編集長が語る!講義の見どころ
ナノテクノロジーの可能性とは?(松本洋一郎先生ほか)【テンミニッツTV】
2021/10/19
いつもありがとうございます。川上です。
最新の科学技術にキャッチアップするのは、なかなか大変なことです。とりわけ、それがこれまでの常識を軽々と覆すようなものであれば、なおさらです。
本日は、ナノテクノロジーについての、松本洋一郎先生はじめ4人の先生方の講座を紹介いたします。松本洋一郎先生は東京大学名誉教授で、収録時は東京理科大学の学長でいらっしゃいました。山本貴博先生、由井宏治先生、元祐昌廣先生は、それぞれ東京理科大学教授でいらっしゃいます。
うかがえばうかがうほど、凄い技術です。はたして、どのようなものなのでしょうか。
◆松本洋一郎/山本貴博/由井宏治/元祐昌廣:教養としてのナノテクノロジー(全10話)
(1)科学における教養とは何か<前編>
人類に課せられたナノテクノロジーの使命と教養の重要性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4111&referer=push_mm_rcm1
本講座では、まず最初(第1~3話)に4人の先生方による座談会で、「ナノテクノロジーとは、どのようなもので、どのような意義があるのか」について、とてもわかりやすくお話しいただいています。そしてその後に、各先生方のご専門領域について講義をいただいています。
「ナノテクノロジーとは何か」について入門的に知りたい場合は、最初の3話だけご覧いただくのも良いでしょう。さらに各先生方の講義をご視聴いただければ、ナノテクノロジー研究の最前線をうかがい知ることができます。
このメールでは、最初の座談会の内容を紹介します。
さて、そもそも、ナノテクノロジーとは何なのでしょうか? 松本先生は、こうおっしゃいます。
《人類は科学をどんどん発展させて、ついにその原子スケール、分子スケールのコントロールが可能になりました。重要なのは、そういう非常にハイレベルの技術を手に入れてしまったということです。そうするともう望みの性質を持つ材料が創れます。もともと材料はそのありもので、そういう性質で、変えることができないものだと思っていたのに、それを好きなようにコントロールできる技術を人間が手に入れてしまったということです》
松本先生は、「人類が神に近づいた」とも表現されますが、それだけの科学技術を手にしてしまったということなのです。
それほどの科学であるために、ナノサイエンスは産業革命に匹敵するインパクトを与えるものだと、山本先生はおっしゃいます。それを可能にしたものこそ、100年前の大きな科学的イノベーション、すなわち、量子力学という学問の発見でした。モノを小さくしていくことで、常識が覆ったのだというのです。
これを山本先生は金塊の例でわかりやすくお話しくださいます。金の延べ棒を半分にしても性質は変わりません。しかし、どんどん小さくしてコロナウイルスぐらい小さくすると、その金の粒子は金色ではなくなる。つまり、形を変えるだけで性質が変わるのです。
ナノの世界、量子力学という学問のルールには、われわれの私生活とは全く違うルールがある。それを活かして「常識を超えたルール」でものづくりをすることで、いままで叶わなかったことが叶う可能性が出てきます。
では、現時点で人間は、ナノサイエンスのどれほどを理解できているのでしょうか。先生方は「まだ1パーセントにも満たない」とおっしゃいます。その一例として、山本先生、由井先生は「水がいかに不思議な物質か」についてお話しくださいます(この水の議論は、地球の不思議、生命の不思議にも密接に関わる興味深いお話です)。
その話をふまえて元祐先生は、いろいろなスケールで考えてみることの重要性を指摘されます。部分と全体を意識して考える。これは科学に限らず、現代社会を見る場合にも常に必要な視点といえるでしょう。
常識を覆す新たな分野だからこそ、さまざまなアプローチがありえます。実は、松本先生は工学、山本先生は物理学、由井先生は化学、元祐先生は機械工学がご専門です。それぞれの分野からのアプローチを学べることも、本講座のとても興味深い点といえましょう。
しかし一方で、それだけ威力のあるものですから、まかり間違えば、人類や地球生態系に大きなダメージを与える技術にもなりかねません。これを、人類が生き延びるためのテクノロジーにどうやって変えていけるのか?
それを考えるためにも「教養」が重要だと、先生方は強調されます。逆にいうと、しっかりした教養に基づいて使用しないと危ないことにもなりかねないということです。
では、どう考えるべきか。それについては、ぜひ本講座の第3話をご覧ください。
まさに「知的好奇心が刺激され」「常識を変えてくれる」講座です。今後の技術の方向性を考えるためにも、ぜひご視聴ください。
(※アドレス再掲)
◆松本洋一郎/山本貴博/由井宏治/元祐昌廣:教養としてのナノテクノロジー(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4111&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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《60歳から75歳になるまでを「黄金の15年」と考えてみてはどうか》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4180&referer=push_mm_hitokoto
10分でわかる「定年後の問題」
楠木新(神戸松蔭女子学院大学教授)
調査結果を見ても、だいたい70歳半ばぐらいまでは、高い自立度でやれます。今までの40代、50代の延長線としてやれるので、そういう意味では60歳から75歳になるまでの時期が、人生の最後に残された大切な期間であることを何度も感じました。それで60歳から75歳になるまでを「黄金の15年」と考えてみてはどうかということを主張させてもらいました。
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今週の人気講義
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「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4202&referer=push_mm_rank
子どもの共感力を育む原動力は「傾聴」という実体験
高橋孝雄(慶應義塾大学医学部 小児科主任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4153&referer=push_mm_rank
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授/奈良大学 名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4203&referer=push_mm_rank
ブレイクスルー感染にコロナワクチンの効果はどれくらい?
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4191&referer=push_mm_rank
10分でわかる「大人の学び・3つの心得」
童門冬二(作家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3383&referer=push_mm_rank
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて最近、『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)という本を読んでいるのですが、そのなかで特に気になったキーワードが「STEAM教育」です。
『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)
https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/26458
詳しくは書籍をお読みいただくとして、STEAM教育とは、サイエンス(Science)、テクノンロジー(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした教育理念のことです。もともとは「STEM教育」といわれていたのですが、近年、A(アート)を付け足して「STEAM教育」として推奨し始めたということです。
STEAMについては、冒頭でも紹介しました松本洋一郎先生がこう話してしています。
《ちょっと話が飛びますが、STEM(科学・技術・工学・数学)だけやれば良いわけではありません。最近、「STEAMが重要だ」と言われるようになってきています。Aはアートを表していて、それはすなわちリベラルアーツです。とにかく何でもいいから技術開発すれば良いということではなくて、ちゃんとそれを教養教育として、ELSI(倫理的・法的・社会的課題)やいろいろなことを考えながらやっていくことが大切です。》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4114&referer=push_mm_edt
ここで特に注目したいのはリベラルアーツという点です。
STEAM教育は、ご紹介した書籍では子ども向けのプログラミング教育において重要なテーマとして取り上げられていますが、リベラルアーツという点ではテンミニッツTVにとって、とても大事なテーマです。ということで、今後、このテーマにも注目していきたいと考えております。
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