編集長が語る!講義の見どころ
G7サミット閉幕…今後バイデン政権はどう動くか【テンミニッツTV】
2021/06/15
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
イギリスのコーンウォールで開かれていた先進7カ国首脳会議(G7)が、6月13日に閉幕しました。共同宣言には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」「新疆ウイグルや香港の人権尊重を要求」「東・南シナ海での現状変更の試みに反対」「一帯一路への対抗」「サプライチェーンのリスクへの対処」「温暖化ガスへの対応を約束」「東京五輪の安全・安心な形での開催」などが記されました。さまざまなニュースでも述べられているように、総じて、中国への懸念と対抗が前面に強く押し出された内容となっています。
アメリカでバイデン政権が誕生した当初、日本のメディアでは一部、「バイデン政権の誕生で、対中国政策が宥和的になるのではないか」という声も上がりましたが、現段階では、まったく違った様相を呈しています。はたして、これからバイデン政権は何をめざし、どう動くのか。本日は、そのことについて、東秀敏先生(米国安全保障企画研究員)に解説いただいた講義をご紹介します。
◆東秀敏:バイデン・ドクトリンの可能性(全3話)
(1)バイデン外交・安保のビジョン
バイデン政権のビジョンは「民主主義を取り戻した米国」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4039&referer=push_mm_rcm1
東先生は、バイデン政権はまず米国内における民主主義の復権を標榜し、国際政治においても米主導の民主主義世界連合でもっと中国とロシアを分断し、中国の封じ込めを図る、と読みます。
その根拠となるのが、就任演説です。バイデン大統領は就任演説で「democracy」という言葉を11回も語りました。「Republic」は1回、「God」は4回です。一方、トランプ大統領は、「democracy」も「Republic」も0回。「God」を4回用いています。この違いでメッセージは明確だというのです。
東先生は、建国当時のアメリカが「民主主義(democracy)」を掲げつつも、それが衆愚政治に堕すことへの懸念を強く持ち、むしろ「共和政(Republic)」を理想としていたと指摘されます。それがだんだん、進歩主義の流れとともに、米国内左派の大衆統治・動員論理として「民主主義」が強調されるようになっていくのです。このご指摘はとても重要です。バイデン大統領は、やはりその流れに属しているということです。
かくして、「トランプ大統領流の取引主義外交」から、「バイデン大統領流の価値観外交」へと転換していくことになります。バイデン大統領は、「ジャクソン流明白な天命、ウィルソン流国際協調主義、トルーマン流反共主義を継承しつつ、その一方で、1960年代以降の文化マルクス主義的な価値観にも大きな影響を受ける」。これが東先生のお見立てです。
それぞれが、どのような位置づけかは、ぜひ講義をご覧ください。
そのような「価値観外交」を唱導し、「米主導の民主主義世界連合でもって中露分断し、中国を封じ込め」ていくことをめざすバイデン政権。東先生は、バイデン大統領は、「トルーマン・ドクトリン」のように、「バイデン・ドクトリン」を打ち出すのではないかとおっしゃいます。
その内容として、どのようなことが考えられるのでしょうか。また、バイデン政権は実際にはどのように動いていくのでしょうか。その点についても、講義をご覧いただければと存じますが、「バイデン・ドクトリン(?)」は敵の存在が不明瞭、限定的介入主義なので「吠えるだけの外交」に終わり挫折するのではないか、という見通しは、日本としては、十分に気をつけておくべき視点といえましょう。
バイデン大統領の系譜や、それに基づく今後の可能性を整理して理解することができる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆東秀敏:バイデン・ドクトリンの可能性(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4039&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「人間はいっぺんに難しいことをたくさん考えられない」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2068&referer=push_mm_hitokoto
人間の「癖」に着目した行動経済学の面白さ
伊藤元重(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)
人間の癖がどういう特徴を持っているかを単純に言うと、「人間はいっぺんに難しいことをたくさん考えられない」ということです。
これはカーネマン教授がよくいうことですが、人間には非常にゆっくり考える部分とぱっぱと判断する部分があるといいます。例えば「753×251を計算しなさい」と言われると、大変ながらもできます。ただし、これをやると脳がフル回転して、他のことができなくなります。けれども、前の信号が赤になったときにブレーキを踏んで車を止めたり、向こうからボールが飛んできたときに慌ててよけるなどの動作は、ほとんど反射的に行うわけです。
非常に厄介なのが、自動車を運転していて、横の人とおしゃべりしているときです。おしゃべり自体に問題はまったくないのですが、カーブが急にきつくなったりしたときにおしゃべりを続けていると、「ちょっと待ってくれ」と言うかもしれません。ましてや運転している人に「25×35は」の計算をさせるのは、運転をおかしくさせる原因にもなります。
人間の行動の中には、どうも合理的に計算してやる部分もありつつ、直感的に判断して決める部分もあって、そこがどうなっているかをきちんと見極めることが必要だというのが、行動経済学系の議論になるでしょう。
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今週の人気講義
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AIに本は書けるのか~AIと人間の違いを考える
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4007&referer=push_mm_rank
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1758&referer=push_mm_rank
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津崎良典(筑波大学人文社会系准教授)
五十嵐沙千子(筑波大学人文社会科学研究科准教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3992&referer=push_mm_rank
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4013&referer=push_mm_rank
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編集後記
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「ストーリー(物語)が欠如している」
そう語るのはシリーズ講義<「ものがたり」のあるコンプライアンス>の講師・國廣正先生です。
コンプライアンスの話なのに、ストーリーって何?いったい何の話なんだろう?と思われた方、ぜひ國廣先生の講義をご視聴ください。物語の大事さが語られていますので。
なぜ企業はコンプライアンスの本質から外れてしまうのか?
國廣正(弁護士・国広総合法律事務所パートナー)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1886&referer=push_mm_edt
皆さま、いきなりいつもと違う編集後記ですみません。編集部の加藤です。
実は、上で挙げた國廣先生の話は、先週金曜日に配信開始となった特集<「日本の失敗」の本質~負の経験を生かすために~>でラインナップされた講義です。
特集「日本の失敗」の本質~負の経験を生かすために~
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=118&referer=push_mm_edt
特集でもランキングでもなんでもそうですが、ラインナップとしていくつか並べると、どうしても下のほうには目がいきづらくなります。
でも、そんなところにこそ興味深い講義、学びの豊富な話がつまっていたりします。たとえば、帰宅時などに寄り道すると意外な発見があったりすることに似ているかもしれません。
そんな隠れた学びのツボを発見するためにも、ぜひテンミニッツTVの「寄り道」を楽しんでみてはいかがでしょう。
ということで、今回のメルマガ、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
3日後の15日金曜日にまたお会いしましょう。
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