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古典派経済学が繁栄をもたらした…柱は自由貿易と貨幣数量説

本当によくわかる経済学史(4)古典派経済学の特徴と時代的背景

柿埜真吾
経済学者/思想史家
概要・テキスト
古典派経済学の7つの特徴として、自由貿易をはじめ、貨幣数量説、労働価値説、人口論などを挙げることができる。中でも現代でも通用する2つの柱は「自由貿易」と「貨幣数量説」だというが、それはなぜか。また、その他の特徴には「限界があった」ともいうが、その理由はどこにあるのか。ナポレオン戦争後に古典派経済学の「黄金時代」を迎え、経済的繁栄の時代がやってくる。だが、やがて恐慌の声が聞こえてきて……。古典派経済学がわかれば、そのような時代の動きもよく見えてくる。(全16話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:32
収録日:2022/06/08
追加日:2022/12/07
タグ:
≪全文≫

●古典派経済学の柱は「自由貿易」と「貨幣数量説」


―― 次に、古典派経済学の特徴です。これはどのように考えればいいでしょうか。

柿埜 基本的には、今(第3話)お話ししたように、古典派の考え方は、アダム・スミスの「自由な市場が基本的にはうまくいく」という考え方を発展させたものです。古典派の基本的な考え方はいくつかあるのですが、簡単にいうと、第一に「自由な取引、自由な貿易が原則的に望ましいものである(1)」ということです。

 もう1つ、重要なポイントがあります。重商主義の考え方とは違って、「経済は貨幣がなければ成り立たない。取引をうまく行うには、物々交換だとうまくいかない。お金がないとうまくいかないので、貨幣が存在することは重要なのだけれども、貨幣の量を無茶苦茶に増やせばインフレになる(物価が上がる)だけである。逆に滅茶苦茶に減らしたらデフレになってしまう。要するに、貨幣と物価は長期的にはつながりがある。だから、貨幣だけを増やせばいいというものではない」というものです。

 貨幣は長期的には中立的になるのですが、ただ短期的には景気に影響するということを、古典派は認めていたのです。

―― その「短期的に」「長期的に」とはどういうことなのでしょうか。

柿埜 経済の規模やその能力は、社会全体が持っている技術や資本の量といったもので決まります。例えば、貨幣の量が倍の国がどこかにあったとしても、あるいは半分の量の国があったとしても、長い目で見ると、物価は違うかもしれないけれども経済の能力自体は変わりません。

 ですが、短い期間でみると、貨幣の量がいきなり半分になったら、今まで「これだけの量の貨幣がある」という前提で取引していたものが急に貨幣が足りなくなるので、非常に混乱して、ものの値段を下げたりしなければいけなくなる。お金(貨幣)が足りなくなれば、お金の量に合わせて決まっていた「ものの値段」は下げなければいけなくなるということです。

 だから短期的には、貨幣の量が増えたり減ったりすることは大きな混乱をもたらします。貨幣が劇的に増えたら景気はものすごく良くなるし、逆に劇的に減ったら景気は一気に悪化して崩壊してしまいます。短期的にはこういった影響があるのですが、長い目で見ると(つまり、こういう混乱が全て調整された後で見ると)...
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