ソフトな歴史学のすすめ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
『サピエンス全史』で提起した「虚構を信ずる能力」の問題
第2話へ進む
グローバル・ヒストリーの中で日本の歴史を俯瞰する意味
ソフトな歴史学のすすめ(1)グローバル・ヒストリーと民俗学
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
近年『サピエンス全史』が世界で大ヒットしたように、広く大きな視点で人類史を俯瞰するグローバル・ヒストリー関連の書籍が注目を集めている。その理由として、「人間はどのようにネットワークを形成していったのか」ということへの関心の高まりが挙げられる。本シリーズ講義では、その世界的潮流を手すりに、日本人の歴史、文化に迫っていく。(全5話中1話)
時間:10分01秒
収録日:2021年6月4日
追加日:2021年10月11日
≪全文≫

●現在の歴史学の潮流


 ご機嫌いかがでしょうか。上野誠です。今、ネット配信を通じて勉強をしようという人が増えています。大学でも授業がネット配信になり、どうしたら分かりやすく話ができるかということを、私たちも考えなければならないようになってきました。

 皆さんの中には、世界的な大ヒット作、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んだ方も多いでしょう。その『サピエンス全史』を書いているユヴァル・ノア・ハラリの先生である、ジャレド・ダイアモンドの歴史書も世界的な大ヒット作品です。

 今、世界の大きな歴史、人類史において、どのような潮流があるのでしょうか。20世紀の学問は、あまりにも細分化しすぎてしまいました。より細かく分かれていくわけです。私の専門分野でいえば、例えば『万葉集』のたった1首の歌の解釈でも、論文を書こうとすると、引用参考文献が100を超えるということはザラにあるのです。

 ところが、「人間とは何か」「人類とは何か」という関心を、われわれは忘れていいのでしょうか。そういったグローバル・ヒストリー(歴史を大きく眺めること)の大切さを、私たちに教えてくれたのが『サピエンス全史』です。

 その他に、リチャード・ランガムの『火の賜物』という本があります。日本ではそれほどヒットしませんでしたが、人類が火を手に入れることによって動物に打ち勝つことができた、という内容です。人類は、それまで食料にならなかったものを食料にし、火を囲んで寝ることによって、例えば捕食関係にあるライオンやヒョウといった動物に打ち勝つことができた。このように火を囲むことで、ともに調理を行い、ともに食べ、そして音楽が生まれ、ネットワークが生まれてきたのだ、という考え方があります。

 今のグローバル・ヒストリーは、「人間がどのようにネットワークを形成していったか」ということに関心があるのです。

 私が日頃研究しているのは、広い世界の中でも、8世紀の日本です。日本といったらファーイースト、つまり辺境です。その中で花開いた『万葉集』という文学があり、それは20巻4516首ある。8世紀の歌集として4000首以上残っているのは大変なことです。そういうものを研究している。このことを通じて、いろいろなことがまた人類史の中でも見えてきます。


●身体の中に、祖先の知恵の蓄積がある


 そのような中、やはり...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子