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異常気象「マイクロバースト」にどう対応するか?

航空機事故ゼロをめざして(4)自然の脅威とその対策

鈴木真二
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
情報・テキスト
乱気流の先端に生じた雲
航空機事故は異常気象によっても引き起こされる。マイクロバースト現象に対応するため、現在JAXAを中心として、機体搭載型のライダーが開発中だ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、1975年のイースタン航空66便墜落事故後の、マイクロバースト対策について解説する。(第4話)
時間:06:53
収録日:2017/10/30
追加日:2018/02/05
≪全文≫

●航空機はマイクロバーストに遭遇すると風向きが変化する


 次は、自然の脅威が原因となって発生する航空機事故について、そしてそれをいかに防ぐかについてお話しします。

 1975年、イースタン航空66便はニューヨークのJFK国際空港に着陸する際、着陸に失敗してしまいました。当初はパイロットエラーが疑われましたが、シカゴ大学のフジタ博士は、マイクロバーストと呼ばれる異常気象による、ウィンドシアが原因であることを突き止めました。

 マイクロバーストとは、局所的な下降風が地面に当たって、気流が周囲に流れる現象です。着陸中の航空機がこれに遭遇すると、風向きが変化します。マイクロバーストに近づくときには前から風が吹き、途中で下降風に変わり、最終的には後ろから風が吹くという状況に変わるのです。

 飛行機にとって風向きは非常に重要です。特に離着陸の際には、揚力を維持するために前からの風、つまり向かい風の状態で飛行することが求められます。しかし、マイクロバーストに遭遇すると、当初は向かい風だったものが、途中で追い風に変わってしまうのです。そうすると、主翼に発生する揚力が低下し、高度も低下してしまうので、エンジン推力を上げ高度低下を防ぎます。

 ただ、ジェットエンジンの構造上、推力を上げるようにスロットル操作しても、すぐに推力は上がりません。そこでパイロットは操縦桿を引いて機首を上げ、高度を上げようとしますが、機首を上げれば主翼が失速するという空力的な現象が起きかねません。このため、イースタン航空66便は、急激な機首上げ操作を行ったために失速し、墜落してしまったと考えられたのです。


●レーザー光線を用いた計測システムが空港に設置される


 マイクロバースト対策として、さまざまな方法がその後、考えられました。一つは空港での対策です。異常気象が起きているということを、パイロットと管制官にいち早く通知するために、LLWAS(低層ウィンドシア警報装置)が開発されました。飛行場には風向や風速、気圧、温度等を測る装置が付いています。通常は1カ所に設置されていますが、これを滑走路の周囲にたくさん配置して、局所的な気象の変化をいち早く察知しようとするものです。ただし、こうした警報システムが整備されても、マイクロバーストのウィンドシアによる墜落は絶えませんでした。

 その後、より詳細な気象観測を可能にするドップラーレーダーが開発されます。レーダーは通常、雨雲を検知するものですが、ドップラーレーダーは水滴の速度も検出可能です。つまり、風速や風向を空間的に計測することができるため、マイクロバーストの発生をより正確にキャッチできるのです。ただし、レーダーは水滴に反射して観測を行うため、雨のないマイクロバーストに対しては効果がありません。そこで、レーザー光線を用いた計測システムが空港に設置されるようになりました。これは「ライダー」と呼ばれています。


●JAXAが中心となり、機体搭載型ライダーの開発が進められている


 他方、機体側にも対策が立てられました。ドップラーレーダーを小型化し、機体のアンテナに搭載する、機体搭載型のドップラーレーダーが開発されたのです。これによって、雨雲を事前に航空機からも検知できます。また、温度や気圧、加速度の変化を機体のセンサーで計測して、ウィンドシアに入ったことをパイロットに警告する「ウィンドシア警報装置」も備えられるようになりました。

 ただドップラーレーダーは雨が降っていないと効果がありません。また、ウィンドシア警報装置はウィンドシアに入った後でないと警報が出ませんので、手遅れになる可能性があります。そこで現在、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)が中心となり、晴天時でも気流の乱れを計測できるレーザーを用いた、機体搭載型のライダーの研究開発が行われています。日本での最近の航空機事故のほとんどが乱気流によるものだという背景があります。
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