編集長が語る!講義の見どころ
環境問題から考えるSDGs/特集&伊藤元重先生【テンミニッツTV】
2022/06/21
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
「SDGs」という言葉を聞かない日がなくなった、という感じもします。テレビ局でも「SDGsウィーク」などと銘打って、啓発番組を放送したりしています。
「SDGs」とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略であり、「Goals」という言葉のとおり、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」から「16.平和と公正をすべての人に」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」まで、17の目標が掲げられています。
今回、テンミニッツTVではとりわけSDGsのうちの、「13.気候変動に具体的な対策を」と「7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」という目標を中心として、環境問題からSDGsについて考えることができる講座を集めた特集を組んでみました。
■本日開始の特集:環境問題から考えるSDGs
そもそもSDGsは、2015年9月の国連サミットで、2030年までに持続可能でよりよい世界をめざすために掲げられた目標でした。環境問題や社会問題を2030年までに解決するために、日本として必要な行動はどのようなものなのでしょうか。また世界の比較で何が見えてくるのでしょうか。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=171&referer=push_mm_feat
・伊藤元重:「グリーンディール」にみる気候変動対策の経済的価値
・小原雅博:世界が抱える「3つの危機」と気候変動の深刻な関係
・島田晴雄:脱炭素は可能か?気候変動問題の現状と日本の問題点
・小宮山宏:10分でわかる「エネルギー問題」
・猪瀬直樹:カーボンニュートラル革命が今、ビジネス世界で起きている
・岸輝雄:SDGs(持続可能な開発目標)の重要性
■講座のみどころ:経済学から見た気候変動問題とSDGs(伊藤元重先生)
本日は特集のなかから、伊藤元重先生(東京大学名誉教授)の講座を紹介いたします。伊藤先生は、経済学の見地から、現在世界で進んでいるさまざまな取り組みをご紹介くださいます。
伊藤先生は、「気候変動問題に対する世の中のアプローチが変わってきた」「ポストコロナ経済を活性化させるためのグリーンディール」「サプライチェーン全体でCO2の排出削減を進めるScope3」など多角的な視点からご解説くださいます。
現在の動きが、とてもよくわかる必見講座です。
◆伊藤元重:気候変動問題から考えるSDGs(全2話)
(1)COP26と認識の変化
「グリーンディール」にみる気候変動対策の経済的価値
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4492&referer=push_mm_rcm1
伊藤先生は、本講座の第2話の最後で、「あなたは、なぜ省エネをするのか」ということについて、行動経済学の有名な議論をご紹介くださいます。大きく4つの理由があるというのです。
一つは、「省エネや節電をすると、お金の節約になる」というもの(金銭的動機)。
二つ目は、昔から日本でいわれる「節約は美徳」という考えによるもの(道徳的動機)。
三つ目は、「節電をすれば電力流量が減り、結果的に温室効果ガスの排出が減るため、社会にとって好ましい結果になるから」というもの(社会的動機)。
四つ目は、「みんながやっているから=正しいことだから自分もやる」というもの(群れの動機)。
このうち、どの動機がもっとも大きな影響を及ぼすか……については、ぜひ講座の最後をご覧ください。
さて、先に紹介したように、伊藤元重先生は現在の経済社会で起きている多彩な動きを、とてもわかりやすく解説くださいます。
まず強調されるのが、「気候変動問題に対する世の中のアプローチの仕方が大きく変わっていること」です。これまでは、どちらかというと供給サイド中心のアプローチだった。それが、産業ごと、あるいは企業ごとの歳出削減の目標を構築し、目標実現のための計画を立てるかたちに変わってきたというのです。
次のようにお話しくださいます。
《例えば鉄鋼でみれば、どれだけエネルギー効率を上げていくのか。あるいは自動車でいくと、1台当たりの排出量をどうやって抑えていくのか。さらに言えば、どのようにハイブリッドや電気自動車にシフトしていくのか。あるいは電力でいえば、石炭から石油、石油から天然ガス、さらに可能であれば再生エネルギーへとどうやってシフトしていくか。このように産業ごとに細かく作業を決めていくのです》
このような細かな目標設定が必要となってきたために、供給サイドのアプローチに加えて、需要サイドからのアプローチが大きな課題になってきているといいます。端的にいえば、「一般の国民がどのように、CO2削減につながる行動を進めていくか」ということです。
これについて早急な効果を持たせるために、「グリーン・ファイナンス」が行なわれたり、投資家による企業の行動チェックが行なわれるようになってきた。さらに、「炭素税」の導入によって価格を調整する「カーボンプライシング」の動きも出てきたのです。
このような動きのなかで、かつては「環境対策はコスト」だったものが、「気候変動に対応すれうば企業にとってプラスになり、経済全体としても成長のスピードを上げるものになるかもしれない」という発想が生れてきたのです。
さらに、「グリーン・ファイナンス」や「Scope3(スコープ3)」の動きも、伊藤先生はご解説くださいます。
前者についていえば、「環境問題の見地から厳しく企業をチェックする物言う株主や、気候変動に積極的な企業に投資するグリーン・ファイナンス・ファンドの存在などにより、企業の脱炭素の動きを強力に後押しされている現状があります。
また、後者(Scope3)は、取引先である部品メーカーや原材料メーカーなどサプライチェーン全体にCO2の排出削減を求める取り組みで、すでにアップルやトヨタ自動車が積極的に進めています。このように「気候変動問題に真剣に取り組んでいる姿勢を世の中に対して打ち出すこと」が、マーケティングの視点からも非常に重要になっているのです。
それぞれの詳しい内容は、ぜひ講座本編をご覧ください。経済界のSDGsへの取り組みを考えるうえでの基礎知識を、コンパクトに学ぶことのできる内容です。
(※アドレス再掲)
◆特集:環境問題から考えるSDGs
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=171&referer=push_mm_feat
◆伊藤元重:気候変動問題から考えるSDGs(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4492&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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《「美しいことが必ずしも善いこととは限らない」》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3039&referer=push_mm_hitokoto
「最初の近代人」レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』
池上英洋(東京造形大学教授)
しかし、レオナルドは考えます。大天使ガブリエルは空を飛んでいるので、鳥の翼と同じ構造をしているはずだ、と。そこで鳥の翼を観察して、それと同じような生々しいものを描きます。
当時の天使の描き方からすると、少し異質で、しかも醜く見えたことでしょう。これについて彼自身は、次のような言葉を残しています。「美しいことが必ずしも善いこととは限らない」。これは、およそ画家の残す言葉ではありませんよね。こういうところにも、彼が、画家であると同時に博物学者であり、科学者であるということがよく示されています。
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今週の人気講義
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【音声先出し】バイデン大統領「台湾防衛」発言の真相は?
テンミニッツTV編集部
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4512&referer=push_mm_rank
一市民として「自分で考える人間」を育てる基礎が教養
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4480&referer=push_mm_rank
アインシュタインも不要?アルゴリズム革命で生じた大転換
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4461&referer=push_mm_rank
自己投資は重要だが苦手な人が多い。ではどうすればいいか
田中研之輔(法政大学キャリアデザイン学部教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4477&referer=push_mm_rank
ウクライナ侵略で激化した情報戦争と核恫喝の問題
小原雅博(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4490&referer=push_mm_rank
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、本日は最近読み始めた本を紹介します。
『人権と国家 理念の力と国際政治の現実』(筒井清輝著、岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b599120.html
《今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の理念や制度の誕生と発展をたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスを解く。冷戦体制崩壊後、今日までの国際人権の実効性を吟味し、日本の人権外交・教育の質を世界標準から問う。》
上記は出版社による内容紹介文ですが、なせこの本かというと、昨今の世界的な情勢の変化に加え、2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻がいまだ解決の道が見つからないという状況もあり、今こそ真摯に考えるべき非常に重要な問題だと感じたのが「人権」だったからです。
そして、この問題は今後テンミニッツTVでも一つの鍵となるキーワードではないかと感じています。機会があれば、読み進めていったあと、具体的なところもお伝えできればと考えています。
最後に、テンミニッツTVで「人権」について中島隆博先生がお話されている以下の講義を紹介します。ぜひご視聴ください。
人権はなぜ普遍化したかーフランソワ・ジュリアンの視点
中島隆博(東京大学東洋文化研究所 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1386&referer=push_mm_edt
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