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インフレターゲット論の欠陥とは?

中央銀行の役割

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
巷に溢れる金融緩和論。では、無制限にお金を供給すればインフレは起こり、実体経済は本当に回復するのか?従来型の金融政策の限界点やインフレターゲット論の問題点を論じつつ、中央銀行がとるべき姿勢と役割を示唆する。
時間:05:44
収録日:2012/11/20
追加日:2014/03/27
巷に溢れる金融緩和論。では、無制限にお金を供給すればインフレは起こり、実体経済は本当に回復するのか?従来型の金融政策の限界点やインフレターゲット論の問題点を論じつつ、中央銀行がとるべき姿勢と役割を示唆する。
時間:05:44
収録日:2012/11/20
追加日:2014/03/27
≪全文≫

●従来型金融政策の限界とその理由


最近、金融政策で景気のいい話がずいぶん出ています。特に「日銀法を改正しろ」「日銀総裁を代えたほうがいい」「インフレターゲットを目指せ」「金融緩和をどんどんやれ」「無制限にお金をつぎ込め」などという説がありますが、これは非常に危険な要素が大きいわけです。
それはなぜかと言うと、たしかに金融政策のほうが、財政政策よりも最近の経済学者の主流ではあるのですが、この金融政策は、従来の方法では日銀が市中にお金を流し、ベースマネーを増やすことによって、銀行が貸し出し、銀行が貸し出すことによって信用創造が生まれるという考え方でしたが、ここ(銀行の貸出)が滞って半分ぐらいは国債を買っているわけです。ですから、これはもう手法として限界があります。
また、もう一つは「日銀が資産を買え」ということです。債券あるいは不動産の証券を買い込むことによって、市中にお金を流す。それは、日銀が買った分、金融機関なり市場なりがそこを埋めるだろう、だからお金が出るだろう、という理屈付けがされます。ただ、これは中央銀行のバランスシートを毀損します。どのぐらい毀損するか、これはリスクに依存するわけです。
ですから、手法としてはあり得る手法ではあるけれども、簡単ではありません。

●インフレターゲット論の欠陥


では、無制限にお金を供給することによってインフレが起きるのだろうか。たしかに起きるかもしれませんが、それはどこに起きるのかと言うと、バブルの形で起きやすいのです。
そういう意味で言うと、インフレターゲット論、あるいはこのような緩和論というのは、実体経済の人から言えば、「お金は余っていますよ」つまり、「現実は運用先がないんですよ」ということになります。運用先がないということはどういうことかと言うと、投資をしてきちんとしたリターンを取れるところがないということであり、これが最大の問題です。
そこを解決しないで、お金だけをじゃぶじゃぶと溢れさせれば、名目的な物価は上がるかもしれませんが、上がったところで現実の経済、実体経済が回復するとは限らないというのが、これが一つの欠陥なのです。

●消費者物価指数だけを見てはいけない


インフレターゲット論は、ずいぶん長いこと議論されていますが、ここには問題があって、1990年頃、日本でバブル発生した頃、赤羽隆夫さんという元経済企画庁の事務次官が私の大学の教授として来まして、「曽根さん、経済学というのは大欠陥があるんだよ」とおっしゃいました。その頃のバブルというのは、経済の手法、あるいは金融経済では把握しきれないのだとおっしゃっていました。
つまり、消費者物価指数だけを見ていたら、非常に安定的でした。ところが当時、株価は上がり、土地は上がり、そして、バブルが崩壊したら一気に10分の1、20分の1と落ちていった。それは物価に反映されないわけです。
つまり、物価というのはフローを把握するわけで、そういう意味で言うと、資産である土地、株、あるいはゴルフの会員権のようなものというのは扱わないわけです。
実はそれが、1990年代初期の頃はずっと日本経済に影響を与えたわけですが、日銀はそこをウォッチしていたわけですから、日銀としてはそれほど大失敗をしたということではないのだけれども、実際には土地が上がり、株が上がり、それが大下落をした。
そうすると、CPI、消費者物価指数をウォッチするということは、どれだけ意味があったのか。逆に言うと、消費者物価指数を2パーセン...
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