編集長が語る!講義の見どころ
燃えさかる「全米暴動」の背景と真実(テンミニッツTVメルマガ)
2020/07/01
皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
5月25日にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで、白人警官が自らの膝で黒人男性の首を絞めて殺害した事件をきっかけに、人種差別に抗議する声が噴出し、大規模な全米暴動にまで発展しました。
なぜ、今回の暴動がここまで大きなものになったのか。そこには「米国の原罪」「複雑な人種問題」「文化マルクス主義と民主党の関係」そして「次期大統領選挙への思惑」などさまざまな要素が密接に絡んでいる――アメリカ政治に深く入り込んで研究している東秀敏先生(米国安全保障企画研究員)がそのように指摘されています。日本ではなかなか掴むことのできない事件の裏側までを赤裸々にご分析いただいた、まさに最新の現地分析です。
◆東秀敏:2020年全米暴動を考える(全2話)
(1)複雑な人種差別問題
2020年の全米暴動は「米国建国の原罪」に起因する
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3449&referer=push_mm_rcm1
まず、なぜ今回の暴動があっという間に広がったのでしょうか。東先生が指摘されるのが「ANTIFA」の存在です。このANTIFAは「ファシズム反対」を掲げる集団ですが、動員をかけられて州外から集まり、破壊行動を始めたといいます。これにたいして右翼勢力が対抗し、殴り合いの暴動に発展したというのです。6月上旬段階で、確認されているだけで逮捕者は1万人を超え、死亡者は20人以上になっています。
トランプ大統領は、このANTIFAを国内テロ組織として認定すると唱え、警察、FBI、州兵、軍隊、トランプ陣営の運動員、民間軍事会社などを総動員して、徹底抗戦する構えを見せています。なぜ、そのような強硬な動きに出ているのでしょうか。
それを理解するには「文化マルクス主義」を理解しなければなりません。これはイタリアの共産主義者アントニオ・グラムシ(1891年~1937年)の文化ヘゲモニー論に根ざしたものです。グラムシは、支配階級は文化的な価値観を支配することで社会における覇権を確立していると論じました。逆にいえば、メインストリームの文化を破壊すれば支配階級の基盤は崩壊することを意味します。
この思想は、その後の社会運動に大きな影響を及ぼしました。アメリカでも1960年代にソウル・アリンスキーというロシア系ユダヤ人の理論家が、文化マルクス主義の考え方も基盤にしつつ、草の根運動理論を打ち立てていったと、東先生は語ります。そして実は、ヒラリー・クリントン氏は大学の卒業論文でこのアリンスキーの草の根運動論を扱い、バラク・オバマ元大統領もアリンスキーの理論に影響を受けて草の根運動に積極的に関わっていたのです。
アメリカの支配層の文化的ヘゲモニーを覆すためには、アメリカの伝統的な価値観を破壊し、人種問題やさらにはLGBTQなどの問題を大いにかきたてることで社会を分断することが有効策となります。
なぜ、それが有効策なのか。そこで東先生が強調するのが、人種問題がアメリカの「原罪」であることです。よく知られているように、アメリカ合衆国は独立宣言の冒頭に書かれた「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」という思想を、建国の理想としています。しかし実のところは、黒人差別に基づく奴隷制度や、インディアン(ネイティブ・アメリカン)の迫害によって成立していたのです。それに止まらず、スコットランド系やアイルランド系の人びと、さらに東欧系のユダヤ人、中国人や日本人など東洋系、さらにヒスパニック系など、多くの人びとが強烈な差別の対象となってきた歴史があります。
この理念と現実の矛盾こそ、アメリカの「原罪」だと東先生はおっしゃいます。それゆえにこそ、ここを突かれると、アメリカ社会は分断され動揺せざるをえなくなるのです。
しかも民主党系は、そのような分断工作のためにANTIFAを動員しているのです。東先生によれば、ANTIFAは、アメリカ民主党にとっては、あたかも親衛隊のような暴力装置的役割を果たしているといいます。さらに民主党は、ウォールストリートの富裕層からの献金を手に入れるために、新自由主義経済の勢力とも結びつきました。つまり、それによって手にした潤沢な資金で、社会分断工作が進められている側面があるのです。
だからこそトランプ大統領は、これに強硬に立ち向かっているのだと、東先生は分析します。トランプ大統領側の理屈からすれば、「社会を分断しているのは、ANTIFAを動員して人種差別問題やLGBTQなどを煽り立てている民主党の側であり、それゆえ彼らを攻撃しなければならない」ということになります。トランプ大統領は、この暴動を、コアな白人層に加えて、民主党の中道派や国防組織、特に軍人を味方につけて、民主党の自滅を加速させる最大のチャンスだと見なしているというのです。
アメリカ社会の奥底で何が起きているのか。1つの参考になる視点を得られる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆東秀敏先:2020年全米暴動を考える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3449&referer=push_mm_rcm2
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編集後記
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編集部の加藤です。
本日より7月特集「ポストコロナの世界と日本の運命」の配信が始まりました。緊急事態宣言が解除され、休業要請も全面的に解除された現在、日本は今後どうなっていくのか。また、可能性が指摘される第二波、第三波にわれわれはどう備えればいいのか。いわゆる「ポストコロナ」について多面的に考えていく特集ですが、今回は、免疫学の第一人者である大阪大学名誉教授の宮坂昌之先生を新講師に迎え、「免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える」シリーズも配信いたします。まさに今こそ聴いておくべき貴重な講義です。ぜひご視聴ください。
<宮坂昌之先生の「免疫の仕組みからポストコロナ社会を考える」はこちらからご視聴いただけます>
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3461&referer=push_mm_edt
<7月特集「ポストコロナの世界と日本の運命」はこちらからご視聴いただけます>
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