編集長が語る!講義の見どころ
ぜひ知っておきたい「日本美術」の特徴を学ぶ/佐藤康宏先生【テンミニッツTV】

2022/11/08

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

東京上野の「東京国立博物館」が創立150年ということで、所蔵する国宝89点を含む名品の数々を展示する特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催されています(2022年10月18日〈火〉~2022年12月11日〈日〉)

そのためで、NHKのEテレなどでも、日本美術を紹介する番組が放送される機会が多くなっています。

この機会に、「日本美術」の特徴について、ぜひ学んでみてはいかがでしょうか。日本人として知っておきたいことではあるものの、案外、知らないことも多いのものです。

本日は、日本美術の特徴について、佐藤康宏先生(東京大学名誉教授)に語っていただいた講座を紹介いたします。実際に、絵をふんだんに映し出してご解説いただいています。まさに動画の特性を最大限活かしたおすすめの講座です。

◆佐藤康宏:日本美術論~境界の不在、枠の存在
(1)具象と抽象の共存
日本美術の特徴を示す矛盾した2つの要素とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2024&referer=push_mm_rcm1

講義の冒頭で佐藤先生は「日本美術の特質を論じるのは、研究者にとって1つの罠」だとおっしゃいます。なぜか。

それは、「これが日本美術の特徴です」と紹介すると、そのとき必ずほかの大事なものを投げ捨ててしまうことになるからです。

たとえば、これまで日本美術の特徴として「平面的であること、装飾的、感傷的、日常的であること、遊戯性や簡素さ」などが挙げられてきました。しかし、それを指摘した途端に、そうではない作品がさまざまに浮かび上がってきます。

そうであることを前提にしつつ、佐藤先生はこうおっしゃいます。

《私たちにできるのは、日本美術のどういう傾向を面白いと考えるか、具体例に即して検証し続けることだと思っています》

この佐藤先生のご指摘は、まことに公正なものです。他国の例をとって、たとえば「ドイツ音楽はこういうものだ」「フランス印象派の絵画のあり方は」などという話をするにしても、すべての作品を包含する特徴をピックアップするのは、基本的には不可能なはずです。

その「不可能さ」を前提としたうえで、どのような部分を切り出すかに、見巧者(みごうしゃ)の見巧者たるゆえんがあるといえましょう。

では、佐藤先生がピックアップした特徴とはどのようなものでしょうか。この講義では、佐藤先生は2つの観点からご紹介くださいます。

1つは、具象的なものと抽象的なものとの間に境目がないこと。
もう1つは、画面の枠で対象を切り取る効果について意識的であること。

それぞれどういうことでしょうか。

1つめの「具象的なものと抽象的なものとの間に境目がないこと」とは、西洋絵画との比較において、西洋絵画の場合は、具象的に描く作品は細部にわたるまでどこまでも具象的に描くケースが多いけれども、日本の作品の場合、1つの作品のなかに具象と抽象がみごとに融合している場合が多い、ということです。

そのことを佐藤先生は、日本の仏像の表現(部分部分はとても写実的に彫り上げているが、一方で、とても抽象的に表現している部分も併存している)や、尾形光琳の「紅白梅図」などを具体的に示しながら紹介くださいます。その解釈が、とても興味深く胸に入ってきます。

また、2つめの「画面の枠で対象を切り取る効果」は、まさにフレームで構図を大胆に切り取る手法です。浮世絵のみごとな構図が、19世紀のジャポニズムの流行とともに、欧米の絵画に大きな影響を与えたことは有名な話でしょう。

本講義で佐藤先生は、歌川廣重や、12世紀の絵巻物である「信貴山縁起」、俵屋宗達の「風神雷神図」、喜多川歌麿の美人画「北国五色墨 てっぽう」、雪舟の「天橋立図」などを例示しながら教えてくださいます。

さて、どのような内容かは、まさに百聞は一見にしかず。ぜひ講義本編をご覧ください。工夫を凝らした日本美術の表現方法の数々に、舌を巻くこと間違いありません。

これらが「世界の美術史」のなかで、どのように位置づけられるのかについても、佐藤先生は講義中で数々の作品を挙げてお話しくださいます。さまざまな美術を鑑賞しながら、どんどんと連想の翼を広げることができます。

この講義は、美術史専攻のヨーロッパ人大学院生向けに行なわれた講演を元にしたものです。テンミニッツTVの講義は、日本語でお話しいただいていますが、もともとが欧州向けだけに、初学者、あるいは外国の方にも理解しやすい、お奨めの内容です。


(※アドレス再掲)
◆佐藤康宏:日本美術論~境界の不在、枠の存在(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2024&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《どこにでも哲学の種はある》
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2138&referer=push_mm_hitokoto

「学び」とは、入り口がどこにでもあるもの
貫成人(専修大学文学部教授/文学博士)

学びの入口は結局、どこにでもあるということです。ですから、哲学は昔の遠い国の人が書いた本の中にあるのではなく、身の周りにあるのです。つまり、どこにでも哲学の種はあるので、考え方や物の見方さえ身に付ければ、24時間365日哲学ができます。そうすれば、むしろそれをやってしまっているという状況にすらなると思います。


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今週の人気講義
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鍵は“失敗”にあり。ひらめく人とひらめかない人の違い
鈴木宏昭(青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4666&referer=push_mm_rank

なぜわれわれは生涯をかけて学ぶ必要があるのか
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長)
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4653&referer=push_mm_rank

後鳥羽上皇の親王を将軍に推戴する…実朝の奇想天外な名案
坂井孝一(創価大学文学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4636&referer=push_mm_rank

80歳まで現役へ、磨くべき「5つの変身資産」とは何か
徳岡晃一郎(株式会社ライフシフト 代表取締役会長CEO)
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10分でわかる「習近平政権」
小原雅博(東京大学名誉教授)
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて先週金曜日は「いい推しの日」で、日付の11月4日(「1104」)から「いい(11)推し(04)という語呂合わせだそうです。
2021年に新語・流行語大賞に「推し活」がノミネートされたり、『「推し」の科学 プロジェクション・サイエンスとは何か 』(久保〈川合〉南海子著、集英社新書)という新書が発刊されたりするなど、最近「推し」という言葉が注目を集めています。「推し」とは、「とても好きで熱心に応援したくなる対象」のことですが、単にアイドルや俳優だけでなく、映画や小説、モノや事柄など、今やすべてのことを指す言葉になっているのです。

ということで、最後に今年の「推し」講義を一つ紹介したいと思います。

◆長谷川眞理子:「今、ここ」からの飛躍のための教養 (全2話)
(1)4つの「限界」と「知の体系」を知る
一市民として「自分で考える人間」を育てる基礎が教養
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4480&referer=push_mm_edt

今年5月から配信が始まった長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)のシリーズ講義ですが、メルマガをご覧の皆さまのなかにも今年の「推し」講義という方は多いのではないでしょうか。
現在、大好評配信中のシリーズ講義〈現代人に必要な「教養」とは?〉では、小宮山宏先生との対談ウェビナーで教養についてさらに興味深いお話をいろいろとされていますが、個人的にはこちらを「推し」とさせていただきます。
まだこれからというからはぜひシリーズ通してご視聴ください。