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「宗教の時代」が終わってしまったからこそ重要な長篇詩

『ベラスケスのキリスト』を読み解く(1)霊性文明の時代に

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
執行草舟は、スペインの哲学者ウナムーノが著した『ベラスケスのキリスト』の本邦初訳を監訳した。本シリーズでは、この『ベラスケスのキリスト』について、その要点を解説していく。本書は20世紀初頭の哲学者であるウナムーノが、プラド美術館にあるベラスケス画のキリスト像と対話する中で生まれた長編詩である。キリスト像と生涯向き合う中で味わった魂の苦悶、葛藤、対決が赤裸々に描かれている。科学文明がここまで進んだ現代人はもはや、原始キリスト教や原始仏教を信じた人たちのようには、神を信じることができない。だからこそ、本書を読むことでウナムーノの体験を追体験してほしい。これは人類が21世紀に向かうべき「霊性文明」をつかむために必要なことでもある。(全13話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:16
収録日:2022/08/02
追加日:2022/09/09
カテゴリー:
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≪全文≫

●なぜ『ベラスケスのキリスト』なのか


―― よろしくお願いします。今日は執行先生に『ベラスケスのキリスト』の魅力を語っていただきます。これは本邦初訳で、これほど難しいものを先生の思想をもって読み解いていく。私にもすごくありがたい機会です。

 先生は「宗教の時代は終わった」と言っておられますね。

執行 元々の著作ではそうです。

―― 今なぜ、この本を世の中に問うことになったのか。そこのところから教えていただけますか。

執行 『ベラスケスのキリスト』は、本の全容としては、(ミゲール・デ・)ウナムーノというスペインの哲学者が、プラド美術館にある、(スペインの画家ディエゴ・)ベラスケスが描いたキリスト像と一生涯対面しながら、魂の対話をしたという1つの瞑想書です。

「宗教が終わった」とは、われわれ近代人は良くも悪くも科学文明の汚染を受けて、本当の意味で神様を信じられない、ということです。これは19世紀後半から仕方ないことです、もうここまで行ってしまうと。

それでも私は、21世紀になっても一番人間存在にとって大切なのは、神だと思います。だけど、神は失ってしまった。

 神を失ってしまったということは、これからは「超宗教」に入らなければならない。宗教を超える、つまり「神を超える」ということです。ちょっと傲慢な言葉ですが。
 
 われわれ人間のレベルでいうと、21世紀は「霊性の文明」に入らないと人類はもう棲息できないということを、多くの識者も言っています。霊性文明を本当につかむための重要な方法として、私が今まで読んだ本の中では、『ベラスケスのキリスト』を読み込めば霊性文明が理解できると感じていました。ただし今まで日本では訳す人がいなかった。だから私の関連者で、スペイン語が得意な人と組んで訳させてもらいました。

 スペイン語が得意な人がスペイン語を訳し、私はそれをもとに『ベラスケスのキリスト』の英訳本2冊を参考にしながら、ウナムーノの哲学に沿うようにこの詩を翻訳しました。私はウナムーノの哲学を死ぬほど研究していますから。そしてこの本が、霊性文明のはしりになるということです。

―― 『ベラスケスのキリスト』が、宗教を超えていくものとの橋渡しになる。

執行 超宗教の始まりが『ベラスケスのキリスト』になるということです。「魂」と「人類の本質」とでもいうのでしょうか。釈迦や...
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