ)にして常に瑜伽(ゆが)なり。四種曼荼(ししゅまんだ)各(おのおの)離れず。三密加持すれば速疾(そくしつ)に顕わる。重重帝網(じゅうじゅうたいもう)なるを即身と名づく》
このままでは、まったく意味がわかりません。しかし、頼住先生はこの部分を、わかりやすく読み解いてくださいます。たとえば最後の部分については、ズバリ、次のように指摘くださいます。
《「重重帝網」というのは何かというと、まず「帝網」は帝釈天の網ということです。"Indra's net"といいますが、要するにある一つのものは他のすべてを映していて、あらゆるものがあらゆるものと結びあっているという世界なのです。(中略)
私たちは他人から切り離された皮膚によって包まれた「身」を(個人の)身と考えているのですが、本当の身はそういう限定されたものではなく、あらゆるものとつながりあっている。そのような身こそが本当の身であり、即身成仏するときの身だということを、空海はここで言っていると理解できると思います》
大乗仏教の教えの根本が、イメージとして伝わってきます。この「重重帝網」のイメージは、同じく頼住先生の講義の「最澄編」で紹介された「一切衆生悉有仏性」「草木国土悉皆成仏」のイメージにも響きあうところがあります。そのことを評して頼住先生は、「日本仏教を考える上で、宗派の違いはもちろん大事なのですが、宗派の違いを超えて、大乗仏教としての特性なり、法華経という宗派を超えたお経がもたらす影響なり、宗派を超えた部分も見ていく必要があるかと思います」とおっしゃいます。まさにご指摘のとおりでしょう。
さらに頼住先生は、空海の主著といわれる『十住心論』についてもご解説くださいます。空海が世界の姿や仏教の段階についてどのように考えていたのか? 空海の考えによれば、その頂点に「真言密教」が位置し、真言密教をすべてを包み込んでいくわけですが、それはどういうことなのか?
それらについては、ぜひ講義をご覧ください。ここで頼住先生にご解説いただいた『十住心論』の十段階の世界観は、わかりやすく外国の方などに説明できたら、大いに日本仏教の深い精神性を伝えることができそうです。
大乗仏教の世界観の本質と、空海が描いた壮大な体系をうかがい知ることができる講義です。この講義シリーズでは、ほかに「総論」「聖徳太子」「最澄」についても既に語っていただいていますし、今後も続々と配信されますので、ぜひお楽しみに。
(※アドレス再掲)
◆頼住光子:【入門】日本仏教の名僧・名著~空海編(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3912&referer=push_mm_rcm2
※本文の補足:頼住先生の「頼」は、実際には旧字体です
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☆今週のひと言メッセージ
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「喜びは顧客満足よりも深い概念だ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2854&referer=push_mm_hitokoto
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子(中央大学 ビジネススクール大学院 戦略経営研究科 教授)
顧客満足は顧客に不満なところがないことです。喜びは驚きと感動です。顧客が思ってもいなかったような新しい価値が提供できて、「Wow Factor」と英語ではいいますが、顧客が「Wow、こんなものがあったなんて」というのが喜びだというのですが、そういうことを通して社会的な善を目指します。
だから、わが社だけが良ければいいというわけではないというのです。
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編集後記
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編集部の加藤です。
4月も2週目に入りましたが、皆さん、今回のメルマガ、いかがだったでしょうか。
今回は、一昨日(4/4)から配信開始となったシリーズ講義「豊臣政権に学ぶ『リーダーと補佐役』の関係」を紹介いたします。
■豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(全5話)
小和田哲男(静岡大学名誉教授/文学博士)
(1)話し上手な天下人
織田信長が高く評価した秀吉の二つの才覚
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3956&referer=push_mm_edt
豊臣秀吉が活躍できた要因として補佐役の存在が挙げられます。戦国の時代を生き抜く上で補佐役は非常に重要な存在といえますが、秀吉と補佐役はどのような関係を築いたのか。また、リーダーである秀吉にとって補佐役はどんな役割を担ったのか。気になるところですよね。
その点について、二話目以降、秀吉の補佐役だった弟の豊臣秀長、そして家臣の石田三成について詳しく解説していきます。ご期待ください。
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