編集長が語る!講義の見どころ
人新世とは?ビックヒストリーとは?(特集&長谷川眞理子)【テンミニッツTV】
2021/08/06
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
「人新世(Anthropocene)」という言葉を、よく見聞きするようになりました。これは「じんしんせい」「ひとしんせい」、あるいはアルファベットからの発音で「アントロポシーン」「アントロポセン」と呼ばれます。ベストセラー書籍のタイトルにも使われたりしていますが、その意味を正確に理解されている方が、どれほどいらっしゃるでしょうか?
また、「ビッグヒストリー」という言葉を耳にすることも多くなってきました。辞書的にいえば、これは「ビッグバンから現在までの歴史を研究する新しい学問分野」ということになります。
本日は、このように大きな視点からお話しいただいた講義を集めた特集を紹介いたします。ぜひ夏の熱暑のなか、悠久の時の流れに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
■本日開始の特集:ビッグヒストリー的視点で人類を考える
いま世界中から注目を集める「人新世」や「ビッグヒストリー」の議論。このような視点を持つテンミニッツTVの講義から、過去を理解する知恵を学び、未来を予想する力を養いましょう!
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=126&referer=push_mm_feat
長谷川眞理子:なぜ人新世が提唱されたのか、地球と人類の歴史から考える
長谷川眞理子:『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』に学ぶBIG History
浅島誠:地球上におけるヒトの歴史と生命科学の発展
高橋一生:不思議なことに人類の歴史は千年ごとに大変化を見せている
■講義のみどころ:「人新世」とは何か~人類の進化と負の痕跡(長谷川眞理子先生)
特集のなかから、長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)に「人新世」について解説いただいた講義を紹介いたします。もちろん長谷川先生の講義ですから、単なる用語解説だけでは終わりません。この言葉が提起している問題も、非常に明確に読み解いていただいています。
◆長谷川眞理子:人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(全3話)
(1)地球史と人類の進化史
なぜ人新世が提唱されたのか、地球と人類の歴史から考える
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4057&referer=push_mm_rcm1
まず、人新世とは何か。辞書風に解説すると、「地質時代の区分の1つ」ということになります。皆さまも、古生代の「カンブリア紀」「デボン紀」、中生代の「ジュラ紀」「白亜紀」、新生代の「古第3紀」「新第3紀」「第4紀」などといった名称を聞いたことがおありだと思います。このような時代区分の1つとして提唱されているのが「人新世」なのです。
この地質年代は、地球誕生から大きく分けると、「冥王代」「太古代」「原生代」「顕生代」と分かれます。「顕生代」というのは、生物がたくさん登場してきた時代です。この「顕生代」が「古生代」「中生代」「新生代」に分かれ、さらにそれぞれが、「カンブリア紀」「デボン紀」「ジュラ紀」「白亜紀」などに分かれていくわけですが……それについては、長谷川先生が本講義のなかで、図を示しながら、わかりやすくご説明くださっているので、ぜひそちらをご覧くださいませ。
現在は「新生代」の「第4紀」にあたります。これまで第4紀は「更新世(Pleistocene)」と「完新世(Holocene)」の2つに分けられていました。「完新世」は最後の氷期が終わった1万1700年から現在までを指します。ここに新たに「人新世」を設けようというのが、最近の議論なのです。
最初にこのような概念を唱えはじめたのは、オゾンホールの研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したオランダの大気化学者・パウル・クルッツェンや、アメリカの生態学者・ユージーン・ストーマーでした。主張されはじめたのは、西暦2000年頃のことです。彼らの主張の大筋を、長谷川先生は次のように紹介くださいます。
《人類というのは確かに変な生き物で、文明というものをつくりだし、自分でエネルギーをどんどん使って、地球表面を著しく大改変するようになっています。人類がこのような活動をするようになる前と後では、地球のあり方が激変しただろう。そこを「人新世」にしようという提案には多くの人が賛成するわけです》
人新世の開始をいつにするかについては、さまざまな意見があるといいます。人類が本格的に農耕と牧畜を始めた1万年から1万2000年ぐらい前か。あるいは、世界中が非常に工業化した産業社会になった1960年代以降か。または、グレート・アクセラレーション(great acceleration)と呼ばれるように、さまざまな変化が急激になった1945年以降か……。
このように、人新世の解説を行なってくださったあとで、長谷川先生は、人類の進化史と文明の発展についてご解説をくださいます。そこで示されるデータは、すべての人の心胆を寒からしめるものといえましょう。
地中から石炭や石油などのエネルギー源を取り出して大規模に使うことを覚えた人類は、あまりに急速に、さまざまな物事を変えてしまいました。人口も、エネルギー消費量も、地球全体のGDPも、考えられないペースで急騰しています。それによって人類は、自分たちが住んでいる「生物圏(biosphere)」や「大気圏(atmosphere)」を大変化させてしまっているのです。
長谷川先生は、地球にやってくるエネルギーの源は「太陽エネルギー」しかないことを強調されます。地球までやってくる太陽エネルギーのうち、30パーセントは反射されて地球に届かない。熱になってしまうのが46パーセント。蒸発や雨を起こすのが23パーセント、風や波や流れを起こしているのが0.2パーセント。植物に取り込まれて光合成をするために、植物のからだに使われている太陽エネルギーは0.8パーセント。このエネルギー配分が、エコシステムの絶妙なバランスや循環を形成していたのです。
ところが人類は、地中に埋もれていた石油や石炭を掘り出して使いはじめてしまった。石油や石炭は、大昔の植物やプランクトンなどの「化石」です。いわば化石として地中に埋もれていた「過去の太陽エネルギー」を大量に使うことで、エコシステムのバランスは崩れてしまいます……。
このような説明については、ぜひ長谷川先生の本講義をご視聴ください。現在、人類が直面している問題が、パッと丸わかりになります。これから日本が、そして人類が進む道を考えるうえで、必見の講義です。
(※アドレス再掲)
◆特集:ビッグヒストリー的視点で人類を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=126&referer=push_mm_feat
◆長谷川眞理子:人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4057&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、『古事記』のなかのお話についての問題です。ではレッツビギン。
日本の歌をも生み出したのが「 」ですし、「 」が原因となって祭が行われました。
「 」自らが祭を行ったわけではないけれど、「 」の起こしたことによって祭が編み出されたことになるので、「 」なしに日本の祭も歌もなかったのです。
さて「 」には同じ名前が入ります。何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3947&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
本日(8月6日)は広島に原子爆弾が投下された日です。今回は以下の講義を取り上げたいと思います。
広島・長崎への原爆投下の目的は何だったのか?
敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(7)原爆投下の真の目的
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1813&referer=push_mm_edt
「爆撃投下は本土決戦を前提にすると、日米合わせての死傷者をはじめとする莫大な被害を最小にするための必要悪だった」ということがアメリカで言われているのですが、本当でしょうか。
島田先生は講義のなかでこう語り、原爆投下の真の目的へと話が進んでいきます。
これはとても大事なお話です。すでにご視聴いただいている方も少なくないと思いますが、ぜひこの機会にもう一度ご視聴ください。
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