編集長が語る!講義の見どころ
伝染病予防法廃止から見えてくる新型コロナウイルス問題(テンミニッツTVメルマガ)

2020/03/11

皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

本日は、「新型コロナウイルス対応」について重要な視点をご提起いただいた片山杜秀先生(慶應義塾大学教授)の講義、そして、3月11日ということで「釜石の子どもたちにみる防災教育」についての片田敏孝先生(東京大学大学院情報学環特任教授)の講義をご紹介します。

(1)伝染病予防法の廃止と新型コロナウイルス

テンミニッツTVでは、新型コロナウイルスの問題を「深掘り」すべく、様々な先生方にご講義をお願いしています。

今回ご紹介したいのは片山杜秀先生の講義です。
今回のウイルス禍への厚生労働省の対応はあまりに手ぬるい、という声も聞かれます。しかし、実はそうなってしまった理由として、「伝染病予防法」を廃止したことがある、と片山先生は喝破されます。

◆片山杜秀:新型コロナウイルス問題を日本の疫病対策の歴史から考える(全1話)
伝染病予防法廃止から見えてくる新型コロナウイルス問題
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3227&referer=push_mm_rcm1

人類の歴史は、まさに疫病との戦いでした。ヨーロッパでもペストなど大量死を伴う疫病の流行があり、これに対抗するために各国は、警察権力を用いてでも強制的な隔離を行って疫病を封じ込める体制を構築していきました。

明治になってから、西洋諸国の仕組みを学んだ日本は、内務省に防疫機能を集め、明治30年(1897年)に「伝染病予防法」を制定します。この法律では、地方長官が都市封鎖をしたり、交通を止めたり、集会を「禁止」したりすることができました。

しかし、伝染病予防法は、1998年に感染症法が制定されたことで、その翌年に廃止されます。感染症法は、国家の強権を忌避し、個人のプライバシーや自由を最大限に尊重する精神でつくられました。

他の文明国よりも先駆的かつラディカルな法律をつくった日本。しかし、本当にそれで良かったのか……? 片山杜秀先生は本講義で、そう問題提起されます。

なぜ総理が要請することしかできなかったのか。危機を克服する体制とはいかなるものか。国家の役割とは何なのか。現下の日本政府の対応の是非を考えるにあたり、大きなヒントとなる講義です。ぜひご覧ください。

なお、テンミニッツTVでは、明日(3月12日)から長谷川眞理子先生の「ウイルスの話」の講義シリーズも配信予定です。ウイルスとは、果たしていかなる存在なのかがわかる、秀逸な講義です。こちらもぜひご受講くださいませ。


(2)「釜石の子どもたちにみる防災教育」

東日本大震災から9年が経ちました。あのような悲劇を少しでもくい止めるために何をすべきなのか、私たちは絶えず思いを新たにすべきでしょう。

テンミニッツTVでは、大震災の8年前から釜石市で防災教育に携わっていらっしゃった片田敏孝先生の講義を配信しています。

◆片田敏孝:釜石の子どもたちにみる防災教育(全4話)
(1)しっかり逃げる社会
東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2682&referer=push_mm_rcm3

釜石市は津波の大きな被害を受けましたが、市内の小中学生は、ほぼ全員が津波の難を逃れることができました。これは「奇跡」と呼ばれましたが、片田先生は「奇跡ではない」とおっしゃいます。事前の防災教育によって子供たちが対応力を身につけていたので、そのような成果となったというのです。

長い歴史のなかで何度も津波に襲われてきた釜石には、様々な「記念碑」が残されていました。片田先生は、子供たちをその碑の前に連れて行き、先人が体験した津波の被害に思いを馳せさせることで、危機感を醸成していきました。

さらに片田先生が伝えたのが「津波てんでんこ」の教えです。この言葉が意味することとは何か、そしてそれを聞いていた子どもたちはいかに行動したのか……。

ぜひ本講義をご受講いただき、生命を守るために大切なことについて「思いを馳せて」いただければ幸甚です。


(※アドレス再掲)

◆片山杜秀:新型コロナウイルス問題を日本の疫病対策の歴史から考える
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3227&referer=push_mm_rcm2

◆片田敏孝先生:釜石の子どもたちにみる防災教育(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2682&referer=push_mm_rcm4


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編集部からのお知らせ
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編集部の伊藤です。
新型コロナウイルス問題を受けて弊社でも感染被害抑止と従業員の健康と安全確保のため、時差通勤・在宅勤務を行わせていただくことといたしました。
これに伴い、しばらくの間カスタマーサポートの電話受付を休止させていただきます。
メールでの受付時間に変更はございませんが、通常より返信までお時間をいただく場合がございます。
ご不便をおかけして申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
みなさまもくれぐれもお体ご自愛ください。


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今週の人気講義
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新型コロナウイルスに関する中国政府の対応の問題点
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
小原雅博(東京大学大学院 法学政治学研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3216&referer=push_mm_rank

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童門冬二(作家)
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米中対立は「トゥキディデスの罠」に陥ってしまうのか
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3221&referer=push_mm_rank

織田信長のシーレーン構想を明智光秀が理解していたら
中村彰彦(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3225&referer=push_mm_rank

「佐久間象山に学ぶ」本を書くときに抱いた日本の危機感
田口佳史(東洋思想研究者)
神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3226&referer=push_mm_rank


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レッツトライ! 10秒クイズ
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明治16年に始まった大阪造幣局の花見行事「桜の通り抜け」。
残念ながら今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催中止となりましたが、この行事を発案したのは「長州ファイブ」の誰?
答えは下の講義をご覧ください!
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=62&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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編集部の加藤です。
先日、長谷川眞理子先生の講義収録のため、総合研究大学院大学におじゃましました。
大学は神奈川県三浦郡葉山町にあり、逗子駅からバスかタクシーで丘の上にある大学に向かうのですが、その日は晴天に恵まれたので、丘の途中で見えた富士山はまさに絶景。描かれた場所は違うと思いますが、まるで北斎画に出てくる富士山のようでした。
そういえば、作家の中村彰彦先生が「江戸時代、必ずご町内に富士山があった」とおっしゃっていました。それくらい富士山というのは日本人にとって貴重な存在だったということですね。東京ではなかなか見られませんので、有難い思いでいっぱいでした。

なお、その時収録した講義は編集長が紹介している「ウイルスの話」です。明日(3月12日)から配信予定なので、ぜひご視聴ください。

<長谷川眞理子先生の講義はこちら>
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=102&referer=push_mm_edt

<中村彰彦先生の講義はこちら>
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=237&referer=push_mm_edt