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資金調達と開発のバランス…ベンチャー企業のメリットとは

「研究開発型ベンチャー」成功の条件(1)なぜベンチャーか?

片岡一則
ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授
概要・テキスト
ベンチャー企業の活躍が目覚ましい。世界的猛威をふるう新型コロナウイルスのワクチンの中にはベンチャー企業によって開発されたものもある。ナノテクノロジーという最先端科学技術による創薬、その実用化のプロセスの中で、ベンチャー企業がどのような役割を担っているのか。大企業との比較におけるベンチャー企業の特徴や、多様な形態について解説する。(全3話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫

●ベンチャー企業の利点と多様な形態


―― 皆さま、こんにちは。本日は川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターのセンター長で、東京大学名誉教授でいらっしゃいます片岡一則先生にお話しをいただきます。片岡先生、どうぞよろしくお願いいたします。

片岡 ご紹介どうもありがとうございます。片岡です。

―― どうぞよろしくお願いいたします。

 (さて)先生がつくられた「ナノキャリア(現・ナノMRNA)」という会社はベンチャー企業です。ナノマシンのような最先端科学技術を実用化する流れには、研究機関、製薬会社、そして最後は病院がありますが、ベンチャー企業がそれらをつなぐ役になる可能性は大きいと思いますか。

片岡 それは最近特に欧米で顕著です。出てくる新薬のほとんどはベンチャーから出てきています。

―― 海外の場合、ベンチャーは大学とか研究機関と結びついていることが多いということですか。

片岡 ほとんどの大学でそうです。もちろん大企業でもできますが、大学で生まれた研究成果をベースにして、それをいち速く実用化するには、やはり目的を明確に定めたベンチャー企業のほうがフットワークは良いですし、速いですね。

―― 非常にビジネス的な話ですが、例えば製薬会社で薬を開発するときの費用は、その特許料や薬を売った収益で賄うことになると思います。こういう研究発のベンチャー企業の収益性は、どこから得られるのでしょうか。

片岡 大変良いご指摘です。まず、開発には時間がかかります。例えば、「siRNA」などの核酸医薬の創薬で有名な「Alnylam(アルナイラム)」という会社があります。ボストンで創業して、20年近くかけて初めて薬を世の中に出しました。

 それから今、話題になっている新型コロナウイルスのワクチンを開発した「moderna(モデルナ)」と「BionTech(ビオンテック)」も、このワクチンが会社としての初めての製品です。開発には比較的長期的な時間がかかるので、資金調達が一番難しいのです。そういう点では、外部からの資金調達をいかにスムーズに行うかはすごく重要です。

 それから、実際に最後まで自分たちでやるのかどうかという点があります。例えば、「Genentech(ジェネンテック)」や「AMGEN(アムジェン)」などの初期のバイオベンチャーは、薬を開発して上場します。そして市場から資金を調達しつつ、製薬企業として成...
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