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2017年は世界が本格的に変化し始めた年

激変しつつある世界―その地政学的分析(1)覇権の過渡期

中西輝政
歴史学者/国際政治学者/京都大学名誉教授
情報・テキスト
2017年は世界が本格的に変化していく年になるだろうと、歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏は論じる。長期的な視点で見た場合、現在は世界秩序の大移行期である。Brexitやトランプ政権の誕生は、表面的な出来事にすぎず、その背後にある大きな地殻変動に目を向けなければならない。(全10話中第1話)
時間:08:58
収録日:2017/05/16
追加日:2017/12/24
ジャンル:
≪全文≫

●変化への動きはすでに2010年頃から生じていた


 2017年は、いよいよ世界が本格的に変化していく年だと思います。確かにそれまでに、さまざまな意味で、皆がびっくりするような大きな出来事が、いくつも起こりました。例えば、2016年6月のイギリスのBrexit、つまりEU離脱の国民投票や、ドナルド・トランプ政権の誕生です。英語ではwobbling(ぐらつかせる)と言いますが、皆がギョッとするようなニュースがたくさんありました。しかし、これはいわば前座です。現象として目立つけれども、意味としてはそんなに大きな動きではなく、さほど重要ではありません。というのも、大きく見れば、こうした動きはすでに2010年ごろから生じていたからです。

 例えば、EUについていえば、ギリシャ危機がその頃すでに生じていました。ギリシャがEUから脱落するかどうかという話が、すでに2010年ごろからあったわけです。あるいは、日本の領土問題、尖閣諸島の問題も、2010年ぐらいから顕在化していました。北朝鮮の問題も、その頃からすでに危機的な状況でした。

 またアメリカでは、オバマ政権の政策的な行き詰まりが明らかになり、次は保守政権に交替するだろうという流れになっていました。当時、ティーパーティーという保守勢力が勢いづいており、次の大統領選挙の主役になるのではないかとささやかれていたのです。共和党の主勢力となるのは、ティーパーティーだろうと言われていました。実際、それは当たっていました。トランプ大統領はそうでなかったとしても、副大統領のマイク・ペンス氏はティーパーティーに属していた人で、その波に乗って、ここまで上りつめてきたのです。


●グローバルのプレートが移動している


 さらに言えば、中国も北京オリンピックが終わって、鄧小平路線を捨て去りました。「いよいよ中国は本性をむき出しにし始めた」という言い方をする人もいます。それまで中国は、鄧小平が言っていたように、もめごとを少なくし、頭を低くして諸外国と協調しながら経済を発展させ、協力関係をつくるという方針でした。しかし、北京オリンピック以後、こうした鄧小平路線は、かなぐり捨てられたのです。中国は言うべきことを言う、やるべきことをやる、これが習近平政権の下で明確になってきました。これは、すでに2010年前後のことです。

 ウラジーミル・プーチン大統領のロシアも、グルジアに対する軍事力を行使していました。グルジアは、当時はロシアとは全く関係のない独立国でした。今ももちろんそうです。現在は、グルジアへの侵攻が高じて、ウクライナ、クリミア半島の侵略にまで平気で乗り出してきています。

 したがって、2016年はBrexitが起こって大変だったとか、トランプ大統領が出てきて世界が荒れるだろうとか、今後はそういったレベルでは済まないでしょう。もっと大きな地殻変動が起きているのです。グローバルのプレートが移動しているという、こうした発想で少なくとも補助線を引き、物事を見ないといけません。そうすれば、今起きている北朝鮮危機や米中の問題についても、さまざまなことが見えてくるでしょう。


●現在は世界秩序の大移行期にある


 おそらく現在は、今後、長ければ20年は続くであろう、大きな覇権の過渡期にあります。世界秩序の大移行期です。そうした移行期は、早ければ2008年ごろから始まり、2025年ぐらいまでは続くのではないかと、欧米の専門家は見ています。日本では、長期の予測はあまり行われませんが、欧米では、そうした長期予測をめぐる議論が精力的になされています。

 そうした欧米の専門家と話をすれば、私の考えるタイムフレームと彼らの考えるものが、どの程度同じで、どの程度異なるのか、という議論になります。そういうわけで、私はひまを見ては欧米に出掛けたり、メールのやりとりをするようにしています。今は、こうした長期的な視点が非常に重要です。おそらく2020年代の後半になれば、アメリカ一極集中で全部事を済ませ、世界が何とか落ち着いて秩序を保っていた時代は、もうすでにはるか昔の懐かしい話だった、ということがはっきりとするでしょう。その頃になれば、日本人でもそのことに気付かざるをえないでしょう。

 しかし、日本のサバイバルということを考えると、今後10数年後にやっと気が付いたのでは、遅過ぎます。今でも私に言わせれば、遅過ぎるぐらいです。10年前から、そんなことは分かっていたはずだろうと思います。世界の大きなプレートの大変動が起きたからこそ、EUががたついたのだし、イギリスががまんできずに離脱しようとしています。したがって、これは非常に必然的なことで、後戻りすることはないでしょう。


●一極主義のアメリカから孤立主義のアメリカへ


 トランプ政権についても、同じことが言えます。「一極主義のアメリカから孤立主義...
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