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弱者への思いやり、格差社会の痛みを忘れなかった人

『未完の敗者 田中角栄』を語る(1)今、なぜ田中角栄なのか

佐高信
評論家
概要・テキスト
『未完の敗者 田中角栄』(佐高信著、光文社)
 
田中角栄は、弱者への思いやり、格差社会の痛みを忘れなかった人である。そう評するのは、今こそ田中角栄を学び直す必要があると『未完の敗者 田中角栄』を著した佐高信氏。今、なぜ田中角栄なのか。安倍晋三首相との違いを挙げながら、田中角栄という人物の魅力に迫る。(全3話中第1話目)
時間:11:41
収録日:2014/08/26
追加日:2015/02/03
カテゴリー:
≪全文≫

●田中角栄は弱者への思いやり、格差社会の痛みを忘れなかった人


 田中角栄という人について、『未完の敗者』であるというタイトルで本を書いたわけですけれども、現在の安倍晋三首相と田中角栄のどこが違うのか、ちょっと比較するのは田中角栄にかわいそうな感じもします。

 田中角栄という人は、ご承知のように、いわゆる大学には行っていません。世間という大学を出た人です。ただ、世間という大学を出ても、それを踏み台にして出ていく太閤秀吉型の人と、そうではなくて、弱者に対する思いやりを終生失わない人もいるのです。田中角栄という人はいろいろなことを言われても、私はやはり弱者への思いやり、そして、格差社会の痛みというものを忘れなかった人だと思います。

 政治家の役割とは、端的に言えば、格差を少なくするというか、できればなくすことと、戦争をしないことだと思うのです。その二つについて、安倍晋三と田中角栄は全く対照的であると思います。


●田中角栄は敵も認められる幅広さを持っていた


 これまで本メディアでお話ししてきた自民党の主流派の流れというのは、吉田茂、池田勇人と、そのような流れをたどる、いわば保守本流で、田中角栄まで含めて、ハト派でした。

 一方、岸信介、中曽根康弘、あるいは、小泉純一郎というのは、保守傍流だったのですが、そのタカ派の清和会の流れが全面に出てきてしまって、安倍晋三のような、ちょっと首相としてはいかがかと思われる人まで、その流れの中で出てきてしまったということだと思います。

 田中角栄の魅力というのは、いろいろありますけれども、人間の幅ということと同時に、田中角栄から見て、敵味方といいますか、敵も敵として存在している、生きているということを認められる幅広さを持っていたというところです。

 それは、自ら、いわば成り上がっていく過程で、社会の底辺の人たちを見たということかもしれませんけれども、そういうところが、いわば安倍晋三と全く対照的で、私は、極端に言えば、付属の小学校、中学校と、付属のそういうところを上がってきた人は、やはり政治家になってはいけないのではないか、まして、首相になってはいけないのではないかと思うのです。つまり、貧乏や格差というものを実体験できないのです。頭の中ではそれが分かるかもしれないけれども、実体験として、A君の貧乏、B君の痛み、とい...
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