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情報社会におけるビッグデータの価値と危険性

ビッグデータの価値とリスク~FB問題と電子マネー~

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が、フェイスブック(FB)の問題からビッグデータに付随する価値とリスクについて論じる。情報社会でも、貨幣の世界においても、今後、個人の情報がどのように利用されていくのかは大きな関心事であり、われわれは利便性とリスクの両面を視野にいれていかなければならないのだ。
≪全文≫

●情報の価値が上がるほどリスクも高まる


 今日は、いわゆる情報革命の中でのデータの価値とそれが持っているリスクについて話をしたいと思います。

 アメリカのフェイスブック(FB)やグーグル、アマゾン、ツイッターといったビジネスモデルを見れば分かるように、膨大な人がネットワークにつながって情報のやりとりをすることによって、データの価値が非常に高くなっているというのは明らかだろうと思います。フェイスブックだけでも3兆円規模の広告ビジネスにつながっているというような報道もされています。残念ながら日本の企業や産業は、こうしたところにどんどん水をあけられています。

 これをどうしたらいいかというのは、もちろん考えなければいけない非常に難しい問題なのですが、ただ、そうした中でもう一つ話題になっているのは、このようなネットワークが広がってくることによって、情報の価値が上がれば上がるほど、情報が持っているリスクや情報に関する社会問題というものが耳目を集めているということです。今回のフェイスブックの一連の騒ぎというのは、まさにそれを象徴したようなものだと思います。


●影響力と社会的責任の大きさを示したフェイスブック問題


 私は詳しい経緯まで理解しきれていないのかもしれませんが、フェイスブックの場を使ってある種のゲームのようなことを展開した大学の先生がいて、皆、喜んでそのゲームに参加したため、大変な数の人の情報が集まってきたわけです。報道によると、この先生がその情報データを(ケンブリッジ・アナリティカという会社に売ったのか提供したのかは分かりませんが)渡して、それがあまり好ましくないような活動に使われたということです。具体的には、アメリカの大統領選挙、あるいはイギリスのブレグジットの国民投票といったところに使われて、結果的にはその結果に対して影響を及ぼしたということです。このようなことがあったりして、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏がアメリカ議会に呼ばれたのは、報道された通りです。

 この問題の本質がどこにあるのかというのは、なかなか難しいところなのですが、いくつかポイントがあって、一つはそれだけの影響力がフェイスブックにはある、ということです。そして、影響力が大きくなればなるほど、社会的責任とその影響も大きくなるということだろうと思います。


●小さ...

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