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冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
概要・テキスト
これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産主義国家である中国は、どのような動きを見せていたのか。その観点から、冷戦終焉後を大きく3つの時代に分けることができる。最初の10年はポスト冷戦の第1期として、西側諸国が勝ち誇った時代で、ロシア・中国にとっては西側に「偽りの和解」を示した時代。次の10年は第2期として、それまでの強いアメリカが「対テロ戦争」によってふらつき始めた時代。今回はこの2つの時代について見ていく。(全7話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:27
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
カテゴリー:
≪全文≫

●冷戦終焉で世界は浮かれていた


―― 皆様、こんにちは。

中西 こんにちは。

―― 本日は中西輝政先生のお話を伺いたいと思います。中西先生、どうぞよろしくお願いいたします。

中西 よろしくお願いします。中西輝政でございます。

―― 中西先生が最近お出しになったのが、『偽りの夜明けを超えてⅠ 「冷戦終焉」という過ち』(PHP研究所)という2023年3月に発売された本です。その前に発刊されたのが、『日本人として知っておきたい「世界激変」の行方』(PHP新書)という2016年12月に発売された本です。後者がちょうどトランプ氏が大統領選挙に勝って政権が誕生する直前に発刊され、前者はウクライナ戦争が始まって世界が激変しつつあるその最中の発刊になります。

 両方のご本を拝読させていただきまして、まず『「世界激変」の行方』では構造――どうしてトランプ氏のような政権ができたのか、またそこに至る時代的な背景、グローバリズムがどうなのかという構造――を非常によくまとめてくださっています。『偽りの夜明けを超えて』は、月刊誌『Voice』で2017年4月号から2022年の11月号に掲載された論文を集めているということで、時代の流れが非常に読めるご本だと思って拝読いたしました。

中西 そうですね。ちょっと敷衍(ふえん)して説明します。最初にご紹介いただいたのは、2016年に出した『「世界激変」の行方』です。これは、今後の世界は激変のシナリオを辿らざるを得ないということを予想して、事実、その通りになって今日を迎えています。とうとうウクライナ戦争にまでつながってしまいました。

 この本は2016年の出版でしたが、このような世界になるだろうと私が大きな方向性と見通し、展望を持ったのは、実はもっとずっと以前のことです。

 さかのぼれば、冷戦終焉ということで、世界中の人が「これで冷戦が終わったのだ。世界は平和な時代を迎えるのだ」と、こぞって喜びました(「ベルリンの壁崩壊シンドローム」といえましょうか)。1989年にマルタサミットがあり、そして冷戦の終焉が世界中にはっきりと意識された時代でした。あのときに「冷戦が本当に終わったのだろうか」と、この世界で当時、私たった一人だけそういった異論を唱えているような印象さえ持ちました。それほど世界中が、ワンパターンの思考に染まってしまったのです。


●中・ロの共産主義は残っていた


中西 冷...
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