編集長が語る!講義の見どころ
パラリンピックがもっと楽しくなる義足講義(臼井二美男氏)【テンミニッツTV】

2021/08/24

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
いよいよ本日から、東京2020パラリンピック競技大会が開催されます。現在、コロナ禍ということもあり、オリンピックも含めて開催をめぐり、さまざまな意見が出されました。しかし先般の東京オリンピックでは、やはり各国の選手の皆さんの活躍に、とても勇気づけられました。また、世界からこれほどの選手が集結していることに、大きな感動を覚えました。オリンピック、パラリンピックに世界一流の選手の方々が集結するのは、当たり前といえば当たり前ですが、「当たり前ではないパンデミック」の状況にあるだけに、その凄さ、ありがたさが、いっそう胸に染みたのかもしれません。

本日は、パラリンピック開幕にちなみまして、義足や義手などの「義肢装具」の講義を紹介したいと思います。義肢装具士であり、切断者スポーツクラブ「スタートラインTokyo」の創設者でいらっしゃる臼井二美男さんのお話です。5年前の講義ですので、義肢の技術などで変わっている部分もあろうかと思いますが、しかし、義肢についての大切なこと、われわれが知らない知識が満載の講義です。

この講義を見るか見ないかで、パラリンピックの楽しみも大いに変わるのではないかと思います。

◆臼井二美男:義肢装具士の世界と義足作り(全2話)
(1)義肢とは何か?
普通の足の形で速く走れる義足を目指して!
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1401&referer=push_mm_rcm1

◆臼井二美男:パラリンピックでの衝撃と「スタートラインTokyo」の挑戦(全1話)
パラリンピック選手の活躍を義足の技術で最大限に引き出す
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1409&referer=push_mm_rcm3

臼井さんは、さまざまな義足の実物を示しつつ、とてもわかりやすくお話しくださいます。たとえば、残された足と義足とをつなぐ「ソケット」。ここが義肢装具士にとって「大事」な部分であり、この技術がしっかりしていないと、「痛くて履けない」「きつくて履けない」あるいは「緩くて抜けてしまう」などといった不適合が出てきてしまうのだといいます。義足をつける人に適合したものをきちんと作り、組み合わせていくことが大切なのです。

もちろん、一人ひとりに合わせます。足がどの部分まで残っているか、筋肉量はどれほどあるか、骨の太さがどのくらいかなどが、個々人によって、まったく違うからです。しかも、義足をはめて少しすると足が痩せてくるので、それも見越して作ります。

そこまでやっても、また、どれほど高価な義足を作っても、つけてすぐは痛くて一歩も歩けないとのこと。そこで大事になってくるのが、義足を制御するための筋力を新たに作るリハビリテーションです。

臼井さんは、《当たり前のことですが、義足作りでは、そういうリハビリテーションがないと、せっかく作ってもしっかり履いて歩けるようになりません。義足だけ作って、「はい、どうぞ」と渡しても歩けないのです》とおっしゃいます。そこで、臼井さんが勤務されている鉄道弘済会義肢装具サポートセンターには理学療法士とリハビリテーション医がいて、必要なリハビリを進めているのです。

パラリンピックで活躍する選手たちは、義足をつけていても、まるで自分の足であるかのように生き生きと躍動されますが、そこに至るまでにどれほどの過程や努力があったことか。そのことが、しみじみ伝わってきます。

臼井さんは、着脱技術の進化や、素材の進化。さらにコンピュータ制御の方向性についても教えてくださいます。それがどのようなものかは、まさに百聞は一見に如かず。ぜひ講義をご覧ください。

また、上掲で紹介したもう1つの講義、《パラリンピックでの衝撃と「スタートラインTokyo」の挑戦》では、臼井さんのこれまでのパラリンピックへの関わり、さらにパラリンピックに臨むうえでの課題についてお話しくださっています。たとえば、つま先の角度や長さなどの細かなセッティングが、いかに大切かというお話……。

もちろん、パラリンピックという世界最高峰の場では、そのような繊細な技術がとても大切であることを、頭ではわかっている方も多いでしょう。しかし、やはり当事者である臼井さんのお話を聞くと、あらためて深い感慨を覚えます。

よく知られているように、「パラリンピック」という愛称が世界的に大いに広まったのは、1964年の東京オリンピックの直後に行なわれた東京大会がきっかけでした。パラリンピックは、人間の可能性の偉大さ、奥深さ、美しさを、生き生きと目に見えるかたちで教えてくれます。本当に素晴らしい大会だと思います。そして、それを支える臼井さんはじめ多くの方々の努力と技術にも、ぜひとも思いを馳せたいものです。大いに応援し、大いに楽しみましょう。

(※アドレス再掲)
◆臼井二美男:義肢装具士の世界と義足作り(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1401&referer=push_mm_rcm2

◆臼井二美男:パラリンピックでの衝撃と「スタートラインTokyo」の挑戦
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1409&referer=push_mm_rcm4


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☆今週のひと言メッセージ
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「ソリューション・ジャーナリズムというのは、批判するのではない」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4110&referer=push_mm_hitokoto

『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹(作家)

今、アメリカでは「ソリューション・ジャーナリズム」という言い方が出てきていますね。つまりそれは、ぼくの目指してきたことなのです。

ソリューション・ジャーナリズムというのは、批判するのではない。批判はしてもいいけど、それだけでは終わらないで「対案」をつくっていく。あるいは批判でも、「ここがおかしいから、ここを変えたらどうなるか」というところまで踏み込むのが、ソリューション・ジャーナリズムです。


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今週の人気講義
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地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子(東京大学大気海洋研究所教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4008&referer=push_mm_rank

現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4121&referer=push_mm_rank

性の決定に働く「SRY遺伝子」とは何か
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4131&referer=push_mm_rank

大谷翔平と石原裕次郎に見る「人間的魅力」の本質とは?
本村凌二(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4137&referer=push_mm_rank

『論語』に学ぶ、健全な社会をつくるための2つのポイント
田口佳史(東洋思想研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4105&referer=push_mm_rank


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて本日は、昨日(8/23)より配信開始となった黒川伊保子先生(株式会社感性リサーチ 代表取締役社長/人工知能研究者/随筆家)のシリーズ講義<黒川伊保子先生に学ぶ「子育てのトリセツ」>を紹介したいと思います。

◆黒川伊保子:黒川伊保子先生に学ぶ「子育てのトリセツ」(全7話予定)
(1)男性脳と女性脳はどこが違うのか
男性脳と女性脳の違いから分かる「子育てのトリセツ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4138&referer=push_mm_edt

黒川先生はテレビをはじめいろいろなメディアで活躍されているのでご存じの方も多いと思います。
『妻のトリセツ』をはじめ「トリセツ」シリーズはどれも大変人気ですが、今回のシリーズ講義ではそのなかから『息子のトリセツ』『娘のトリセツ』を中心に、「子育てのトリセツ」について話を伺っています。

2話目以降も、男の子と女の子それぞれの子育ての違い、子育てにおけるお父さんの役割、また心の対話と問題解決の対話など、非常に興味深いお話をいろいろとお聞きすることができました。今後も毎週月曜日配信予定です。ぜひ続けてご視聴ください。