『小学』の説くところ
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『小学』とは…朱子が子ども向けに編纂した人生教育の書
『小学』の説くところ
田口佳史(東洋思想研究家)
寺子屋のテキストに『小学』という書物がある。『小学』は、朱子が四書の編纂を進めながら、子どもに読んでもらうため、四書を中心に重要な部分を輯編したものである。しかし、そこには人生の教育があると老荘思想研究者・田口佳史氏は評価する。
時間:13分55秒
収録日:2015年1月13日
追加日:2015年8月13日
≪全文≫

●児童向けに編纂した『小学』がテキスト


 それでは、まず寺子屋で何を教えたのか。これは、これまでにも言っているように、自由なかたちで教育が行われていましたから、それぞれの家風、あるいは、藩であれば、藩の方針でかなり違うわけですが、大体のところで教えられたテキストに、『小学』というものがあります。

 これは、朱子(朱熹)が編纂した書物です。朱子は、ばらばらにあった儒教の教えを四つの書(四書)として編纂、確立したわけでありますが、それをやりながら、子どもはとても大切なもので、子どもに読んでもらえるようなものにしなければいけないということで、中国古典の中から四書を中心に、幼児、児童に対して、ここは重要だと思えるところをピックアップし、『小学』としてまとめたのです。


●清掃で整理整頓、清々しさ、愛着心を体得


 『小学』の巻頭に「小学書題」があります。「小学書題」は、朱子がなぜ自分は『小学』を編纂したのか、その意図が書いてあるのですが、冒頭に「古の小学、人を教ふるに、灑掃(さいさう)、應對、進退の節、親を愛し長を敬し師を隆(たっと)び友に親しむの道を以てす」とあります。これこそが、要するに基本なのだと言って、まず「灑掃、應對(応対)、進退の節」というものを挙げるのです。

 「灑掃」とは、清掃のことです。したがって、まず幼年期、徹底して訓練させなければいけないのは清掃だと、ここで言っているわけです。なぜ清掃が重要なのかというと、まず第一が整理整頓能力を身に付けるためです。いろいろな問題が襲ってくるのがリーダーですから、これを整理整頓して片付けることが基本となります。二番目が、清々しさを体得するためです。これも、要するに、清々しいところは全部聖なるところで、聖なるところと俗なるところをしっかりと見極める、そういう視点をつくるということです。三番目は、物事に愛着を持たせるということです。愛着心があるかどうかということは、人間としての忍耐や粘りにも非常に大きな関わりを持ちます。よって、当事者意識、あるいは、愛着心を持たせるためには、拭き掃除や、物を磨かせるという清掃が非常にいいわけです。


●応対は、挨拶・返事から書き写す訓練まで


 二つ目の「応対」は、実は全ての人間が行っていることで、私も皆さんに応対をしているわけです。仕事、会社は何をしているのかというと、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化
日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化
田口佳史
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…秀吉に怒られなかったのは秀長と家康だけ
黒田基樹
「進化」への誤解…本当は何か?(3)進化学説史と近代の生物実験
ラマルクの進化論…使えば器官が発達し、それが子に伝わる
長谷川眞理子
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
新しい循環文明への道(2)都市鉱山のデジタルツイン
都市鉱山のデジタルツイン…金やレアアースの宝庫がわが国に
小宮山宏
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二