編集長が語る!講義の見どころ
知っていると嬉しい「日本の美」の真髄(特集&佐藤康宏)【テンミニッツTV】
2021/07/30
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
オリンピックの開会式はご覧になりましたか? とにかく、誇らしげに嬉しげに入場してくる各国の選手たちの表情に胸を打たれましたが、いくつかの国のユニフォームに、独特の「日本の美」らしさがあしらわれているのが印象的でした。また開会式や閉会式のアトラクションも、必然的に「日本の美」とは何かを考えさせる機会でもあります。
しかし、そもそも「日本の美」とはいかなるものなのでしょうか。日頃、自然と身近に接しているために、なかなか自分自身のなかで言葉にするのが難しいかもしれません。ぜひ、この機会に「日本の美」の真髄について学んで見てはいかがでしょうか。
■本日開始の特集:知っていると嬉しい「日本美術の真髄」
彫刻、絵画、工芸…長い歴史を持つ日本美術には、日本人の精神性や独自の技法が盛り込まれています。その特長や本質とは、どのようなものなのでしょうか? 今回の特集では、日本美術を語るうえでのポイントや、海外美術との比較を通して、日本美術の魅力の真髄に迫ります。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=125&referer=push_mm_feat
佐藤康宏:日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?
川嶋渉:日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
松田次泰:鎌倉時代の刀は「再現できなかった」から価値があった
大久保喬樹:『茶の本』の著者・岡倉天心は何をした人物か?
■講義のみどころ:日本美術の特徴から見えてくる「日本らしさ」とは?(佐藤康宏先生)
美術に接するとき、鑑賞のポイントを教えてもらうと、がらりと見え方が変わってくる。そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。本日は、日本美術の特徴について、佐藤康宏先生(東京大学名誉教授)に語っていただいた講義を紹介いたします。
この講義は、美術史専攻のヨーロッパ人大学院生向けに行った講演を元にしたものです。テンミニッツTVの講義は、日本語でお話しいただいていますが、もともとが欧州向けだけに、初学者、あるいは外国の方にも理解しやすい、お奨めの内容です。また、講義のなかでは、絵をふんだんに映し出してご解説いただいています。まさに動画の特性を最大限活かした講義でもあります。
◆佐藤康宏:日本美術論~境界の不在、枠の存在
(1)具象と抽象の共存
日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2024&referer=push_mm_rcm1
講義の冒頭で佐藤先生は「日本美術の特質を論じるのは、研究者にとって1つの罠」だとおっしゃいます。なぜか。
それは、「これが日本美術の特徴です」と紹介すると、そのとき必ずほかの大事なものを投げ捨ててしまうことになるからです。たとえば、これまで日本美術の特徴として「平面的であること、装飾的、感傷的、日常的であること、遊戯性や簡素さ」などが挙げられてきたといいますが、それを指摘した途端に、そうではない作品がさまざまに浮かび上がってきます。
そうであることを前提にしつつ、「私たちにできるのは、日本美術のどういう傾向を面白いと考えるか、具体例に即して検証し続けること」だと佐藤先生はおっしゃるのです。
この佐藤先生のご指摘は、まことに公正なものといえましょう。他国の例をとって、たとえば「ドイツ音楽はこういうものだ」「フランス印象派の絵画のあり方は」などという話をするにしても、すべての作品を包含する特徴をピックアップするのは、基本的には不可能なはずです。その「不可能さ」を前提としたうえで、どのような部分を切り出すかに、見巧者(みごうしゃ)の見巧者たるゆえんがあるといえましょう。
では、佐藤先生がピックアップした特徴とはどのようなものでしょうか。この講義では、佐藤先生は2つの観点からご紹介くださいます。
1つは、具象的なものと抽象的なものとの間に境目がないこと。
もう1つは、画面の枠で対象を切り取る効果について意識的であること。
です。それぞれどういうことか。
1つめの「具象的なものと抽象的なものとの間に境目がないこと」とは、西洋絵画との比較において、西洋絵画の場合は、具象的に描く作品は細部にわたるまでどこまでも具象的に描くケースが多いけれども、日本の作品の場合、1つの作品のなかに具象と抽象がみごとに融合している場合が多い、ということです。
そのことを佐藤先生は、日本の仏像の表現(部分部分はとても写実的に彫り上げているが、一方で、とても抽象的に表現している部分も併存している)や、尾形光琳の「紅白梅図」などを具体的に示しながら紹介くださいます。その解釈が、とても興味深く胸に入ってきます。
また、2つめの「画面の枠で対象を切り取る効果」は、まさにフレームで構図を大胆に切り取る手法。浮世絵のみごとな構図が、19世紀のジャポニズムの流行とともに、欧米の絵画に大きな影響を与えたことは有名な話です。
本講義で佐藤先生は、歌川廣重や、12世紀の絵巻物である「信貴山縁起」、俵屋宗達の「風神雷神図」、喜多川歌麿の美人画「北国五色墨 てっぽう」、雪舟の「天橋立図」などを例示しながら教えてくださいます。
実際にどのようなものかは、まさに百聞は一見にしかず。ぜひ講義本編をご覧ください。工夫を凝らした日本美術の表現方法の数々に、舌を巻くこと間違いありません。
これらが世界の美術史のなかで、どのように位置づけられるのかについても、佐藤先生は講義中で数々の作品を挙げてお話しくださいます。さまざまな美術を鑑賞しながら、どんどんと連想の翼を広げられる講義です。
(※アドレス再掲)
◆特集:知っていると嬉しい「日本美術の真髄」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=125&referer=push_mm_feat
◆佐藤康宏:日本美術論~境界の不在、枠の存在(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2024&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、「人新世」についての問題です。ではレッツビギン。
人間は普通に太陽からのエネルギーに自らのエネルギー(石炭・石油・原子力等)を持ち出して、自然の循環を壊す勢いでいろいろなものをいろいろなところで絶えず排出してきました。これが人間活動の大きな負の面で、それをどういう形で表そうかということで、「 」「エコロジカル・フットプリント」「人新世」などの言い方が生まれてきたわけです。
さて「 」には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4059&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
本日は7月最後のメルマガ配信日ですので、今月7月中によく視聴されたシリーズ講義を3つご紹介いたします。
◆島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
明治維新から学ぶもの~改革への道 (全22話)
(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新の事実を知ることに、どんな意味があるのか?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2587&referer=push_mm_edt
◆上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授/奈良大学 名誉教授)
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人 (全6話予定)※現在3話目まで配信中
(1)日本人の憧れ
聖徳太子の1400回忌、「実在しなかった」説の真相に迫る
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4095&referer=push_mm_edt
◆鎌田東二(京都大学名誉教授/上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授)
世界神話の中の古事記・日本書紀 (全9話)
(1)人間の位置づけ
世界神話の中での日本神話の特徴は「人間の格づけ」にある
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3943&referer=push_mm_edt
いずれも日本に関連する講義ということで、本日編集長が紹介しました特集も含め、この機会に日本の歴史、文化、芸術について学ぶ、あるいは学び直すきっかけにしていただければ幸いです。
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