編集長が語る!講義の見どころ
「怒り」の仕組みと感情コントロールの方法を学ぼう【テンミニッツTV】

2021/04/09

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
日々を送るなかで、さまざまな理不尽なことに直面するものです。ついつい「カッ」となってしまうこともあります。そのようなときに感情をコントロールする――これは、なかなかに難しいものです。

自分の感情が怒りに支配され、行動が粗野になったり、精度が落ちたりしてしまう……。そのようなことは、誰しも経験していることでしょう。

はたして、「怒り」の正体とは何か。また、どうすれば自分の感情を、よりコントロールできるようになるのか。本日は、その点についての研究の最前線を、川合伸幸先生(名古屋大学大学院情報学研究科教授)にわかりやすくご解説いただいた講義を、紹介いたします。

◆川合伸幸:「怒り」の仕組みと感情のコントロール(全5話)
(1)「キレる高齢者」の正体高齢者は本当にキレやすいのか――「怒り」の実態に迫る
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3902&referer=push_mm_rcm1

第1話で川合先生は、まず、なぜ「高齢者がキレやすいのか」をご解説いただいています。川合先生が「高齢者がキレやすい理由」として挙げるのは、加齢によって前頭葉の働きが落ち、若い頃には一呼吸おいて我慢していたところが、年を取ってくるとその我慢ができなくなることです。脳の働きが、行動にどのような影響を与えるかという問題は、人間のあり方を考えるうえで、とても興味深いところです。

第2話では、「脳が体の状態にだまされる」ことを利用して、感情をコントロールする方法をご教示いただけます。ここで、川合先生はこんな実験を紹介くださいます。

大学生に小論文を書かせて、隣の人とその小論文に点数をつけあう。実は片方の人は実験者の仲間で、わざと低い点数をつけて、「教育を受けた人間がこのような考え方をするなど、とても信じられません。この人にはもっとしっかりと学んでほしいと思います」とあえて侮辱した評価を書いてもらいます。

このとき、酷評される大学生のうち、半数には右手を強く握って評価を読んでもらい、残りの半数には左手を強く握って読んでもらいました。

その後、評価を交換した2人で早押しクイズをします。勝ったほうは負けたほうに、罰ゲームとして不快な爆音(その強さや長さは罰ゲームを与える人が好きに調整できる)を聞かせることができます。すると、右手を握って酷評を読んだ大学生のほうが、左手を握って読んだ大学生よりも、相手に強い攻撃を与える傾向があったというのです。

このタネ明かしは、評価を読んでいるときに、右手を握るか、左手を握るかで、自分の左脳の活性化の度合いが変わるところにあります。つまり、右手を握ると、前頭葉の左側が活性化しますが、この部分が活性化するのは、「体や気持ちが前のめり」になる状態のときです。逆に右側が活性化すると、その逆の状態になる。だから、「左手を握って、前頭葉の右側を活性化させた人」のほうが、あまり怒りを感じなかったというのです。

川合先生はこのような実験をいろいろとご紹介くださいます。怒りの9つのツボとは何か? 怒りを鎮めるために、自分を客観化するとはどういうことか? フレーミング効果とは? そのようなことが、この講義を受講するととてもよく理解できます。

さらに、川合先生は「セルフコントロール」の鍛え方も教えてくださいます。実は、アメリカでは、このセルフコントロールの研究が進んでいるとのこと。その結果、たとえば、毎日5分程度の運動を自らに課したり、糖分を適度に摂取したりすることだけでも、セルフコントロール能力が鍛えられることがわかってきたこといいます。それはどのようなことでしょうか。

さらに、認知機能の改善に、脳トレよりも効果があるものは何か……などといった興味深いテーマにも、話は進んでいきます。

人間の脳と行動の関係は、とても興味深いものであることが、本講義からもよく伝わってきます。公共スペースに「一瞬の怒りで、人生を失います」などといった標語のポスターが掲げられていることがあります。自分でも思いもしなかったところで、怒りの虜(とりこ)になってしまうこともあるものです。人生を失わないまでも、大切な人からの信頼を失ってしまうようなことも、けっしてゼロとはいえません。

そのようなことを避けるためにも、ぜひとも視聴しておくべき講義です。

(※アドレス再掲)
◆川合伸幸:「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3902&referer=push_mm_rcm2


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新コーナー!テンミニッツTV講師をご紹介
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また新たなコーナーが始まりました。テンミニッツTV講師紹介コーナーです。
今回ご紹介するのは、森口佑介先生(京都大学大学院文学研究科准教授)です。

◆森口佑介:「自分をコントロールする力」の仕組み (全6話)
(1)自制心と目標の達成
教育現場で注目を集める「自分をコントロールする力」とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3907&referer=push_mm_edt

森口先生のご専門は発達心理学・発達認知神経科学で、「乳幼児の認知的世界が成人のものとどのように異なるのか」に関心を持っておられるとのことです。
主な著書に『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』(講談社現代新書)があり、現在、好評配信中のシリーズ講義<「自分をコントロールする力」の仕組み>は、そちらの内容を踏まえたものになっています。

ちなみに、世界では現在、「自分をコントロールする力」である実行機能がIQよりも注目されているといいます。それはなぜなのでしょうか。第5話目で解説されていますので、ご視聴がまだという方は以下よりアクセスください。

(5)実行機能を伸ばす環境要因
実行機能がIQよりも注目されている理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3911&referer=push_mm_edt


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レッツビギン! 穴埋め問題
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第2回は『ソクラテスの弁明』についての講義からの問題(冒頭のセリフ)です。ではレッツビギン。

「アテナイの皆さん、皆さんが私の告発者たちによってどんな目にあわれたか、私は知りません。ですが、私のほうは、あの人たちのおかげであやうく自分自身を忘れるところでした。それほど説得力をもって、彼らは語ったのです。しかし(   )は、あの人たちは、いわば何一つ語りませんでした。」

さて、(   )には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2614&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガもですが、4月に入って新たなコーナーが続々と始まりました。いかがでしょうか。
少しでも楽しんでいただければ幸いでございます。

実は近日中にまた新たなお知らせができると思います。テンミニッツTVにはこんな面白い講義があったのかとか、あんなことを教えてくれる講義があったのかとか、とにかく驚き、喜び、気づきがより多くなること必至です。
ということで、何が飛び出ずか、ご期待ください。